宗教や信仰についての雑記 #303
◯DMNと固定観念
前回、うつ病患者では、デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)の活動が過剰になる傾向があることに触れました。
おそらくそれは、DMNが過去の出来事を思い出し、自分自身や自分の経験について考える際に活性化することと関係あるのでしょう。
そのことはつまり、DMNが活発になると、私たちの思考は内向きとなり、過去の経験や記憶に基づいた思考に囚われやすくなるということでもあると思います。
DMNが過去の経験を再生することで、私たちは現在の状況を過去の枠組みで解釈しようします。新しい情報や状況が、過去の経験と一致しない場合、私たちはそれを無視したり歪曲して解釈したりする可能性が高まります。
この傾向は、固定観念を強化する一因となりえるとも言えます。
実際に、fMRIなどの脳イメージング技術を用いた研究では、固定観念を持つ人ほど、DMNの特定の領域が過剰に活性化していることが示されてるそうです。
固定観念とは、一度形成された考え方や価値観に固執し、新しい情報や視点を受け入れにくい状態を指します。
人が固定観念にとらわれる原因としていくつかのことが考えられています。
まずは、認知や情報伝達の効率化、認知バイアスや自己一致性を保つための過去の行動や信念の正当化、といった心理的要因があります。
そして、社会規範や同調圧力、幼少期から教育による価値観や常識の影響、といった社会的要因もあります。
また、不安な状態の回避といった、個人の心理と社会心理との両方にまたがる要因もあります。
固定観念は、それが内側に向かうと、ときにうつ病のように、自分自身を苦しめ傷つけてしまいます。またそれが外側に向かうと、偏見や差別や抑圧と化して、他者を苦しめ傷つけてしまいます。そして、新しいアイデアや変化を阻み、社会の発展を妨げる可能性があります。
そんな固定観念を克服するには、柔軟な思考や批判的な思考を心がけ、自分の考え方の根拠を問い直すことなどが必要なようですが、そのためには、多様な意見に耳を傾けることや経験を通して学ぶことといったような、内向きの思考を止めて外部と接触することが必要なようです。
ただその際は、社会の同調圧力や情報のフィルターバブルにとらわれないようにすることが重要です。
DMNのために、ぼーっとしている時間もまた大切なのでしょうが、それも度が過ぎれば「時間の無駄」以上のデメリットが生じてしまいます。
何事も「過ぎたるは猶及ばざるが如し」ということなのでしょう。