小説|腐った祝祭 第ニ章 3
ナオミの死から一週間ほどで、大使館の生活は元に戻った。
ナオミが来る前の、元に戻った。
それは火が消えたようで、この屋敷は以前こんなにも静かだっただろうかと、誰もが不思議に感じていた。
元に戻ったというのに、みんなが調子を狂わせていた。
何か物足りなく、少しも忙しくなく、退屈だった。
一番退屈になったのは、やはりサトルだろう。
何一つ面白いことが見出せなかった。
面白くないまま、街を覆っていた白い雪は姿を消した。
例年より早いという気象情報を耳にして、忌々しさが大使館を包んだりもした。
もう少し早ければ、あるいは遅ければよかったのだ。
その雪がなければ、すでに暖かくなっていれば。
夜遅く帰ってくるサトルを、クラウルが迎えてくれるが、小言は聞かれなかった。
「何だよ、クラウル。いつから無口になったんだい?」
朝になると、顔を洗うサトルにミリアが時々尋ねるようになった。
「サー。そろそろお洗濯をと思うのですが」
「何を?」
「……ナオミ様の、枕カバーを」
「ああ。まだいいって言ってるじゃないか。誰も使っていないんだから、汚れやしないんだ。私の涙の跡でもついてるかい?」
サトルは笑って言う。
「ついてる訳ないよ。誰が泣いたりするもんか。ナオミは裏切り者じゃないか。私の傍にずっといるって言ったんだよ。それをまた黙って姿を消して。酷い女だよ。いつも約束を破るんだからね。私だって破ったことはあるけど、女にそうされるのは好きじゃないんだ」
雪が完全に消えると、サトルはパーティーにも出かけるようになった。
知った顔と目が合って会釈したが、彼が近付いてきて話しかけてくれるまで、誰なのか思い出せなかった。
「大使。この度は本当に、なんと言っていいのか……」
じゃあ、言わなくていいさ。
「とても残念です。結婚式の絵を描いて欲しいと依頼を受けて、僕は本当に心待ちにしていたのですが」
ああ、宮廷画家だ。
サトルは微笑んだ。
「ありがとうございます、フェル。私も楽しみにしていました。仕事をキャンセルすることになって、申し訳ありませんでした」
「いいえ。そんなことは。皇太子もひどく嘆いておられました。プリンセスも」
「もう、いいですよ。話を変えましょう。せっかくのパーティーじゃないですか。そうだ。彼女とは上手くいってるんですか?デリラとは」
「え?」
フェルは首を傾げる。
サトルも傾げた。
違ったか?ええっと……。
「ああ、失礼。ヘレンとは」
「あっ。はあ」
フェルは弱り顔で笑った。
「あの時は失礼しました」
「いいえ。美人から痛い目に合わされるのは嫌いじゃありませんから。私も言い過ぎたのだし。赤毛の綺麗な女性でしたね」
「ええ、確かに。しかし、僕は彼女とはその、そういう間柄では」
「おや、そうでしたか」
「彼女はその、私程度のステイタスには興味がないらしく」
「宮廷画家を袖にするとは、大したものだ」
「実際に付き合ってみると、肩書きの響きほどではないと判ったんでしょう」
フェルは肩をすくめる。
「モデルにはもうなってくれないのですか?」
「極々たまに、気が向いた時だけに。ヌードモデルは誰もがやってくれる訳ではないので、彼女と知り合えて助かっていたんですけどね」
「あなたとヘレンは純粋にそれだけの仲だったんですか?ビジネスライクな。私はてっきり」
フェルは追究されて、多少たじろいでいた。
普段のサトルならそんな野暮なことを聞きだそうとはしなかったろうが、この日は退屈で、それ以外の話も思い当たらなかった。
「その、もちろん、僕の方は、多少…。その、赤毛の女性に弱くて」
「彼女だって、少しはそのつもりであなたに近付いたんでしょう?」
「ど、どうでしょうか、それは」
「なるほど。確かに何事もなかったような感じですね」
「ないですよ、もちろん」
それは運がよかったですね。
と、サトルは心の中で思った。
「彼女の方が何枚も上手だったんだな」
「そ、そうですね」
珍しいほど純情な画家は、ハンカチーフで汗を拭いた。
パーティーは7時には引き上げた。
取り立てて興味のある人物もいなかったからだが、まっすぐ帰る気にもなれず、ギリヤ街に足を向けた。
何日か前に飲み仲間のテラと出会った店に入ると、相変わらずテラはカウンターで飲んでいた。
帽子をかぶったままで、それと同じようによれたモスグリーンのジャケットを着ている。
彼の方へ歩いていく途中、一人の男に肩がぶつかった。
男は他に二人の男を連れていた。
この店はあっちもこっちも男ばかりだ。
女はウェイトレスが三人ほどいるだけの、埃っぽく薄汚い店だった。
「失敬」
そう言って通り過ぎようとしたサトルの腕を、ぶつかった男はつかみ上げた。
見慣れない顔の男だ。
もちろん向こうもそう思っただろうし、他の客も同じだったろう。
金にダイヤが一周しているリングを薬指にはめている男など、この店には滅多に来ない。
「失敬だと?やさ男が、気取ったことを言ってるねえ」
男はサトルの腕を上にあげようとしたが、サトルは途中で振り払った。
「やさ男?私はそれほど優しくはないと思うよ」
サトルは言い終わらないうちに、自分より額の分だけ大きな男の顎を殴った。
腰を少し沈めて、体を固定した上で。
確信的に狙ったので外すことはなかった。
脅しではなく、一瞬で殴ると決めたのだ。
男は仰け反り、派手に倒れた。
連れの男の一人が倒れた男の横にしゃがみ、一人はサトルに向かって身構えた。
店内は騒ぎ出したが、倒れた男を心配しているのではない。
もちろん、面白いことが始まったと喜んだのだ。
ウェイトレスと雇われのバーテンダーだけが面倒臭そうな顔をし、カウンターのテラはサトルに気付いて手を上げた。
「旦那!」
サトルは振り向いて、右手の人差し指と中指をそろえて軽く振った。
構えていた男が飛び掛ってきた。
右手で顔を打ち、左手で首を殴った。
その男も倒れた。
しゃがんでいた男が立ち上がる。
「仲良くしようよ」
サトルは穏やかに言った。
「やれと言われればやるよ。一応、拳闘のプロに指導を受けてるからね。でも、こんな汗臭いことは私の趣味じゃないんだ」
「この野郎。ふざけるな!」
サトルは首をすくめる。
「握手しないか?その方がいいよ、きっと。だって私は、いくら君らを叩きのめしても罪にならないんだから」
「なんだと?」
テラが人を掻き分けて、やっとサトルの前に現れた。
そして、身構えた男に向かって指を差す。
「そうだぜ、お前!」
「何だ、お前?テラじゃねえか」
「おや、知り合いかい?」
サトルの問いかけに、テラは恥ずかしそうに答えた。
「顔だけでさ、旦那。おい!旦那に手を出すな!」
「てめえの指図なんか受けねえよ。いったい何だてめえ、旦那旦那ってへいこらしやがって!」
サトルはテラに、威勢のいい男の名を聞いた。
ボズと言った。
「ボズ。テラの友達なら余計だ。握手しよう」
「やなこった。仲間をのされたんだぞ!」
「しかし、私は外交特権で守られてるからね。君には部が悪いと思うよ」
「なに?」
「そうだぞ、ボズ!旦那は駐在大使なんだ!全権大使だぞ!」
ボズは足を後ろに引いた。
「もしかして、お前が懐いてる変な役人って、この男のことか?」
「へ、変なとは何だ」
「狸みたいな年寄りだと思ってたぜ。驚いたな、こりゃ…。金持ちの道楽息子かなんかだと思った。鴨が来たと思ったのに、チッ」
「何でもいいよ。楽しくやろうじゃないか」
サトルはボズに近付き、強引に握手をした。
そして倒れた二人の間にしゃがみ、その頬をぴたぴたと交互に叩く。
「おい、起きろ。和解成立だ」
周囲で「つまんねえなあ」と、ぼやく声がこぼれた。
これから一暴れ!と、多くの男たちが準備をしていたのだ。
当てが外れてそれぞれ自分のテーブルに戻っていく。
店は足音で煩くなり、余計に埃っぽくなった。
ボズとテラに支えられて、倒れた二人は何とか立ち上がった。
ボズが二人に、手は出さない方が良さそうだと説明をする。
「お近付きの印に奢ってやるよ」
サトルは笑顔でそう言った。
そしてカウンターに向かって歩き、テラも三人もついてきた。
サトルはいいことを思い付いた。
「そうだ!」と、大きな声を上げ、客たちはサトルに注目する。
サトルは素早く椅子を登り、カウンターバーの上に立ち上がった。
「諸君!」
サトルは叫ぶ。
馴染みのテラも、手を振り上げ演説を始めたサトルに驚いていた。
客はどよめきながらも耳を傾ける。
「騒がせて悪かった。そして、暴れる機会を失わせて真に申し訳ない!ついては、今日の勘定は私が持とうと思う。賛同者は歓声を!」
どよめきが一斉に歓声に変わった。
ほとんどが拳を振り上げて喜んでくれた。
面白くない顔をして店を出て行く者も数人はいた。
サトルは帰る者たちに手を振る。
「おやすみ、ジェントルマン!君らは正しいよ。残った無頼ども!大いに飲んでくれ!」
男たちは遠慮せず賑やかに酒を飲み始めた。
テラは少し心配そうにしていたが、やはり飲んでいた。
バーテンダーは前金を渡されると、「まあ、しょうがねえなあ」と笑って、カウンターの上に椅子を上げてくれた。
サトルはテーブルの上の椅子に腰かける。
店内がよく見渡せる特等席だった。
客たちは調子に乗って、座れるだけカウンターバーに座ってしまった。
足をぶらぶらさせながら、誰よりも先に酒のお代わりをしようとしている。
あちこちから歌声が響いてきた。
「おい、待てよ。歌うのはいいけど、そんなバラバラじゃ何だか判らない騒音じゃないか。よし指揮者を決めよう」
サトルは、カウンターに座っている座高の一番高い男を指名した。
その男が音頭を取って合唱が始まる。
ルル民謡だが、所々替え歌になっているようだった。
二曲くらい歌ったところで、近くの男たちが自分たちの服装について話をしているのが、サトルの耳に聞こえた。
お互いに趣味が悪いぞと罵り合っている。
サトルは二人に声をかけた。
「おい、君たち。ゴルディアって店を知ってるかい?」
一人は知っていると言い、一人は知らないと言う。
周りからも声が上がった。
「そんな店、俺たちには縁がないよ、旦那」
「ゴルディアって言や、婦人服屋だろ」
「貴族たちのな」
「別に貴族専門店じゃないよ」
サトルは言う。
そして壁掛けの時計に目を向けた。
8時半を過ぎたところだった。
「おい、面白いことを思い付いたよ。みんなでゴルディアに行ってみないか」
「なに言ってんだよ、旦那?」
「あの店は夜9時まで開いてるんだ。店舗の入ったビルの上に工房を構えて、一部の商品はそこで作られる。ちょっとした用を思い出したんだ。君たち、高級婦人服店の店内を見学したいと思わないか?」
「まさか!俺たちが入れる店じゃねえもの」
「そうだよ。行く前に背広を買わないとな」
「タイも」
「靴だって」
「その前に風呂だろ!」
わっと笑い声が上がる。
サトルも笑った。
「いいじゃないか。私の連れなら大目に見てくれるさ。おい誰か、電話をかけてみるかい?」
「ゴルディアに?」
サトルはバーテンダーに電話を持ってこさせた。
「こんな機会は滅多にないだろう?用はあるんだから、堂々とかけられるぞ」
「何て言うんだ?」
「よし。じゃあ、お前だ」
声を上げた若い男が指名され、そわそわしながらサトルの前に出てきた。
サトルは受話器を男に渡し、番号を押す。
「旦那、何て言うんだよ」
「私の名を出せばいい」
「ええ、そんな、もっと詳し…。あ、はい」
電話が繋がり、男はあたふたと声を出す。
「はい、そ、その、つまり、俺は頼まれて、いや、イタズラなんかじゃ、あっ」
男は情けない顔で受話器をサトルに返した。
早々に撃沈した男をみんなが笑ってなぐさめる。
「仕方ねえよ、それじゃ。そんなおどおどしてりゃ、イタズラとしか思えねえよ」
「情けねえなあ」
そう言った男に受話器を渡す。
先程よりも速く切られてしまった。
「何だ。駄目じゃないか」
「チックショー。こいつ、人の声だけで切りやがった!」
「訛ってんだよ、おめえはよ。もっと気障に発音しねえとな」
「次は誰だ?」
サトルは受話器を返してもらう。
「駄目だ。三度も怪しい電話がかかると、相手も警戒が強くなるから。下手すると警察を呼びかねない。仕方ない、私がかけるよ」
「よし、お手本だ。みんなよく聞いてな」
誰かが言い、サトルは口の前に指を一本当ててみんなを静める。
「ザワザワしていたら、怪しまれるからね」
サトルは電話をかけて、アルコールなど少しも体に入れていないような風情で話を進めた。
「いいえ、こちらこそ。お伺いしたいのですが。もしかしたら、そちらに立体パターンがあるのではないかと。そうです。ああ、それはよかった。実はお願いがあるのですが、出来ればそれを譲っていただきたいのです。そうです」
男たちが私語を始めたので、サトルはもう一度口に指をあて、ウィンクで注意した。
「そうですか。ありがとうございます。ええ。多分、10時までにはお伺いできると思うのですが、よろしいでしょうか?ご迷惑をおかけします。ええ。では、後ほど」
電話を切って、サトルは「OK!」と、みんなに報告する。
「さあ、出かけるぞ。ついて来てくれる者は今のうちに飲んでおけ」
客はウォーと声をあげ、再び賑やかに飲み始めた。
最終的にサトルと一緒に馬車に乗り込んだのは十数人いた。
予告通り10時前にはゴルディアに到着した。
サトルが玄関前に姿を見せると、店長が笑顔で寄ってきたが、後ろに大勢の男たちを従えているのを見て顔色が変わった。
恐る恐る、扉を開けてくれる。
「お待ちしておりました、大使」
と言う挨拶もやや頼りない。
サトルは店に入り、歩きながら言う。
「運ぶのに人手がいると思ってね。すまないね、ちょっと煩かったかな?」
後ろからどよめく男たちが続いて入ってきた。
賛美や文句を言いながら、店内の商品や内装をジロジロと見回している。
「いえ、そのようなことは……」
「勘弁してくれ。夜中にはこんな奴らしか集められなかったんだ。おい、君たち!少しは行儀よくしないか」
「へいへい」といった適当な返事が返ってきて、大して静まらなかった。
サトルは笑う。
「仕方のない連中だなあ。それで、ナオミのパターンは?」
「はい。ご用意しております。こちらに」
店長が示した場所に、マネキンのようなものが立っていた。
布張りの胴体部分に支柱を取り付けて立てられている。
ナオミの服を作る際に使用された、ナオミのサイズの模型だ。
本体の表面には服のパーツごとに赤や青のラインが幾つか引かれていた。
傍には女性スタッフが二人、緊張した面持ちで立っている。
サトルは言った。
「照明が明る過ぎる。少し落としてもらえないか」
店長は意味が判らないと言うような表情を一瞬見せたが、すぐにスタッフに指示を出して、スタッフが照明を調節しに走った。
すぐに店内の明かりは半分以上暗くなった。
「ありがとう。そうだな、できればこれが入る箱がないかな?こいつらの手は汚れてるからね。段ボール箱でもいいんだけど」
「段ボールの箱ならございますが……あの、閣下。よろしければ、私共でお屋敷までお運びさせていただきますが」
「いや。いいんだ。一緒に帰るよ」
店長は頬の筋肉をわずかに動かした。
愛想笑いをしたのかどうか、サトルにはよく判らなかった。
店長に頷かれたスタッフが、店の奥の部屋に消え、しばらくして箱を持ってきた。
模型は薄い紙に包まれて、その中に丁寧に納められる。
「実にぴったりの棺じゃないか。OK、ありがとう店長。さあ、騒いでないで!みんなで担いでくれ!ほら!帰りは歩きだぞ!」
酔っ払いたちは「何だ、馬車じゃねえのか」などと文句も言ったが、箱を面白そうに高く担ぎ上げ、わらわらと店を出て行く。「ほら、落とすなよ。落とした奴は罰金だ」と、サトルは言い、「うへーっ」という喚き声に笑った。
テラも付いてきていたが、ここに来て彼だけが大人しくなっていた。
サトルの後について最後に店を出る時、よれた帽子を手にとって、店長に申し訳なさげな表情で頭を下げた。
店長はテラに礼を返した。
サトルは男たちを引き連れて先頭を歩いた。
途中、男たちに葬送行進曲を「ラララ」と「ダダダ」で歌わせたりもした。
大使館前に来ると、箱を門柱に立てかけさせる。
警備員たちが騒ぎに飛び出てきた。
「やあ、リック。ただいま。大丈夫だよ、君たちも。彼らは飲み仲間なんだ。諸君、ありがとう。助かったよ。さあ、運送代だ。取っておいてくれ」
サトルは紙幣をばら撒いた。
酔っ払いたちは手を上げて、こぞってそれを掴み取る。
「おやすみ、みんな。テラもありがとう。あんまり騒ぐなよ。もう夜なんだから。これ以上羽目を外すと夜警に捕まるぞ」
飲み仲間たちは愉快に笑いながら帰っていった。
テラは時々サトルを振り返りながら、男たちの後について帰っていく。
「閣下」
リックがサトルの腕を支えた。
サトルは男たちに負けず酔っていた。
「大丈夫だって。ほら、ちょっと手伝えよ」
フラフラしながら、サトルはゴルディアのロゴ入りの箱に手を置いた。
警備員が手伝いそれを敷地内に運び入れ、周りを確かめて門を閉める。
サトルはその場で箱を開けた。
「閣下、いったいそれは……」
「ナオミを連れてきたんだ。全く、こんな遅くまで一人で外にいるなんて、困った女だな。さあ、出て来い」
サトルは段ボール箱から模型を引っ張り出した。
警備員たちはお互いに顔を見合わせ、そしてサトルを見た。
「箱は処分しておいてくれよ。じゃあ、おやすみ」
サトルは言って、模型を引きずって屋敷への路を歩き出す。
ガリガリと模型のスタンドの金属が敷石を削る。
リックが後についてくる。
時々転びそうになるサトルに手を貸そうとしたが、結局はできなかった。
唇を噛んで後ろを歩き、玄関でクラウルが出迎えると、一礼して走るように持ち場に戻った。
「閣下……」
クラウルが一つ息を呑んだ。
ミリアも傍にいた。
「今しがた、ゴルディアから電話が」
「ああ、そうなの?親切だね。それとも怒ってたのかな。しかし全く重いな、これは」
サトルはクラウルたちの心配顔を気にも留めず、廊下をゆらゆらと模型を引きずって歩いた。
そして一人で部屋に戻った。
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