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理想の上司or先輩

数年前に事故で救急搬送された。

救急車が発進する前に隊員さんから「〇〇病院へ行きます」と言われた。
意識はあったし地元でもあったので、外が見えなくてもどこを走っているのか分かった。

救急車が交差点を右に曲がった時に違和感。右?
僕の隣にいた隊員さんも、

「あれ?おい、〇〇病院だぞ?今のとこ左だろ?なんで右曲がった?」

隊員さんも運転手さんが道を間違えたことに気付いた。
運転していた隊員さんは指摘に「あ…」と、声を上げて、すぐにUターンして病院へ向かった。

病院には他にも数台、救急車が停まっていて病院の通路でストレッチャーに載せられたまま診察待ちすることに。
「もうすぐですからね」
さっき道の間違いを指摘した隊員さんに励まされ目を瞑り痛みに耐えて待っていると、

「あの…」

若い隊員さんがやって来た。

「先ほどは申し訳ありませんでした」

先輩なのか上司なのか励ましてくれた隊員さんに頭を下げた。
見ちゃいけないとは思ったけど薄目を開けて、こっそり見た。

「謝る相手、俺じゃないよね?俺たちの仕事は常に100点満点を求められていて、常に100点満点を出さないといけない。でも誰も褒めてくれない。満点が当たり前だから」

その隊員さんは淡々と道を間違えた隊員さんに語り、言われる隊員さんは先輩を真っすぐ見て再度、頭を下げた。
命に係わる仕事だし厳しいなと思ってたら、

「俺たちの仕事にミスは許されないし、あってはならない。ただ、道の間違いに気付いて最短コースで正しい道に戻った判断の速さと的確さ。あれは素晴らしかった」

“ 下げて上げた…! ”

真横で聞いてて、すごいと思った。
指摘すべき点は指摘し認めるべき点は認める。
注意する際の順番が完璧だと。

「診察までどのくらい時間かかりそうか訊いてくるから、ここお願い」

先輩隊員さんはその場を離れ、残された隊員さんは返事した後、先輩が歩いて行った方向に向かって頭を下げ続けていた。

薄目を開いて盗み見しながら、この二人は信頼関係が築けているんだなと思った。

“ 下げて上げる ”

人に注意する際の基本だけど、出来ない人はいくらでもいる。
この順番が違うと注意を受ける相手が受ける印象は大きく変わることもある。

誰にもでも“ 下げて上げる ”やり方が正しいとは限らないけど、注意する際の基本にさせてもらっている。

上司や先輩は仕事が出来る人。というのも大事だけど長く付き合っていくには人間性も大事。

ああいう注意が出来る人が上司か先輩にいる人はラッキーな人間だと思う。
幸運なことに直属の上司はこれが出来ている人なので僕はラッキーな人間。

ジュースが飲みたいです('ω')ノ