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パパ・ヘミングウェイ アメリカ文学の巨人

『武器よさらば』(ヘミングウェイ著、新潮文庫等)。

1929年刊行。あまりにも古い。原題は『A Farewell to Arms』。武器をarm(腕)ということ、Good bye以外の「さようなら」があることを知りました。

第1次世界大戦のイタリアが舞台です。アメリカ人で、イタリア志願兵になったフレデリックと看護師キャサリンの物語。行動派作家として知られるヘミングウェイ自身も第1次世界大戦では赤十字の一員として、また、スペイン内戦時には人民政府軍側に関わりました。『武器よさらば』や『がために鐘は鳴る』は自身の戦争体験が色濃く出ていますし、『日はまた昇る』には主人公が戦争の後遺症に苦しむ姿が描かれています。

第1次世界大戦を経験し、従来の価値観からの脱却に苦しんだ世代を「失われた世代(ロスト・ゼネレーション)」といいます。ヘミングウェイはロスト・ゼネレーションの旗手として多くの小説を発表し、1954年、ノーベル文学賞を受賞しました。
彼は高校卒業後、地方紙の記者になり、そこで一切の飾りを廃した文章をたたき込まれたといいます。ハードボイルドの文体は日本語訳で読んでも簡潔です。(もともと原語で読めるほどの英語力もない)

ヘミングウェイは狩猟と釣りを趣味とし、ボクシングの心得がありました。医師だった父の影響だといわれています。おそらく、ヘミングウェイの父は「アメリカの理想的な男」、つまり「強い男」を育てたかったのでしょう。そして、ヘミングウェイ自身もそう願い、そうなった。ミスター・アメリカ、ナンバーワンのようなヘミングウェイをアメリカの男たちは「パパ」と呼びます。

「パパ・ヘミングウェイ」には世界中にファンがいます。(私も含めて)トリビアなところでは、かのルパン3世も「パパ」のファンです。ルパンが巨象をも倒すという水銀弾を作るとき、「尊敬するパパ・ヘミングウェイが・・・」と言っていた、記憶があります。(確かな記憶だといいんだが。私の記憶は時として私に嘘をつくことがある)ルパン3世というよりは作者のモンキー・パンチ氏が好きなんでしょうね。

ヘミングウェイの小説を通して、スイスのチョコレートはおいしいらしいとか、熊の形をしたブランデーのボトルがあるとか、ヨーロッパではビールを「パイント」という単位(1パイント=約500ml)で数えるとか、痒いところには炭酸水を振りかけると痒さがおさまるとか、いろいろと学びました。
なかでも深く深く学んだのは、キスするとき鼻はいかなる方向に向けるべきかという普遍的大問題についてです。この問題を知っただけでも『誰がために鐘は鳴る』を読んだ価値はあります。

『武器よさらば』はアメリカで二度映画化されています。
一度目は1932年、ゲイリー・クーパー主演。二度目は1957年、ロック・ハドソン主演。
ゲイリー・クーパーは西部劇でよく見たなあ。やっぱり『真昼の決闘』。『誰がために鐘は鳴る』でも主演しました。
ロック・ハドソンといえばジェームズ・ディーンの『ジャイアンツ』と、NHKの海外ドラマシリーズ『署長マクミラン』ですな。

私はゲイリー・クーパーの『武器よさらば』を見ました。
昔は(昭和時代は)テレビでよく名画を放送していました。だから、小学生や中学生の頃、『ローマの休日』、『波止場』、『カサブランカ』、『鳥』をはじめとするヒッチコック、数々のチャップリン作品、いくつもの西部劇、なんかを見ました。また、やってくれないかなあ。
それにしても、テレビばっかり見ている。
子どもの頃、「テレビばっかり見ているとバカになるぞ」といわれたもんですが、しっかり実証してしまった。
お若い方々よ、スマホばっかり見ているとバカになるよ。

スタインベックもヘミングウェイも、アメリカだけではなく世界中に大きな影響を与えた作家です。そして、今なおアメリカ文学の巨匠として読み継がれている。たまには自分とはまったく違う時代、場所、状況の世界を覗いてみるのも一興ですよ。それでも案外、登場人物たちの考えることやすることは我々と変わらなかったりする。

さて、肉体的にも精神的にもタフであったヘミングウェイですが、晩年はちょっと残念だったみたいです。二度の航空機事故にあい、後遺症に苦しみます。精神的にもダメージを受け、61才のとき、趣味の狩猟で使っていた散弾銃で自殺。まことに惜しいことです。

ところで、ヘミングウェイのお孫さんには女優になった方がいます。日本ではアヲハタジャムとポカリスエットのCMにご出演とか。はてさて、テレビばっかり見ていた割には覚えていないなあ。

お孫さん、その名もマーゴ・ヘミングウェイ。嘘のような話ですが、実名です。

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