見出し画像

『第3回 シン・若手病院総合診療医カンファレンス』活動報告を雑誌寄稿

今回は2023年12月23日に開催した『第3回 シン・若手病院総合診療医カンファレンス~今日から始める退院支援~よりスムーズな医療連携のヒ・ケ・ツ~』を医学書院「総合診療」5月号に寄稿したためその報告です。

『シン・若手病院総合診療医カンファレンス』は日本プライマリ・ケア連合学会(JPCA)と日本病院総合診療医学会(JSHGM)の連合で開催した企画。
今回の会のテーマは『退院支援』。
3人の講師の先生によるレクチャーと、その後Q&Aのコーナーで自由にディスカッションをしていただきました。

最初のレクチャーは「入院決定時から始まる退院支援 ~人生を再構築をチームで支援する~」宇都宮宏子(看護師)(在宅ケア移行支援研究所 宇都宮宏子オフィス)
続いて「地域へ展開する医療福祉ネットワーク」前田小百合(社会福祉士)(三重県立志摩病院地域連携センター)
最後に「エビデンスとナラティブに基づくシン・退院支援」西岡大輔(医師・社会福祉士・介護支援専門員)(大阪医科薬科大学 医学研究支援センター医療統計室)

自由にディスカッションを頂いた様子

「退院支援」
入院患者さんが退院した後に安心して生活を送れるようソーシャルワークを行うことが重要と考えながらも、何を行えばいいかわからないという方も多いのではないでしょうか。そこでスムーズな退院支援を進めるための方法を学ぶために上記の会を開催しました。

そもそも退院支援を行うにあたって、いずれの先生も話された視点、それは「医療が人生を遮断してはいけない。医療とはあくまで資源の一つであり、生活を奪うことやその人の生活に役に立たない医療は提供してはいけない。」ということでした。
退院支援とは「患者さんの人生の再構築を支援すること」であり、患者さん「本人が願っている暮らし」とは何なのかを知ることから始まります。どうしても病院では医療にばかり目が行きがちですが、医療だけでなく福祉や生活モデルに着目した上で退院を進めるという考えを持つことの必要性について改めて問われることとなりました。

そして病院は「連携が大事」と言いながら、連携の方法を知らないことが多く、「退院」が支援のゴールになっていることも多々見られます。本当に連携を行うためには、必要な時だけ・困った時だけ連携しようとするのでなく、退院後・入院前から日々地域とのネットワーク活動を行っておくこと、これにより初めて円滑な連携を図ることが可能になります。なんならそうした顔の見える関係、その人の実力まで見える関係を作っておけば多少の無理難題も相談することが可能となります。病院での気付き、地域の課題と思われることに対して、地域全体で共有できる関係性が作られれば患者・家族の希望に答えられる連携につながります。

では、実際にスムーズな退院支援を進めるために必要な考え方はなんなのか。それを5箇条にまとめると以下のようになります。
①医療者の判断で「在宅は無理」と言わないこと。在宅が無理かを決めるのは地域であり、病院ではない。
②在宅や患者の背景を意識した治療ゴールを定める。最適の医療でなくても生活の中で行える内服・注射の頻度で医療の調整を行う。
③24時間の安心・安全はどこにいても存在しない。何かがあることが当たり前と考えることが生活の始まりである。
④医療・福祉の専門職でも限界がある。専門職だけでなく民生委員やご近所の力も借りることで生活は成り立っている。
⑤患者さんに合わせた説明を。医療者からしたら同じ説明内容でも、患者さんからすると初めてのことが多い。
このような視点を持つことが退院支援に大事だと考えられました。

病院だけ、地域だけ、それぞれが考えても家に帰って良かったと思える暮らしを実現することは難しく、入院医療が人生を遮断しないためには退院後の生活を見据えた支援を病院と地域が一体となって行う必要があります。大事な人生をどう生きていくか、そのための退院支援の在り方を学ぶ機会となり、この内容が、喜びや安心につながる退院に少しでも役立てられればと思いました。

この会の内容は簡単に医学書院「総合診療」5月号に寄稿したため良ければご覧ください。

日本プライマリ・ケア連合学会 若手医師支援部門 病院総合医チーム:jpcahospitalmed@gmail.com
(文責:貝田航 神戸市立医療センター中央市民病院)
※当チームに加わりたい・興味がある方、またご質問等がございましたら、Gmail: jpcahospitalmed@gmail.comへメッセージを送信してください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?