見出し画像

インドネシアの合理的思考に乗り遅れる日本

インドネシアも招待国として参加した広島サミット2023が閉幕し、インドネシアという国が改めてASEAN東南アジアを代表する国になったと実感した。世界各国もインドネシアとの関係性を軽々に出来ないという印象で、まさに大国になった印象だ。それは岸田首相の隣で微笑むジョコ大統領の表情からも感じられた。
 
ここ数十年、インドネシアという国を見てきて感じる事だが、外交を含めたさまざまな方針が合理的で強かだと感じる。日本とインドネシアは戦後賠償の関係から始まり、非常に有効な外交関係と経済関係が築かれてきたが、ここ最近は日本一辺倒ではなくなってきている。何でも日本製・日本企業という時代は終ったのだ。
 
その点にもっと危機感を感じるべきだ。
 
その象徴がジャワ島高速鉄道の建設だろう。凡そ日本式が採用させるだろうと見られていたものが、最終的に中国式高速鉄道が選ばれて、日本はお怒り&残念モードとなった。ジャカルタ~バンドン間はこの中国製でほぼ完成しているが、最終的にはスラバヤまで延伸する予定で、その延伸がどうなるのか、まだ確定的な情報はない。中国式に決定した後も、土地の買収に始まり工事進捗や車両納入などで遅延が多発し、私もコロナ明けの時期にインドネシア出張したが、もう乗れる、もう少しだ、もう少し先だという未確定情報ばかりであった。この先どうなるのか、懸念を窺わせる記事もいくつかあり、ジャカルタ~バンドン間の移動が多い私にとっても心配事の一つだ。
 
一方、最近のニュース記事で韓国とインドネシアが共同開発する戦闘機の試作機にインドネシア空軍のパイロットが搭乗したとあった。この機体は4.5世代と言われる最新の戦闘機で、開発費の一部をインドネシアも負担する事で、試作機の1機をインドネシアに持ち込み、50機弱をインドネシア国内で生産する計画という。インドネシア軍に関しては詳しくないが、空軍ではこれまでアメリカ製やロシア製等の戦闘機を購入しているようで、次は韓国製という非常に多岐に渡る調達となっている。
 
防衛と関連して書くが、インドネシアという国は非常に偏りのない外交を展開している。私見になるが。どの国とも友好的で決定的に決別しているという国がないのだ。アメリカ、ロシア、中国、DPRKとも順風満帆とは言えないまでも比較的良好な関係がある。国策としてそういった外交方針かも知れないが、インドネシア人特有の付かず離れずの特徴があるのかも知れない。そういった特徴から各国間の係争調整役や窓口的役割を担っている部分もある。
 
上記三つの事例を書いたが、インドネシアという国は非常に合理的だと感じないだろうか。
 
加えインドネシアに限ったことではないが、新しいもの、便利なもの、かっこいいものをいち早く取り入れる文化も非常に強く、良いものは素直に使うようになるのだ。自動車が良い例だろう。以前はジャカルタを走る車両の95パーセントが日本車という印象だったが、ここ10年くらいは韓国車が増えている。韓国車が増えている要因として値段と品質のバランスが非常に良いとの事だ。比較的手ごろな値段で大き目サイズの車が購入出来る事から、人気と聞いた。
 
最終的には個人の考え方によるが、偏った思想・教育や歴史感が強くない為、世界の良いものをいち早く取り入れる素養がインドネシアには強いと感じる。それが国の方針や外交にも生かされ、今のインドネシアの発展に繋がっている側面が大いにあると感じる。
 
そのニーズに少し合わなくなってきているのが日本であろう。もちろん未だに多くの日本人が駐在しビジネスでも行き来する為にジャカルタには多くの日本関連のものがある。JKT48等の日本文化も未だに人気だ。しかし状況は変わっている。要因ははっきりしないが、ジャカルタは韓国と中国の人気が高まっているのだ。韓国系列のモール、飲食店も急激に増加しているのだ。また中国は比較的安価な電気自動車をいち早くインドネシア市場に投入し、インドネシアの購買意欲を掻き立てている。
 
この文章で強調したいのはインドネシア市場のニーズは、手の届く価格と早期導入のバランスが非常に大切なのだ。それが日系企業の価格設定とスピード感が合わなくなっている部分が大きくある。その点を見直す必要があると感じるし、まだ市場拡大が見込まれるインドネシアの商機を逃すことになりかねない。この様な状況が続けば、日本でしか作れない物、時間を掛けてでも日本製にこだわりたい物、政府等の補助がある物でしか日本製や日本企業が重宝されなくなり、大きな商機の損失に既に入っている状況が昨年末のジャカルタにはあった。
 
インドネシアの合理性から生まれるしたたかさに民間企業から早く対応し戦略を持つべきだ。平均年齢30歳、人口3億人弱の市場は未だに大きな魅力と可能性がある。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?