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#4 例え話:ワクチン接種で『逆算』によって「何が違ってくるか」を考える

逆算の効用を分かり易く説明するために私が作った寓話ですので、数字や施策は仮定のものです。現実とは異なる点をご承知ください

積み上げでは遅すぎる

ワクチンが日本でも承認される見込みが立ったころ、次の関心は「いつまでに接種を完了できるか」に移っていました
接種実施の主体は自治体であるため、各自治体に質問調査を行いました

「重点ターゲットである65才以上の高齢者だけをとっても、3500万人に上るため、ワクチン接種は年内に完了しない」「まして全国民となると翌年以降になる」と言うのが調査結果だったのです

これは、担当部門が現有の能力を駆使したとしても、現状の延長で考えればそうなるという予測です
ワクチン接種は追加業務になるため、通常業務を融通してリソース(人、場所、時間等)を確保しなくてはなりません
一般のクリニックにしても、昼休みとか診療終了後の時間を空けて、そこで対応することが予測の前提でした

それに制約は医療従事者だけではありません。接種券の準備、発送、管理など、事務方にも関係します
各々の組織が、できることを精一杯、頑張ることを前提に積み上げた予測値になります
それ以上を求めると現場に過剰な負荷がかかってしまいます

逆算するとMust Doが分かる

それに対して「7月末までに希望する高齢者への接種を完了する」と目標を設定し、そこから逆算すると対応策が変わります
3500万人の85%に対し、2ヶ月半で、2回接種を完了するためには「1日100万回の実現」が、必達目標として上がってくるのです

現状の延長で50万回だとしたら、残り50万回を埋めなくてはなりません
そこで方策を考えます
① 自衛隊の大規模接種会場を東名阪に設置して10万回
② 高齢者施設への集団接種拡大で15万回
それでも25万回足りない、ならば、
③ 自治体の接種能力を増やすために歯科医を入れて10万回プラス
④ 既存の接種会場で役割を分業化して生産性を上げて10万回プラス
⑤ 残りは、東京都の接種会場数を新しく10か所増やして、5万回プラスする
といった具合です

着目すべきは、施策がすべてMust Doになっている点です
どれかひとつでも目標を達成できないと、全体の目標を達成することができません
各々の施策の責任者は進捗を把握し、状況の変化に対応し、手を打つことで必達を期すことになります

目標達成の道筋を示す

これが「積み上げ」との違いです
目標を達成するために、何と何と何を達成すれば良いかが明確になります

何を優先し、リソースをどう配分するか、必達を期すために何をやるか
それらを明らかにして「勝ち筋」を考えることこそが「戦略的な思考」です
そして、そのために必要な思考の「型」が『逆算』なのです

次回のトピックは、逆算のために必要になる目標をどう設定するかについて説明します


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