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ねこ大将ちいちゃんの病

ある日の朝、
神社ねこの餌やりさん(朝・昼・晩)のお三方が
神社駐車場で何やらいさかっていた。
しまいには「やんのかポーズ」を決め込み
盛大な取っ組み合いが始まる。
竜巻のような砂埃すなぼこりで本殿が見えなくなるという
シュールな現場に遭遇そうぐう……
幸いなことに、ここで目が覚めた。
よかった、夢だったのか!
人生の大先輩である70を超えたお姉様方の
「やんのかポーズ」はさすがにシュールすぎだった。
が、昼前に朝の餌やり担当S子さんから、
その悪夢があながち夢ではないと聞かされ
寝坊したことで難を回避かいひできたと、正直、思った。

参道脇に建つ灯篭の中もちいちゃんのお気に入り。

いさかいの理由は、ちいちゃんの病気が発覚したことに
たんを発していた。
先週、こんなことがあったのだ。
いつも通り、早朝、神社の参拝に行くと、本殿に続く参道で
ちいちゃんが出迎でむかえてくれた。「おはよう」と声をかけると、
「にゃぁ~(おはよう)」とお返事。
いつも変わらない、このちいちゃんの、人間かと思うくらいの
高いコミュニケーション能力に驚く。
点数稼ぎに、こっそりポケットにひそませていた
おやつカリカリを進呈しんていすると口には入れるものの、
ポロッと落とす、口に入れて、またポロッと落とす。
もしかすると……食べたいけど食べられない?
さらには、上唇がきばに引っ掛かり閉じられずに
半開きになったままだった。
これは、口腔内こうくうないの炎症ではないだろうか。
さっそく、朝の餌やり担当S子さんに伝えて神社を後にした。

本殿に続く参道の石畳で参拝者を見守るちいちゃん。

数日後、ちいちゃんの病名が明らかになったと聞かされた。

難治性口腔炎なんちせいこうくうえん

これは、猫特有の病気で、
難治性歯肉口内炎なんちせいこうないえんとも呼ばれるものであること、
歯のくび歯頚部しぎんぶ)が吸収され強い痛みとよだれが特徴で
進行すると摂食困難せっしょくこんなんな状態になり、
やがて口峡部こうきょうぶ咽頭いんとうにまで炎症が波及はきゅう
痛みにより食餌しょくじが取れず衰弱死すいじゃくしすると
獣医師をしている知人から説明を受けた。
つまり、現在、のらねこちゃんなのであれば
このまま放置すれば余命はいくばくか、というものだ。
治療法は歯の全抜歯のみ。
夜担当のN子さんが行きつけとしている動物病院の医師によれば
全抜歯の手術費用は約60万円で、
そこの病院では歯の全抜歯などの大規模な手術は引き受けられないと。
ねこたちのご飯代に病院の治療費をになってきた
夜担当のN子さんにしても、60万円という高額なお金は出せないこと、
ちいちゃんの母猫も同じ病気で亡くなっていることから、
今回も同様に自然に任せたいということだった。
朝担当S子さんは、何とか救う手立てを模索もさくしたいということで
相談を受け、知りうる限りの動物病院のラインナップと
「私にできること」についてをLINEで送ると、
「是非、動物病院のご紹介をお願いしたい」という件と、
手術費に関しては、「ちいちゃんの命が助かるのなら
金に糸目はつけないしお家おうちに迎えたい、そうおっしゃる方がいるので、
明日朝、神社で相談したい」とのことだった。
このとき、ちいちゃんの年齢は11歳。
のらねこの平均寿命は3~5年といわれ、
家ねこの場合でも14.2歳くらい
11歳の、しかも重篤じゅうとくな病いもセット(高額な手術付き)の子を
引き取りたいって……、なんて奇特きとくな人なのだろう。
「もちろん、私などでお役に立てることがあるのでしたら……」
そうお返事をして、その日のやり取りを終えた。

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