【第4話】天国に一番近い教会を目指して(ジョージア)

2時間以上、駅で足止めされたものの、やっと出発してくれたカズベキ村行きの車。

相乗りタクシー、時間通りに発車しない車、飛び交う異なる言語。それら全てが「旅」を演出してくれていて、自分が間違いなく非日常にいることを実感させてくれる。日本じゃ絶対あり得ない体験。それに取り憑かれたように、ヨーロッパとアジアの境目であるジョージアに、いま僕は訪れている。

カズベギ村までは軍用道路をひたすら北に車で約3時間ほど。舗装された国道を進んでいく。

海外のドライバーにありがちなのだが、「法定速度」という概念がない。「80」とでかでかと掲げられた標識の前を「140」で通り過ぎる。いくら舗装されているとはいえ、日本基準ではない。ところどころガタついていたり、よくわからない物体が転がっていたりする。そんな道を、爆音の音楽をかけながら颯爽と走っていく。

極め付けに、140km/hで飛ばしているのに何食わぬ顔で携帯電話をいじり始める。「客を乗せているのに何事だ!!」と、日本なら一発で炎上してしまう(というか警察沙汰)状況だと思うが、そんなことはないのが海外。

僕は「事故りませんように、事故りませんように」と心の中で唱えながら、このスリルライドの時間を過ごしていた。

1時間ほど走っていくと、まず最初の中継地点である「アナヌリ教会」に到着した。

画像1

湖畔に建てられた、シンプルな石造の教会。

それからまた1時間ほど車を走らせると見えてくるのは「ロシアーグルジア友好記念塔」で、こちらはロシアとジョージアの友好200年を記念してロシアが建てたものらしい。

周りに山しかない場所に突如として現れる巨大なモニュメントは、いかにも「ソ連らしいなあ…」という建築。

画像3

画像5


「ジョージアはロシアによって守られている」という意味のペイントが施されているため、ジョージアの人からしたら複雑な気持ちなんだろうなぁと。


画像4


もう一度言うが、「いかにもソ連らしい」建築である。


画像2


ただ、しっかりと”観光地化”されているあたり、ちゃっかりしている。


こうした観光地に立ち寄りながら目的地のカズベキ村に行くわけだが、これが数百円。もしツアーを組むとしたら数千円はくだらない。体力とか、安全性とか、もちろん気にする部分はあるものの、「ある程度」が担保されるのであれば、僕は自己手配を心からお勧めしたい。

ただ、ツアーであろうと自己手配であろうと、避けられないものがある。

それは自然災害。

画像6

友好記念碑を後にしてほどすぐのところで、車が立ち往生していた。最初は何が起きているのかわからなかったが、地元のラジオや周りのドライバーの情報によると、落石によって道路が通れない状態になっているらしい。

そのため、相互通行ができないことから渋滞が起こってしまっているとのこと。

後ろからレッカー車のような車が来て「通してくれ〜」と叫んでいるが、他のドライバーも「身動きが取れないの見てわからないのか?!」と、イライラしている様子。聞いたところによると、自分たちの来る1時間前からこの状態らしい。

自分たちのドライバーも、「くそっ!」と苛立ちを隠せない。「ふぅ…」と大きなため息をつくと、ドアを開けて外へと出て行こうとした。

「どこ行くの?」

尋ねると、「トイレだよ。小便が漏れちまう」といって、真っ白な雪の方に向かって歩いていった。大自然の中で用を足すドライバーを見つめる乗客数名。なんともシュールな絵面だった。

「いつ動けるかわからないから、トイレに行きたければいっといた方がいいぞ」

スッキリした顔でそう告げられると、不思議と尿意を催してくる。

結局、10分後には自分もスッキリした顔で助手席に座っているのだから、「旅の恥はかき捨て」なんだと思う。

そして1時間ほど足止めされた挙句、車はゆっくりと動き出した。


そして約4時間の車旅を終え、カズベキ村に辿り着いた。

カズベキ村は標高1800m、ロシアとの国境8km地点にある小さな村。周りを5000m級の山々に囲まれている。この小さな村で1泊する。

村は約5〜10分あれば周れるほどの規模で、旅人向けのゲストハウスやスーパーマーケットが立ち並ぶ。人通りもそこまで多くなく、寂れた印象を受ける。

画像7

なぜこの名称にしたのかわからないスーパーマーケット。品揃えは言わずもがな悪く、「Google」の名前に負けている。


画像8

画像9

こちらは村の真ん中にある大きなスーパーマーケット。品揃えが豊富で、特にお酒類の種類がとんでもなく多い。ワイン発祥の地と呼ばれているだけあってワインは壁一面にならんでいたり、いろんなサイズがラインナップされている。

周りを見渡すと、欧米系の旅人たちがカゴいっぱいのお酒を買っているのがわかる。いかんせん物価も安いので、ついつい財布の紐が緩んでしまうのだと思う。

そんな村の一角に、質素なこの空間に似つかない、おしゃれでレトロモダンな場所があった。

画像10

使わなくなったバスを改装したカフェ。夕暮れまで営業しているとのことだったので、小腹を満たすために入ってみた。

画像11

内装は本当にシンプルで、バスの座席に木の机。

画像12

カスタードパイとホットチョコレートをいただく。日も落ちて少し肌寒くなってきたところだったので、温かさが体に染みる。

暖色系のライト、オールディーズミュージックがかかる”車内”で、ゆったりとしたひとときを過ごすことができた。体も温まったところで、宿であるゲストハウスに行くことにした。


実は、このカフェに立ち寄る少し前のこと。

カズベキ村に着いたのが16時ごろ。天気が崩れやすい午後なのにも関わらず雲の切れ間に青空が見えていたのもあって「これは」と思い、お目当てのツミンダサメバ教会を訪れた。

長くなってしまうので、それは、次回のお話。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?