見出し画像

(詩) 潮騒


   ずいぶん遠くまで来たねと

   あなたが言う
 
   時計の針の天辺を

   夜間飛行が越える
 
   むらさきに染まる部屋
  
   あなたの瞳の中の私は
 
   窮屈そうに髪をなぞる
 
   ほどけた腕
 
   不確かな距離
 
   ふくろうの羽ばたき 

   あなたは自分の影に寄り掛かり

   ぽかりと煙草をふかす

   窓は果てしない絵画

   静かなざわめき

   明るい闇
 
   魔法が使えなくなった二人 

   夜顔みたいな微笑みで

   あなたは嘆く

   過ぎ去った祝杯の日々を

   あの頃の僕たちは

   もっと夢見ていたね
 
   君はもっと無邪気だったねと

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?