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英語ハッシュタグで、お手軽「リモート市場調査」をしてみよう。

インターネット文化の一つの象徴である「タグ(札)」は、コンテンツをフィルタリングして検索、分類、選択するためのツールで、長年「単語」がその役割を担ってきました。

ところが、たった一つの記号が単語だけでなく文字列、フレーズ、短文までも「札」に変え、タグの意味と影響力を根本的に変えてしまいました。

それは、言うまでもなく「ハッシュタグ(HT)」のことで、その生みの親とされるクリス・メッシーナは、ドライブで偶然遭遇したカリフォルニア州サンディエゴの山火事を見て、「大変だ、みんなに知らせなきゃ」と思い立ち、「#SanDiegoFire」という記号を付けた文字列を友人に説明し、twitter上での拡散を呼びかけたことが、HTが社会的に認知され、拡大したきっかけだったと語っています。

(映像※英語)

単語はその性質上、それだけでは主語、目的語、述語、補語のいずれかの役割しか果たせませんが、#を冠することで文字列やフレーズごとタグ化したHTは、タグが含むワードに沿って主体、対象、意思、行動をも表現できるようになり、タグ自体の創造、生成、共有、拡散といった行為そのものが政治的主張の発信や企業の広告宣伝活動をより具体化し、また、特定の運動への支持や賛同も表明しやすくなり、拡散スピードも加速しました。

#MeToo」や「#BlackLivesMatter」はHTならではの爆発的拡散を見せた代表例です。

従来の「単語だけのタグ」との大きな違いは、特定の団体や企業が発信するだけではなく、消費者や一般ユーザー、または市民の側からHTが作られ、自然発生的な共感が勢いを加速させてそのHTが広がるケースも増えたことにより、政府や企業もハッシュタグの内容やそこに集まる人々の動きを無視できなくなってきたことです。




今ではHTは、それがなければ結び付かなかった事や人をつなぎ、集めることで価値観や情報を共有するインターフェースとして定着しており、インスタグラム「~のある暮らし」「~好きな人とつながりたい」というHTがその代表です。

HTは今やそれ自体がコミュニティであり、イベントであり、居心地の良い居場所で、このように細分化された自発的な関心や動機で、国境を超えて人々を結集させるツールは、HT以前には存在しませんでした。

昔から外国語に興味があって、言葉の働きを観察するのが好きな私は、短い単語がスマホとネットの世界でこうした役割を担っていく過程を見て、言葉、人間、社会の面白さを改めて感じさせられています。




さて、長々とHTについて書いてきましたが、本ブログは輸出をテーマとしているので、ここからは、輸出においてHTをどう利用したらよいかを考えてみます。

誰もが思いつく用途は「商品と関係ある事柄をHTにして宣伝に利用」でしょうが、それだけでは物足りません。

私は輸出したい商品を持つ企業の方々に、

お客さんから見たら、あなたの商品はどんなイメージで、具体的にどんな言葉で連想され、検索され、選択されますか?」とお尋ねし、

例えば食品なら「健康」、「安全」といった大項目から「自然栽培」、「無添加」といった中項目的な要素、そして「熊本限定」「阿蘇特産」といった小項目までランダムに出してもらい、

①自分はこだわるが、客はそんな言葉では連想しない事柄
②大切だが、当たり前すぎて、いちいち検索には使わない言葉
③自社ならではの価値観と関係ある事柄

というふうに分類し、
「相手にとって価値がある言葉で説明された自社商品の姿」を描くことで、「売りたい」を「買いたい」に変換する作業を行うことがあります。




そして、輸出にはそこから先の作業が必要です。

現代の消費者はfacebook、インスタグラム、twitter等のSNSやYouTube、ブログなどで事前に興味があるモノを調べるのが一般的ですし、海外バイヤーも自分がそれを輸入販売した時のシミュレーションや、市場調査を行うべく、ネットで下調べを行い、その時にHTをチェックします。

ですから、どのHTにどんな製品があるか、またはその製品がどんなHTによって想像され、検索されるか確かめることは、マーケティングの際の重要な作業となりつつあります。

ですから、日本企業が海外市場で自社商品を売りたい時は、
まずは日本語イメージ整理をして、
それを「買う側が使う言葉」で説明できる文章を作り、
そこから英語で適切なHTを探し、
客層やPRしたい内容に基づいて、
適切なタグを選んでいく必要があります。

日本語と英語のHTは、同じような意味でもヒット数文字通り「ケタ違い」です。

あまりにケタが大きいHTでも埋没してしまいますが、ヒット数が少なすぎては誰も見ないので、適切な規模のHTを10~20個選び、投稿やwebページへの掲載に合わせて3~5個ほどをピックアップしていくのがよいでしょう。




事例として、私が長崎の調理器具熊本の生活雑貨の海外市場調査をした時に、生産者、製造者の方々と上述の「イメージ整理作業」を行った時の「日英HTリスト」ご紹介します。

この先に、どんな具体的なHTを使ったかは明かせませんが、「商品がアピールしたいコンセプト」を顧客視点に置き換え、顧客がタグやページの検索に使う具体的な用語を知った中小企業の方々は、

皆さん、目からウロコで非常に勉強になったと言って下さり、「海外のお客様のために」がどういうことか、以前より具体的にイメージできるようになったそうです

▼その時に使ったHTは、下記のものです。
(ヒット数は2020年9月25日時点のもの)

【日本語】(合計 543,100)プラスチックフリー 63,100、プラスチックフリー生活 1,000、エコな暮らし 12,300、脱プラスチック 16,000、プラスチック削減 1,000、環境保護 51,800、環境 153,000、エコ 226,000、エコライフ 18,900
【英語】(合計 26,610,300 ※日本語の49倍)plasticfree 2,900,000、plasticpollution 730,000、plasticfreeliving 385,000、reduceplastic 168,000、reduceplasticwaste 105,000、ecofriendly 10,040,000、eco 6,200,000、ecofriendlyproducts 656,000、ecofriendlyliving 537,000、ecoproducts 115,000、savetheplanet 4,000,000、saveocean 64,300、saveanimals 710,000




あなたの輸出希望商品は、

①どんな特徴と性質を持ち、
②それはどんな単語で検索・選択され、
③HTならどんな言葉で置き換えられ、
④英語のHTならどれが適切で、
⑤そのヒット数はどれくらい

でしょうか。

海外の店頭で試食や試用を行い、反響や感想を集めるのもよいですが、HT消費前の興味と消費後の感想を顕在化させたツールなので、「リモート市場調査」を可能にしてくれます。

輸出に興味がある中小企業なら、ぜひとも輸出商品の企画、選定、市場調査に生かしたいですね。


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