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中学の英語が崩壊している話

I am~ You can~は小学校で終えている、という設定

現在の中学校の英語の教科書は、最初の単元で
I like school.
Make group of four.
I can run fast.
などが「小学校の復習」として出てきます。と同時に、アルファベットを書くということもやります。

次のlesson1ではI am interested in Kyoto.とかも出てきます。

一見すると、もうめちゃくちゃですね。

そこそこ出来る子たち(公立中学で学年1桁クラス)でも、be動詞と一般動詞の区別はおろか、そもそも日本語で形容詞や副詞といった言葉の区別はもちろん、主語・述語すら曖昧なままです。

「今の英語教育は終わっている」という人たちはこういった状況をみて「ここからどうやって大学入試にもっていくのだ」と日本の将来を憂(うれ)いているわけです。

「英語教育は終わっている」論者は時代遅れ

結論から言えば、「終わっている」論者の人は時代遅れです。今の英語教育のカリキュラムに対応できていないだけです。

これまでの英語教育の体系からなかなか切り替えることが出来ず、「おれはこうやって英語を勉強してきたんだ!」と、新しいシステムを批判しているだけです。塾を選ぶ際にも「学校の英語教育批判」をする塾は避けた方が良いでしょう。

これまでの英語教育の何が失敗だったのか

言うまでもなく、「使える英語」ではなかったことが最大の失敗です。具体的に説明します。

これまでの英語は、大学入試が目的の英語でした。大学における英語は、まずは論文の読み書きをする事が必要ですから、そのための英語力を入試で問うてきたわけです。

ところが世界が激変していくなかで、「話せる・使える」英語教育をなおざりにしてきてしまいました。正確にはなんとか努力はしてきたのですが、カリキュラム整備が追いつかなかった、大学入試が変わらなかったあたりが原因です。

これまでのカリキュラムでは、文法を中心に据え、最終的に大学入試の小難しい英文法や英文解釈をゴールとして積み上げ方式で勉強して来ました。

結果、文法も分からなければ話すことも出来ない日本人が量産されてしまったわけです。もちろん一部には超絶技巧英文法の人や、独力で頑張って話せるようになった人もいますが、ごく一部であることは疑う余地はないでしょう。ごく一部の超絶技巧の下には、累々と「英語嫌い」の屍が横たわっていたわけです。

ある程度の人がある程度出来る「チャンク」という発想

さすがにこのままではマズいだろうと、英語教育そのものが大きく見なおされるようになってきました。(まだ道のりの途中だと思いますが)

それが「チャンク」と呼ばれる、「ある程度決まったフレーズで多少なりとも使える英語」です。(Eテレでオードリー春日がやっていますね!)

乱暴に言えば、義務教育は「多少なりと使える英語」を目指す。本気でやる人は進学校で1から文法の勉強をし直せ、ということです。

まとめると、


旧来の英語)99%が出来ないが、1%が超絶技巧

現在の英語)50%は今まで通り出来ない、49%はちょっと知ってる、1%は超絶技巧


といったイメージでしょうか。(数字は適当ですが)

どう頑張っても絶対に出来るようにならない層(これは英語教育というより学校全体のシステム)は仕方ないにしても、多少なりと使える層が増えるだけで以前よりはマシになったわけです。

極論すれば、何も出来ないよりは「I can play soccer.」だけでも言えた方がましなわけです。

日本は「観光立国」的な一面を持っているのは間違いないと思います。これから外国人観光客も増えるでしょうし、技能実習生、果ては移民などを受け入れていく流れのなかで、「全くデキナイ人だらけ」よりは「多少なりと分かる」層が分厚い方が全体の底上げになるんですね。

これからの課題

とはいえ、課題がないわけではありません。というか山積しています。

  • 「多少分かる」の「多少」レベルの底上げ

  • ハイレベルな大学を目指す子への入試対応(大学入試が会話文だらけでは学問そのものが衰退します。大学入試が平易になりすぎるのも問題です)

  • 小学校段階での「読み・書き」の拡充

  • 現実的にほとんどの子が高校に進学し、6割が大学進学する状況で「チャンク」からレベルアップできない子たちをどうするのか?

などなど。

すなわち、「チャンクから入ってある程度話せるようにする」ことと、「大学入試レベルの読み書きにも対応する」ということを両立ないしは切り分けてやって行かなければならないということです。少なくとも今のままでは、共倒れの可能性があります。

全体のカリキュラムが大きく変わって大学入試も変わり、日本人の英語レベルがアップするまで30年はかかるでしょう。国家100年の計とまではいいませんが、そのスタートラインにようやく立ったのだとみるべきだと思います。




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