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ばあさんが〇にそうなので変な思い出を書いておく~あちらの世界とこちらの世界

父方の祖母が高齢者施設に入所しているのだが、とうとう食べ物を口からとることができなくなったらしい。

そろそろ・・・という心づもりをしておいてくださいと両親のもとに電話があった。

実家から離れて住む私のもとにも両親から電話があった。

お盆前に弟と両親で施設を訪れて、祖母の食がかなり細くなってきたので今後の生活についての説明をうけたばかりだった。

3人で祖母に会ったところで、祖母は誰が来たのかもわからず、3人がいる方向とは違う場所を向いて「見えないだれか」に一生懸命趣味だった歌や踊りの話をしていたらしい。

「こうやって、手指をぴんと伸ばしてね」と言いながら見せたしぐさは、昔と変わらなかったらしい。

この時点で弟と両親は、まもなくかなとは感じて施設を後にしてきたそうだ。

私はコロナで世界が大騒ぎするちょっと前に一人で面会に行って、それっきり。

孫の私を母から奪いたくて
「おまえのお母さんは悪い人なんだ」と5歳ぐらいの時から私は祖母から言われ続け洗脳されて育った。だから、

「いくらばあさんがボケたといっても、大好きで仕方がなかった私のことは絶対忘れていないはず」

という自信で満ち溢れた心のまま面会に行って、帰りは泣きながら運転して戻ってくる羽目になった。


あの時、面会に行ったら

「せんせー、おらどっか体具合悪いの?」

と私に言ってきた。
私を女医だと思って話しているようだ。

「やだー、忘れちゃったの?孫のじゅでぃいだよ。覚えてないの?」

と返したら、

「じゅでぃい?あんたが?うちの孫のじゅでぃいは今5歳ぐらいで、まだこーんなにちっちぇーよ。何言ってんの?」

と手で5歳児の身長をジェスチャーして必死になっていた。

この一言ですべてを察し、私は最後まで女医として話をすることにした。

40歳を過ぎた私がいる世界とはまた別な世界で、祖母の5歳の孫として存在しているもう一人の私がいる。

なんとも不思議な時間だった。

私:「そのー、5歳のお孫さん?じゅでぃいちゃんっていうの?」

祖母:「そう。ひらがなでじゅでぃいって書くの。夏休みになったからそろそろうちに泊まりに来る。泊まりに来たらプールにつれていかなくちゃ。」(実際は冬直前に面会)

確かに5歳の私は、幼稚園の夏休みの始めから終わりまで祖父母の家に泊まり込んで面倒を見てもらっていた。

母は弟の面倒で大変だったし、私自身が祖父母が大好きだったので親がいなくてさみしいとか一切なく、よろこんで泊まりに行っていたくらいだった。

この年齢ぐらいの時から、祖母には「母は悪い人」と言われ続けて育ってきた。
なぜ悪い人なのかという理由も衝撃的で、子供の私の中で処理するのにはちょっと大変だった。
でも、「誰にも言うなよ。ばあちゃんとじゅでぃいの二人だけの秘密な」と言われ続けてきたので、母に聞いてみることももちろんできなかった。

重ねて、家では何でもかんでも「お姉ちゃんなんだから我慢しなさい」と母に言われ、父の前では「仕事で疲れて帰ってきたお父さんを怒らせてはいけない」という理由から機嫌取りばかりしている母と口裏を合わせるような態度をとることがあたりまえだった。

だから、「※水戸黄門ごっこ」を私が辞めるというまで付き合ってくれたり、本気でかけっこをしてくれたり、プールに好きなだけ連れて行ってくれたり、眠れないといえば眠りにつくまでずっと体をさすってくれたりする祖父母が大好きだった。

そして、まともに私と向き合ってくれない母は本当に悪い人だと思うようになっていた。

だから、子供の私がちゃんと子供に戻れる場所みたいなところが祖父母宅だった。

※「水戸黄門ごっこ」とは「ひかえおろー、このおかたをどなたとこころえるー」からはじまるお決まりのセリフを全部覚えて、印籠に見立てたチラシを丸めたものを祖父母に見せると、ははーっと頭を下げてくれる遊び。

祖父母宅に行けば、祖父母はいつも私に向き合ってくれるし、いとこやはとこが一緒に遊んでくれるし、いろいろ教えてくれる。
楽しかった。本当に楽しかった。

「もしタイムマシーンを使って戻れるなら、どの時代に戻りたいですか?」

という質問が私に来れば、迷わず「小学校に上がる前の5歳か6歳ごろ」と答えると思う。

その時代の思い出と、施設にいる祖母が見ている別な世界にいる私の様子がぴったり合致しているので、祖母にとっても特別な時間だったのだろうなと思う。


だがしかし。

今頃になって、夫の母親が精神疾患を持っていることもあって、色々調べたりしているうちに、祖母は「演技性パーソナリティ障害」とか何かの症状があった人だったのではないかと思うようになった。

いまさらなのだけど。

でも、祖母の演技力が高かったせいで様々なトラブルが未解決のまま。こういう事情の尻拭いを私の両親がしている状態。

父の弟二人(以下叔父)とその嫁たちも、洗脳が解けないまま70代に突入し始めた。兄弟仲も悪い。

どこに住んでいるかは知らないが、電話番号だけは知っているので万が一の時は、父が叔父たちに連絡は取るようにはするようだが、ひと揉めふた揉めあることは間違いないと思う。

ちなみに私は、洗脳されたまま親元を離れて祖父母と5年ぐらい一緒に暮らした。
でも、住んだことで矛盾点や息子である父でさえも知らない秘密をたくさん知ってしまい、違和感を覚え22歳ぐらいのときに洗脳が解けた。

さらに、結婚を機に祖父母との同居を解消することになり、父と母に子供のころから聞いてきたこと見てきたことをすべて話した。

父は黙り、母は泣く。
そんな状況だった。


こういう言い方は乱暴で失礼かもしれないが、祖母は良いところだけをつまんで人生を歩んでいるなと思う。

自分の演技に他人や孫、息子たちが騙されて信用していく。
嘘に噓を重ねていることも全く悪気がない。
それどころか、噓をつくたびにその嘘の世界の中で生きていくことができる変な特技の持ち主。

そしてそのままぼけた。
だからこちらの世界に戻ってくることはもうない。

今の今、祖母の生きている世界の中には、もう5歳の私もいないようだったと母が言っていた。

「こうやって、手指をぴんと伸ばしてね」と言いながら祖母は祖母の中の新たな世界でまた演じることを楽しんでいるようだ。

ばあさんよ。
申し訳ないがこちらの世界ではいろいろと準備が必要で、しかもばあさんがこちらの世界に残していったトラブルの後処理もあって、正直悲しんでいる場合ではない。

もし、そちらの世界で5歳の私と会うことがあれば、どうか母さんのことを噓をついてまで悪く言うのだけはやめてくれ。
5歳のじゅでぃいがかわいそうだから。


パラレルワールドって、本当にあるのかもね。
そろそろ私が望む世界をイメージしながら眠ることにする。

サムネイル画像は、「5歳の女の子とおばあさんが一緒にいる絵をかいて」とだけAIに指示を出して出来上がったもの。

5歳のころの私が大好きだったばあさんにマジで顔がそっくりで、びっくりして泣けてくる。










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