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僕らが住むまちを選んだ理由

2022年12月に、引越しをした。
新築一戸建ての新居を構えたので当分はこのまちに住むことになる。夫婦子一人。新しい住まいを探すにあたって、自分たちがどんな暮らしをしたいか、どんなまちに住むのがいいか。ここ1、2年はリアルに悩み考えていたので、今回はその過程を書いてみることにした。

住んで都だった、お気に入りのまち

ここ最近の大きな環境の変化は、新居を構え引っ越したことだ。

約3年、僕らは墨田区京島の木賃アパートの2階に住んでいた。
1階に住むおじいちゃんはちょっと強面だけどとっても優しい方で、毎朝顔を合わせ、挨拶とその日の天気をする。息子と一緒の時はじゃれてくれて、息子もすっごい懐いていた。
近くには活気のある商店街があって、若い人たちがリノベして新たにお店がどんどんできたり、「すみだ向島EXPO」なるまちなか博覧会が年1回開催されたりして、とてもおもしろい町だった。焼き菓子屋さんやサンドイッチ屋さん、洋菓子屋さんに花屋さん、お気に入りのお店がいくつもあった。そこでの暮らしは充実して楽しかった。

▶︎レトロな長屋に若者が集まるまち 京島が気になる!
東京R不動産 https://www.realtokyoestate.co.jp/

息子が1歳を過ぎた頃、やんちゃにすくすく育つ我が子をみながら築50年の木賃アパートに住み続けるわけにはいかないなーと、少しずつ次の住まいを探していた。

とっても気に入っている町だったので、近くで物件を探した。
賃貸・分譲も問わず、新築・中古もどちらもそれぞれ良さがあると思っていたので、特に固執することはなかったのだが、そううまくはいかず、都内ではなかなか手が出る物件はなかった。。

泣く泣く、墨田区を出ることを考えたが、それからは「自分たちがどんな基準で住むまちを選ぶのか」を突き詰めることになっていく。

3年間過ごした木造戸建て。この2階での3人暮らし。1階のおじいちゃんとすごい仲良しに◎
すみだ向島EXPOでの一幕。お兄さんが「夕刻のヴァイオリン弾き」として毎日18時に演奏。下町の路地が客席になり人が集まってる。こんな日常を許容してくれる情緒的な風景があった。

子ども目線で考えたこと

まず第一に考えるのは子供のことだった。人生30年時代だとして、次の30年は子育てに集中する期間が長いので、子供の環境を第一優先に考えようと思った。

自分自身は郊外の開発途中にあるまちに生まれ育ったが、自分の住むまちをなかなか好きになれなかった。沿線で一気に開発が進んだため、個性がないまちだと感じていた。せっかく住むなら、愛着をもてるようなまちで育って欲しいと思った。

自然が豊かでのびのび遊べること。都内では、道路が近く、好奇心旺盛に飛び出す子供の動きを必死に止めることがしばしばあった。道端で父親とキャッチボールをして育った自分にとっては、少し窮屈な感じがした。どうせなら自然豊かでのびのび過ごせて、農業とか暮らしの根っこにあるようなものが身近にあるところがいいと思った。

コロナもあって、選択肢の可能性は広がった。上記の考え方は、会社に通う勤め人ではなかなか難しい条件だが、仕事の多くをリモートに切り替えることが可能だったので、都内へのアクセスをそこまで気にする必要はなかった。週2回ほどであれば、1〜2時間くらいの通勤は、そこまで苦にならない。

いいまちとはなにか

自分的、いいまちには3つの条件があるかなと思った(暫定版)。

1つは、寛容的であること。
2021年のLIFULL総研のレポートで、「地方創生のファクターX 寛容と幸福の地方論」が出た。つまりはまちの地域の「寛容性」が幸福につながっているというもので、深く深く共感した。なにかやろうにも受け入れてくれる雰囲気や、干渉しすぎない距離感とか、そういうのが表されている言葉だと思う。

2つは、人やふるまいが多様であること。
これは公共空間活用とかに関わっていて思うことだが、属性の異なる人々が同じ空間に共存していて、それぞれが思い思いに過ごしている。それは豊かな風景だと思う。まちにも同じことが言えて、多様な人が住んだり関わり出会うことができ、好きなようにふるまうことができるまちは、いいまちだと思う。

3つは、選択可能性。
社会全体において、個々人の選択肢がたくさんある状態は、豊かであると信じている。制度としても、社会性(空気感のようなもの)としても、知識としても。選択肢があること、ひいてはそれを知っていること(知れる環境があること)が大事だと思う。

決め手

結論、僕らが行き着いたのは、埼玉県宮代町だ。都内から1時間はかかる、人口3万人ちょっとの小さな町だ。

子どもの環境

引越し先の宮代町には、僕らが大好きな建築家「象設計集団」が設計した2つの公共施設があった。一つは「宮代町立笠原小学校」。外廊下の小学校で、1年中裸足で過ごし、教室から工程までダイレクトに飛び出せるようになっている。この小学校に通わせたい、と切実に思う。
もう一つが「コミュニティセンター進修館」。敷地の中央に窪んだ芝生広場があり、それを取り囲むように建物がぐるっとまわっている。広場から2階がつながっていたり、コロネードという中間領域があったり、外と内が一体でつながっているようなところだ。建築としても魅力的だが、使われ方も素晴らしい。実は宮代町の議場はここの小ホールをつかって開かれる。普通であれば専用に立派な建物が建てられるのだが、議会が行われるのは3ヶ月程度なので、それ以外の期間は町民に開放しようじゃないかということだ。議会以外の日は、コンサートが行われたり、おばあちゃんたちがカラオケをしたり、かなり自由な使われ方がしている。

さらに惹かれたのは、「農のある風景」。自転車で5分いったら田んぼが広がる。生活に欠かせない食べ物を育てたり収穫したり、サバイブ能力を子供と一緒に体験できる土壌があった。「新しい村」という農業施設があり、産直野菜が売っていたり、地域のお店のお弁当が買えたり、農業体験ができたりと、農のある町を体現した施設である。

圧倒的に魅了された象設計集団の「笠原小学校」。子供たちは1年中裸足で過ごし、外廊下からそのまま校庭に出られるようになっている。
コミュニティセンター進修館の議場。普段は小ホールとして町民が利用できるようになっている。(写真は進修館のFacebookから)
産直やカフェがある「新しい村」。田植えや稲刈り、芋掘りなどなど「農体験」ができるイベントや講座がいろいろ。(写真は新しい村のHPから)

たくさんのプレイヤー

これは、3つのいいまちの条件、みたいなものに通ずるのだが、宮代町にはたくさんのプレイヤーがいるようだった。町に何度か足を運ぶと、こだわりを持った個店がいくつもあることに気づく。パン屋さん、お弁当、農園、、最近ではROCCO(ロッコ)という平家郡をリノベーションした横丁施設もオープンした。
こういったプレイヤーがたくさんいる町は、寛容的だし、選択可能性があるし、多様だと思った。
年に1回、トウブコフェスティバルというものも開催されている。先ほどの進修館を舞台に、飲食・クラフト・子どもの遊び場・パフォーマンス、たくさんのコンテンツが集結する。町内だけでなく、沿線や近隣からいろんな人が持ち寄ってイベントが行われ、幸せな風景が広がっている。

これは単なる妄想だが、僕も三輪車でまちなかをあっちこっちしながら、紙芝居や小商をしてみたいと思ったりする。稼ぎたいとかそういうことではなく、自分がなにかを表現したり、まちとの”かかわりしろ”を持つことが愉しみに繋がるのだと思う。なにかやってみようかな、と思わせてくれるのだ。

最近オープンした”セレクト横丁”「ROCCO」。それぞれの小屋に個性的なお店が軒を連ねる。

おおらかな駅前開発

大きかったのは、2年ほど前にできた、駅前の東武ストアと無印良品だ。
駅前一等地なのに平屋ののびやかな建物で、こんなに気持ちの良い駅前開発は見たことがなかった。しかも、よくよく聞くと目の前の広場は公園ではなく、東武鉄道が自ら整備し、管理運営は無印良品が担っているらしい。公共でもなく、民間企業がそんなお金にならないことに投資をしているのだ。広い空を最大限享受して、のびやかに暮らそう!みたいな気概を勝手に感じた。それを見たときに、いい町だなと一瞬で引き込まれた。

▶︎東武鉄道と良品計画、宮代町の連携。地域とともに育つ、大らかで新しい駅前開発|東武動物公園駅前
(引っ越す前に気になって取材・記事化させていただきました!)
公共R不動産 https://www.realpublicestate.jp/
月に一度開催される「つながる市」。無印良品が主催し地域のプレイヤーが出店している。



いろんなことが重なり、ここぞ!!!という町にたどり着いた。いろいろ悩んだが、夫婦でたくさん話したり妄想したりして決めたこともあって、今はとっても満足している。自分たちらしい選択だったと思う。

これからこのまちでどんな暮らしを叶えていくのか、楽しみだ。


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