ベンチャー社長の持ち株比率

「会社は誰のものか」

会社法上は、株主のものであることは間違いなく、この言葉を見ると村上ファンドを思い出す。株主(会社の所有者の一部)として、不採算事業の売却や自社株買いなどで短期的に株価を向上させる施策を取るように経営陣に迫る姿が記憶に新しい。

上場すると、証券取引所でお金を集めやすいというメリットがある一方で、不特定多数の株主が会社の所有者になるというリスクも孕んでいる。「モノ言う株主」が集まってくるリスクだ。(最初から「モノ言う株主」なのか、もしくは一定程度のシェアを持つようになったので自分の資産を守る(増やす)ためにモノ言う株主になったかのは不明だが。。)

一方で株主による会社の経営状況の監視は一定程度の意味合いを持っており、経営陣に対する適切な緊張感を与えることに繋がる。企業の利益最大化につながる施策を取っているのかを常に見られていること意識するのは十分に効果があり、人間なかなか監視やプレッシャーがないと楽する方向に流れてしまうものだ。

では一方スタートアップについてはどうだろうか。

スタートアップとは、限られたリソースの中で一点集中でサービスを提供すべく取組んでいて、経営陣は刻々と変化する外部環境を見極めながら、最速でPDCAを回しスピーディーに意思決定をしていく必要がある。時にはこれまで開発していたプロダクトを捨てて、別のプロダクトの開発を進めるという大胆な意思決定も不可欠になってくる。このフットワークの軽さこそ、スタートアップの強みだ。

スタートアップの強みを生かすべく、スピーディーにかつ大胆に意思決定していくために、意思決定に関わる関係者を可能な限り限定させる必要が出てくる。究極は株主(所有者)と経営者を一致させることがベストである。但しスタートアップとして事業の急成長を目指すにはどうしても資金が必要になってくることになり、特にハードウエア系のスタートアップは外部からの資金に頼らざる負えないという側面が出てくる。

このような状況でもやはり成功確率を上げるためには可能な限り社長が株式を保有し続け、意思決定の関係者を最小限に絞るということが必要になってくる。稀にかなり低い持ち株比率でやられている社長がいるものの、上場やM&Aの可能性がある程度見えているようなミドルやレイターステージが多く、Good Exitした場合の経済的利益がある程度の確度で見えていることが多いように思う。

シードやアーリーのフェーズで経営陣(特に社長)の持ち株が低い時点で、資本政策をミスったと言わざる負えず、その時点で其のスタートアップの成功確率はとてつもなく低くなっていると個人的には感じてしまう。

もちろん世界にはそのような状況でも本当に優秀な経営者で、かつ会社のビジョン・ミッションに心から共感している経営者であるならば、上手くいくケースもあるだろう。

日々キャッシュアウト(会社清算)の恐怖に怯えながら、顧客開拓・投資家回りを行い、日々遠のくように感じるMVP(プロダクトマーケットフィット)の光を追い求め、終わりの見えない途方もない山を登り続ける、起業家の歩みには心から尊敬の念を抱く。

全ての起業家(社長)が納得のいく経営を心からしてほしいと願う。





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