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【小説】ダーツとフリースロー

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2019年12月の記事一覧

【小説】ダーツとフリースロー 3.『へえ、あんたも大地っていうんだ』

 転校するのは三浦大地にとってはじめてではなかったが、久しぶりのことだった。

 人生で2度目の経験である。前回の転校は小学5年生に上がったタイミングでのことで、当時は世界のすべてが根本から変わるような、きわめて重要なことであるように思われた。

 それまでに培ってきた友人関係がすべてリセットされたのだ。幼馴染は駆逐され、やがてそれでもできた小学校の友達も、じきに中学受験などでほとんどが散り散りに

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【小説】ダーツとフリースロー 4.『ヨルとオル』

 
 それは長い男であった。

 頭のてっぺんから足の先までのすべてが長い。

 やはり長く、癖の強い黒髪を、乱暴にヘアバンドでまとめている。にじんだ汗が面長の顎や段のついた長い鷲鼻の先から粒となって落ちている。

 手足が長い。

 だぼつくサイズのノースリーブから伸びる腕には強靭な筋肉が伴われているのだが、その長さによって引き延ばされるため、遠くから見ると一見細い腕をしているようにさえ見えるか

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