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[BKK通信04] バンコク寝台車事情 遠くまで来たなあ
タイ国鉄
鉄道は、いつ乗っても郷愁をそそられる。異国ではなおさらである。
ああ、遠くまで来たなあと思うのも、汽車の窓に寄り掛かってぼーっと外を眺めているときである。
![タイ国鉄路線図](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/61556757/picture_pc_ecb01722b182aa1dd680cdfbfe03d105.jpg)
タイ国鉄は総廷長距離4,000kmで日本の五分の一の長さである。
路線は大きく分けて東西南北・東北の五幹線。北はチェンマイ、東北はラ
オス国境、東はカンボジア国境、西は「戦場の橋」で有名なビルマ国境、南
は遠くマレーシアを経てシンガポールまで続く。
![画像6](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/60886597/picture_pc_253645018b439546d62b018df7ffe553.jpeg?width=800)
幹線とはいえ、そのほとんどは単線で、しかもメーターゲージと言われる1000mmの狭軌なのでスピードが出ない。したがって、特急といえども時間がかかる。ちなみに北の都、チェンマイまで750kmが夜行で13時間である。750kmといえば上野ー青森間、新幹線なら3時間だ。13時間といえば飛行機ならニューヨークまで行ける時間である。しかも1時間程度の遅れは当たり前なので、14、15時間も覚悟しておかなければならない。
このへんが、タイで鉄道に人気がない原因になっている。タイの価値判断基準は3S。「サバイ(楽)」「サヌーク(気持ち良い)」「サドアック(便利)」で、鉄道は見事にこの基準から外れている。で、安くて早くてラクチンな高速長距離バスと格安航空に客を取られてしまうのである。身近なタイ人で汽車に乗ったことがある者はほとんどいなかった。鉄道に乗るのは1等寝台車を使う金持ちか海外ツーリストか、出稼ぎに田舎から出てくる家族がほとんどである。
とはいえ、やっぱり汽車の旅は気持ちがよい。汽車でなければ楽しめない
旅もあるのだ。
![画像3](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/60881194/picture_pc_086ced0a3ceb28704b2089e2cc677971.jpeg?width=800)
寝台車
北の古都、チェンマイヘ夜汽車で行くことになった。夜の駅はそれなりに風情があってよい。ひそかに落ち延びてゆく感じがするではないか。
ホームで果物やビールを仕入れて、そそくさとニ等寝台車に乗り込む。
妻も私もこの二等寝台車が気に入っている。実にぐっすりと熟睡できるのだ。秘密はベッドの配列にある。ベッドは進行方向縦、窓に沿って上下に二段配列されている。そのため、列車の加速減速による揺れがないのだ。日本は進行方向に対して横に寝るため、どうしてもごろごろと体が落ち着かない。二段だからゆったりしているのも良い(ただし上の段は窓がないのでおすすめしない。その分少し安い)。日中は横一人ずつの座席で、これもラクである。
![画像5](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/60883055/picture_pc_7a4431acc860951e4a9695bf12aae3f5.jpeg?width=800)
走り出すと、すぐ車掌さんがベッドを作りにくる。さっさとあっという間にベッドを作っていく。ベッドは幅が広く、清潔で気持ちがよい。ちなみに二等寝台は通路に面しているが、1等寝台は扉付きの個室である。私的には二等で十分である。
![画像5](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/60882880/picture_pc_b024a70c78da6d5dfc15ba58ed1466ae.jpeg)
車内には食堂車、売店もあるのだけれど、値段が2倍から3倍してとても買う気にはならない。なので乗る前に食べもの、飲み物を調達していくのだ。
列車内のトイレは旧式車輌は和式とほぼ同じタイ式だが、新型車はちゃんと便座が着いている。日本と違うのはシャワールーム兼用になっていて、水浴びもできるのだ。とはいえ、これは上級者コース。難しいからやめといた方がいい。
![画像6](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/60883473/picture_pc_c26fd299811a3883d766e73442153761.jpeg?width=800)
列車は夜行急行とはいえ、単線、また時間調節のためにしょっちゆう停車する。それも十分から数十分の長さである。深夜、停車したひとけのない無人の駅をそっと覗いてみると、ぞっくりするような漆黒の空に無数の星が張りつき、湧き出るような虫とカエルの大合唱があたりを包み込んでいた。
朝、遠く東の水田の彼方から日が昇る。遠い雲が赤く染まると、いきなり朝が終わる。じりっとくる直射日光が、今日も暑いぞと告げている。さて、そろそろ終着駅である。長かったなあ。
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