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【MBA学生がおすすめする】読んでよかった経営の本 2020

こんにちは、じゅたろう@一橋MBAです。激動の2020年も年の瀬…ということで、せっかくなので「2020年に読んでよかった本」をランキング形式でご紹介したいと思います。

本のジャンルは「経営の本」です。正直、MBAの教科書や関連図書が多くなると思いますが、MBAに通っていない方でも読んで面白くためになる本ばかりだと思います。そういう意味で、経営「学」の本に限定はしていません。

(ちなみに、私が2020年に読んだ本のランキングなので、決して2020年に出版された本ではありません。)

それでは、10位から順番にどうぞ!

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第10位:『財務3表一体理解法』(國貞克則)

もはや「初心者向けの財務会計の本」というジャンルでは既に名著扱いされている本書。「貸借対照表(BS)、損益計算書(PL)、キャッシュフロー計算書(CS)はすべて繋がっている」という、会計においては当たり前かつ最もとっつきにくいコンセプトを、丁寧にわかりやすく解説してくれます。

個人的には、会計は用語や簿記の仕分けをいくら勉強しても、必ずしも理解が進むわけではないと思っています。企業の過去と現在を「お金の動き」という切り口で見るのが会計だとすれば(私はそう理解しています)、まずは概念を理解してから細かい部分を見ていくのが近道です。

そういった意味で会計を知る最初の一冊として、すべてのビジネスパーソンにおすすめできる本です。

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第9位:『ブラックスワンの経営学』(井上達彦)

「ブラックスワン」とは「黒い白鳥」つまり「ありえない」ということの表現です。本書は、一般的な法則を導く統計的研究ではなく、逸脱事例を扱った定性的研究を通して「通説を覆した」研究論文について紹介しています。

とは言え、研究をしない普通のビジネスパーソンにも面白く読める本。例えば本書では「外部環境の変化に対する認識が、組織の変革を促すか」というテーマについて、「デジタル化に直面した新聞社がどのように行動したか」という事例で説明しています。この例では「デジタル化に対する危機感はありお金も投資したけど、結果的には…」というお話が、論理的にまとめられています。

こうした概念と事例の対応がたくさん紹介されているので、興味がある方はぜひ読んでみてください。とても読みやすく勉強になった本です。

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第8位:『世界標準の経営理論』(入山章栄)

この本は2020年出版ですね。紙の本だと広辞苑並の分厚さで、ものすごい情報量…と思いきや、読み口はとても軽く読みやすいです。この辺りはさすが入山先生という感じ。

いわゆる経営学の理論の中で、現在も議論されていたり中心的な概念となっているものを解説した本です。ポーターの競争戦略、バーニーらのリソース・ベースド・ビューなどに始まり、両利きの経営、ダイナミックケイパビリティ、エンベデッドネス理論(絶対に噛む)など、多岐に渡って紹介されています。

基本的には経営理論なので学生向けかな〜と思いつつ、ビジネスパーソンにとってもイノベーションや個人内多様性を深めるための軸となる考えが含まれています。読みやすいと言いつつも量はすごいので、経営学に興味がある人や勤勉なビジネスパーソンにおすすめです!

ちなみにMBA学生は絶対読んだ方がいい。修論のヒント探しが楽になる気がします。

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第7位:両利きの経営 -「二兎を追う」戦略が未来を切り拓く-(チャールズ・A・オライリー、マイケル・L・タッシュマン)

「両利きの経営」という言葉を耳にしたことがある人は多いと思いますが、個人的にはこの考え方が、今後日本企業が生き残るためにかなり重要な考えだと思っています。その理論を説明したのが本書。

通常、企業は目先の利益を生むことに注力し、既存のリソースを効率的に活かすことを重視(=知の深化)します。しかし、深化ばかりに注力すると過去の成功に因われて組織やビジネスモデルが硬直化する(サクセストラップに陥る)ので、同時に「知の探索」を行ってイノベーションの種を探すのも重要です。だから両方のバランスをとって「両利き」になろうね〜。というのが本書の主張。

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(図は本書より。解説の入山章栄教授作成。)

正直、日本の企業が変われない理由ってほとんどこれだと思っています。だからといって、本書にはどうやれば「両利き」になれるのか、明確な答えはありません。リーダーシップ、組織体制、株主の意向など、様々な要因が絡み合っているため、各企業で各経営者、各従業員が自身にそのバランスを問われているというのが実情だと思います。その意味で、ぜひ日本企業のサラリーマンに読んでいただきたい。

ちなみに私の修論は「両利きの経営」を基本概念としつつ、ダイナミックケイパビリティという理論に着目して「サービス業の企業変革要因」を探るような内容にしたいなぁと考えています。そういった思い入れもランキングに加味してしまいました。(この辺りも詳細は別Postで整理したいと思います。)

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第6位:『戦略的コーポレートファイナンス』(中野誠)

結局、ファイナンスって何なの?というお話がわかりやすくまとめられた本です。中野先生は一橋MBAで企業財務(コーポレート・ファイナンス)を担当されていて、今期授業を受けました。授業での語り口そのままに、読みやすい文体で書かれている本です。

本書はファイナンス初学者におすすめです。私も会計とファイナンスの違いとか、WACCだのCAPMだの何も知らずに生きてきましたが、勉強するととても面白い!たぶん僕のキャリア上、普通に生きていたら知らないことばかりだったと思います。こうした知識に触れられたただけでもMBAに通った価値がありました。

私は、ファイナンスとは「企業の未来のカタチを現在ある情報から測定し、各ステークホルダーの利益を最大化するためにどのようにお金を使うか」だと理解しています。この本は、未来のカタチを測定する際の「なぜ日本の企業の投資リターンは低いのか?」「企業は負債と自己資本の比率をどの程度のバランスにするべきなのか?」「配当ってどのくらいすればいいの?」「企業価値って何?」などの素朴な疑問に答えてくれます。初心者はもちろん、財務畑でないミドル層にもおすすめできると思います。

初学者向けとは言うものの、前提の会計の知識はないと難しいかもしれません。とは言え、BSの概念がわかれば大丈夫。その辺は『財務3表一体理解法』でざっくり理解しましょう!

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第5位:『豊田章男』(片山修)

ちょっと毛色が変わって、経営者の伝記的な本です。割とそういう本が好きなので、今年何冊か読みましたが、最も面白かったのはトヨタの豊田章男社長について書かれたこの本です!クルマにはほぼ興味ないんですが、自分の中でしばらく企業としてのトヨタブームが訪れました(笑)

章男社長は、自他ともに認めるトヨタ創業家のお坊ちゃま。お金持ちだし、トヨタでも偉くなるのは既定路線。そりゃ〜、楽だよね…と普通思うところですが、お坊ちゃまにはお坊ちゃまの苦労がありました。

創業家の下駄を履いているからこそ、人の数倍努力し結果を出さなければ評価されない。現場社員は変革を恐れ、彼の言うことを聞かない。周りの人間からは妬まれるか、すり寄ってくるかのどちらか…。そんな中でもクルマへの愛を貫き、次第に認められていく…そんなエピソードが語られています。

もちろん美談めいた話が多いと思います。それは承知の上で、やはり胸に来るアツいものがある。経営者としても、「自動車メーカー」を脱却して「モビリティカンパニー」になるというビジョンを掲げ、業績も成長し続けている。稀有な存在だと思います。100年に一度の変革なんて、創業家として一番言いづらいはず。でも、創業家しか言えないこと。この本を読んでいると、章男社長の「覚悟」と「危機感」に触れられる気がします

ちなみに一番泣けたのは、マスタードライバーの成瀬さんとのエピソードですね。この部分はぜひ読んでいただきたい。

あとは、ある場面で章男社長が社員に語る次の言葉も心に残りました。

皆さんは自分のために自分を磨き続けてください。トヨタの看板がなくても、外で勝負できるプロを目指してください。私たちマネジメントは、プロになり、どこでも戦える実力をつけた皆さんに、それでもトヨタで働きたいと心から思ってもらえる環境をつくり上げていくために努力します。

さらっと読めるので、息抜きでどうぞ!トヨタファン、章男ファンになった方は、トヨタのオウンドメディア「トヨタイムズ」の動画を観てみることを強くおすすめします。

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第4位:『わかりやすいマーケティング戦略』(沼上幹)

はい、この本は『わかりやすいマーケティング戦略』という本なんですが、本当に、マジで「わかりやすい」です。名前負けしない良書。

本書は一橋の名物教授、沼上先生の「経営戦略」の授業における教科書ですが、授業もとてもわかりやすく面白い(時に辛口コメントもありますが、良い授業ってそういうものだと思う)。

本書では、4P等のマーケティング戦略だけではなく、製品ライフサイクル、市場地位、業界の構造分析(5forcesが代表的フレームワーク)、全社戦略(PPMが代表的フレームワーク)等が網羅的に説明されています。沼上先生はメカニズムとリアルなケース分析(こびとを頭に思い浮かべて思考する)にこだわる方ですが、そのまんまの本で、軽快な語り口なのに深い理解ができる良書です。

経営戦略に触れてみたい方は、まずこの本を手に取るべきです。そして、STP(セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング)分析もまともにできないくせに「マーケティングガー」と騒いでいるエセマーケッターさんが社内に万が一いたら、3回読ませてあげてください。いや本当。教科書どおりのことやってから文句言おうぜ、うん。

特に、おすすめの1冊です。

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第3位:『ビジネスエリートになるための 教養としての投資』(奥野一成)

本書は、万人におすすめできる本です。詳しくは別noteで書いていますので、ぜひこちらをお読みください。

本書は、資産形成のための投資の重要性やその仕組についてのエッセンスを教えてくれる本です。しかし、その本質は投資する対象の企業をどのように見つけ出すかという「知の総合格闘技」へ取り組むことが、人間としての知的豊かさに繋がるということ。

投資家としても考え方が、様々な意味で人生を豊かにしてくれる。その場の金儲けではない「本当の投資」の価値を教えてくれる、人生の教科書になりうる本です。

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第2位:『V字回復の経営』(三枝匡)

本書は語るに及ばず。とりあえずめっちゃ面白いから読んでほしい!笑

とはいえ、少しだけ。
著書の三枝氏はBCGの国内採用第一号のコンサルであり、その後「事業再生のプロ」として独立され、後に経営者としてもミスミのCEOなどを歴任されています。ちなみにこの方も一橋OBで、現在は客員教授です。(ちなみに一橋に5億円寄付して基金を創設したそう。すごい。)

本書は『戦略プロフェッショナル』『経営パワーの危機』『V字回復の経営』の”三枝三部作”(のちにミスミの再生を描く『ザ・会社改造』を加えて四部作とも言われる)の中の一冊です。

三部作の中でも、個人的にはこれが一番面白いと感じました。コマツの事業再生がモデルのお話で、ちょっと曲者だけど優秀な若手たちが頭を悩ませながら再生プランを考え、抵抗勢力に負けずに改革を実行していく姿はもはや青春ものかと思うくらいのアツさです。

もちろん小説仕立てのビジネス書なので、理論もしっかり解説されていて勉強になります。また、描写がリアルなので「あ〜、いるいるこういう上司」とか「これうちの会社じゃ〜ん」とか、共感すること請け合いです。

今回紹介した本の中で、最も手放しでおすすめしたい一冊です。年末年始のお供にどうぞ!

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第1位:『経営戦略の思考法』(沼上幹)

再登場、沼上幹先生(私、結構沼上先生のファンなんです)

この本は沼上先生独自の「経営戦略論」の集大成のような本です。分量も多いし、学術的な内容もあるので誰にでもおすすめできるわけではありません。でも、私はこの本が2020年に出会ってよかった本の第1位です。

大きく3部構成の本書。

第1部は、経営戦略論の学派(例えばポジショニング学派とか)の整理が中心で、フレームワークの使い方の注意点などがわかりやすくかつ実践的にまとめられています。

第2部は、沼上流の真骨頂とも言える思考法「メカニズム解明法」について語られています。「メカニズム解明法」は消費者や顧客を「こびと」として描き出し、企業で起きていることの背景にあるメカニズムを解明して、論理的かつリアルに戦略を組み立てる手法です。

第3部は、こうした思考法を実際のケースを例に分析の足取りを追う形式になっています。

元も子もない話ですが、本当は、沼上先生の授業を受けてから読んだほうが理解が進むかもしれません。でも、企業で起きている問題について、原因と結果を正しく導き、あるべき姿と失敗の理由のギャップを捉え、対策を練る。この能力こそがstrategistに必要な能力だと思います。

経営者だけではなく、管理職でも、一介のマーケッターでも、人事担当者でも、IT担当者でも、提案や問題解決の背景には必ず論理的なメカニズムの解明が必要であろうと思います。

そして、何よりも知的好奇心が満たされる良書です。「企業経営は謎解き」とは三枝匡氏の言葉ではありますが、ある種パズルを解くというか、線がつながるというか、そういう感覚を得ることができる本です。

「経営戦略」というものを知りたい、そして使いこなしたいという方にはぜひおすすめしたい本です。精読が必要な本ですが、語り口は読みやすいので、これまた年末年始のお供にどうぞ!

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ふう…なんだかんだで6000字近く書いてしまいました。(誰か読んでくれるのかな笑)

2020年は、MBAに通い始めて、これまで読んでいたいわゆる”ビジネス本”とはちょっと違う、学術寄りの経営書を読む機会が増えました。(小説やエッセイを読む時間はほぼなかったのが心残りですが…)

2021年も、できるだけ多くの良書を読んで自分の「知的武装」を増やしていきたいと思います。

それではまた!

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