さよならのバックパックがくれたひと夏のこと
ご自愛なんてほど遠い毎日でも、発泡酒とからあげクンはやさしい。
東京の終電に揺られるのが日常だったある日、コンビニ袋をぶら下げて帰宅すると部屋の前に男がうずくまっていた。
薄汚れパンパンになったバックパックに、穴のあいたジーンズ。雨で濡れた道路をまばらな車が通りすぎる以外、静けさが夜を包んでいる。
通路の白熱灯の点滅にあわせ頭の中でアラームが鳴る。それと同時に、男が顔を上げた。懐かしい声が響く。
「おかえり~」
声の主は、旧友のKだった。日焼けした肌は記憶の彼よりも