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GUTTIの小説

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が執筆した小説を集めています。短編、中編、長編、過去の作品から書き下ろしまで。私
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2024年6月の記事一覧

『フィッシュ・アイ・ドライブ』第11話:「日本中央の碑」をぶっこ抜け!

*    新たな相棒には「フェアレディZ」を選んだ。  黒服の男から逃げ切るためには、普通車では話にならない。スポーツカーをレンタルすることにした。いろいろ車種はあったが、日本を代表するスポーツカーの新型がよいと思った。  純白のボディで、最大時速で280kmも出るらしい。このスペックであれば、いざとなった時にぶちかますことができる。  支払を済ませたアキラと希虹(のあ)は車両に乗り込む。エンジンをかけると、まずはナビを立ち上げた。 「その日の本(ひのもと)ってのはど

赤坂見附ブルーマンデー 第10話:幕張メッセ、大混乱

 ステージを進行するチームと、会場外で誘導するチームが交わすトランシーバーのやり取りも騒がしくなってくる。 「田村です。スペシャルステージ開始四十分前。各自、状況報告ください」 「恵です。現在、三〇〇名程度の来場者が待機中です。どうぞ」 「高山です。ステージリハは完了しています。あとはゲストを待つのみ。オープンはいつでも大丈夫です」 「桜庭です。シークレットゲストの二階堂彩夢さんですが、あと十分ほどで会場入りするそうです。現在、アパホテルを車で出たようです。どうぞ」

赤坂見附ブルーマンデー 第9話:アニメファン熱狂の祭典

 田村の異動は年明けからということだった。  その田村にとっての、宮戸チーム最後の仕事が、年末に行われるビッグイベント、『アニメ・ファンタジーフェスタ』だった。  アニメ・ファンタジーフェスタ、略称「アニファン」が開催されるのは、イベントの聖地幕張メッセだ。    アニファンは国内人気アニメの人気声優が、ファンサービスとしてステージに登場したり、その場でしか手に入らないアニメグッズなどが販売されたりなど、全国のアニメファンが一堂に会する祭典である。    田村はずっとこの

赤坂見附ブルーマンデー 第8話:すれ違いまくりの純情

   清治とは、過去に一度だけ、互いに口もきかなくなってしまうほどの大ゲンカをしたことがある。   「鳥やす」を出たあと、オレたちはそのまま駅で別れた。清治は歓楽街へと一人繰り出し、オレは東西線に乗ってそのまま帰宅することになった。  日曜の夜ということもあってか、乗客は少なかった。少し酒に酔っていて気が大きくなっていたオレは、座席にどかっと座り、ぼけっとしながら車窓の外を見つめていた。  オレは「鳥やす」で清治に言われた言葉を反芻しながら、そのままなぜか、清治と大ゲンカ

赤坂見附ブルーマンデー 第7話:お前、協調性皆無だったもんな

   週末の日曜日、妻が娘をつれて近所のママ友とランチに出かけるとのことだったので、一人の時間ができた。平日の疲れが抜け切れていなかったので、一日中寝て過ごすのでもよかったのだが、大学時代からの旧友である清治から一年ぶりくらいに連絡があり、飯を食おうよ、と誘われたので、清治と高田馬場方面で会うことになった。  清治とは大学時代に知り合い、ともに映画を志向し、シネマ研究会というサークルにも一緒に入った「シネフィル」仲間である。  清治=「せいじ」と読むのが本名だが、オレは『

赤坂見附ブルーマンデー 第6話:弱小会社の、出世レース

   週の後半戦である、木曜日。オレは朝から、電話をかけ続けている。    都内にあるイベントホール、展示会場、ホテルの宴会場。一日に三〇件近くの施設に連絡をすることもある。これもイベント制作会社の主要な仕事の一つである。    イベントは、会場こそがすべてであるといっても過言ではない。そのためイベントマンは、あらゆる会場のスペックと形態について、熟知していなければならない。その訓練として、会場確認という、ひたすら電話で確認をとるやり取りがある。    全国のイベント会場一