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2000年代の昔話 - 現地校で上級生が下級生の私足を引っ掛けようとするので踏んでみた -

最近フランスでいじめによる逮捕者が出たとちょっと話題になりました。
記事内には

「フランスでは、2022年3月に刑法が改正されて、学校でのいじめが犯罪になりました。
(…)
 9月に新学年が始まったフランスでは、学校内でのいじめが確定した場合、学校長とその自治体のトップによって、加害者の生徒を別の学校へ転校させることが可能になりました。

 いじめが深刻化し、生徒の自殺が繰り返されたことから、いじめをおこなう生徒に対し、加害者であることを認識させるために厳罰化しているわけです」(週刊誌記者)

フランスの中学校で「いじめ加害者」を授業中に逮捕…「日本も見習うべき」SNSでは賛同が圧倒的

とあり、いじめが刑罰化されたのが昨年ととても最近であることがわかります。

この記事で自分が現地校で過去に目撃したり、自分が体験したことを思い出したので、2000年代初頭に経験した出来事を元に昨今の話も含めて「ヨーロッパ某国のイジメ事情」について語りたいと思います。


上級生から下級生にやる定番のちょっかいの出し方

タイトルのあるのは現地校では定番の下級生いじめのやり方である。やってる側としては当然イジメという認識はなく、「いたずら」としてやっている。上級生がそういう「いたずら」を仕掛けるのはごく日常的で、すれ違いざまに悪口を言ったり、流行りの卓球をしているとボールを取り上げて返してくれなかったりすることはよるある。
「先輩/後輩」ではなく「上級生/下級生」と書いているのは日本の学校のような「先輩後輩関係」は存在していないからである。「後輩をイビっている」のではなく、ただ単純に「年下=見下すべき存在」とみなしている。

移動教室で廊下を並んでいると、鍵のかかった教室の前に上級生たちが並んでいて、ほぼ全員は片方の足をわざとらしく前に投げ出しているのである。悪質になると前を通ろうとする瞬間に足を出してくる。

あまりにもよくされて「バカにするんじゃねえ」と思っていたから、私は1回態度で示してやろうと思って、実際に男子一人の足をわざとらしく踏んで差し上げたのである。別に骨折させるような踏み方はしてないし、靴先だけなので後ろから"Eyyyyy!!"とか言われただけで特別何も起こってはいない。

現地校というか、私の地元というか、欧米っていうのはこの手の“単純に意地の悪い人”が結構いる気がするし、独特な"暗い"雰囲気がある。
たまにYouTubeに上がっている「〇〇人が1時間街の中を歩いてみた」系の動画を見たことがある人はイメージがわくと思う。

イメージとしてはXあたりのSNSで「それわざわざ書く必要ある?」というようなことをリアルでやってる感じだと思っていただければ良いと思う。

ヨーロッパで問題視されるようになってきたいじめ

上記のような程度ならまだいいんのだが(いや、全然良くはないと私は思っているのだが)、露骨な暴力も"いじめ"として問題視されるようになってきたらしい。現地語で「いじめ」という言葉はなく"Mobbing"と英語の言葉を借りてきている。私が学生だった頃は"Mobbing"という言葉は一切浸透していなかった。
これは「いじめ」という存在から目をそらしてきたことの証左だと思っている。日本人はたまにネットで「いじめという言葉が罪の意識を軽くしている」という意見を見かけるし、それも一理あるとは思うが「いじめ」の存在を認識はしていることにはなるとは思う。

かつては学校で死傷事件があっても、誰もが「そいつは暴力的なテレビゲームの影響を受けていた」と理由付けするのが定説で、その犯人がいじめによる被害を受けて不満を抱えていたという真実は隠されてきた。注目されるのは「暴力的なゲーム」ばかりで、「いじめられていた事実」はスルーされてきた。
これについては具体的な事件があるのでまた別の投稿で語りたいと思う。

地元の友達が学校で殴られた話もまた長くなるので別の機会に話すとして、少なくとも自分の学校でも男子が女子(普段からいじめられていた子)にフォームスプレーをかけてる場は見たことある。

日本の"いじめ"はなんか違う

個人的な意見だが、周囲から体験談を聞いたり、漫画で読んだりする限り、日本のいじめはだいぶ雰囲気違うなあと思う。よく「日本人は陰湿だから〜」とか言う論は聞くんだが、そうことではない。

理由があることが多い気がするのだが気のせいだろうか?仲良くしたくないというか、一緒にされたくないとか、ハブるという目的があってやっている感じがする。いじめてる側が自分らの結束力を高めるというか。私の地元はなんかそういう雰囲気はなかったと思うんだが気づいてないだけだろうか。基本的には楽しくてやってる感じだったかと思う。

日本のいじめっ子はいじめることで上位に立とうとしていると、日本のカーストは上下すると教育に関わった人からは聞く。もちろん輸入された概念であるから海外の"カースト"の意味と違うものになってるんだろうとは思う。
つまり 「特定の属性が必ず下」ってわけではないらしく、外国人やゲイでもクラスの人気者だったりすることはあるようだし、人気だった子がいじめられるようになった話も読んだような記憶がある。

地元ではカースト上下は既に決まっていて、逆転しないからいじめは気楽で楽しいのかもしれない。本来の"カースト"は生まれながらにして決まっていて、後から変わったりしないもので固定されている。 「"外国人"とか"ホモっぽいヤツ"は下」という社会の雰囲気は間違いなくあり、それが故にそう言った人々の人権を取り戻そうとする社会運動に発展するのは全くもって不思議ではない。

地元のいじめ事情がいつの間にか大変なことになっててびっくり

以下のリンクの体験談は結構現実的な、そして学校の雰囲気がわかるように語られているので紹介したい。要は向こうの学校は日本でイメージされているような明るい雰囲気ではないことをお伝えしたい。そして時代による変化も伝わればと思う。

"Die Geschichte einer Tochter"

このエピソードはいじめで娘を亡くした母親により語られている。
彼女の娘さんは学校でリュックを空にされたり、ペンを取られたりするようになった結果、学校をサボるようになったが、それが親に知らされたのは7日後のことで、学校側から対策などについては連絡はなかったという。この娘さんは摂食障害も発症した。学校を変わりたかったが成績が落ちていたことと、いじめは転校の正当な理由にならないとして先方から拒否されたとのことである。(現地校では私学に移るのでない限り書類などが必要で、転学をそもそも市から認められなければならない事情がある。)11年生になるとクラス制でなくなり親切な生徒にも出会えたが同時に鬱を発症し、後期は6週間しか出席していなかったが、親への連絡はやはりされていなかったという。娘さんからもう耐えられないと訴えられた母親は11年生で中退させることを決意した。中退するためにはあと6週間の通学日数が残っていたが16歳で自殺した。

"Als deutscher Schüler ausgegrenzt"

こちらはドイツ人で豚肉を食べるからという理由でハブられているだけでなく、殴る蹴るの暴力を受けているという移民からのいじめの例である。
トルコ語やアラビア語で陰口を言われており、ドイツ語では「売春婦の子供」などと罵られているという。他の男子に近づくと「ホモ」と罵られながら蹴られ、クラスの女子はノースリーブを着ているというだけの理由で"Schlampe"(意味は下品なのでここには書かないのでご自身で調べていただきたい)と言われているとのことだ。
語り手は転校を希望しているが他校に空きがないという。学校も役所も助けてくれないため、自分で学校をまわって聞いているがどこも埋まっているそうだ。

"Die Zicke, die immer petzte"

こちらも母親目線で語られたエピソードである。娘さんは自意識が高いタイプのため、1年生の頃から"難しい"生徒の隣に座らされていたという(おとなしい子と一緒にすると"食われてしまうから")。彼女にとっての日常は、うるさい生徒を注意したり、他の生徒相手に"警察官"をやることだった。結果周囲からは「チクリ屋」と言われるようになり「退学にしてやる」と脅されるようになったという。
母親は2度学校へ手紙を送り、やっと面談までこぎつけたが、「男子は反抗しているだけで、彼女に怒るのは至って正常」と全く話にならず、席替えだけは認められたとのことである。

"Gemobbt wegen Migrationshintergrunds"

これは移民である女子の経験談である。10年生のEthik(日本で言うところの道徳)の授業で宗教がテーマになったとき、自分の意見を述べた彼女に対し、翌日、教師から呼び出しがあり「あなたは抑圧されている!あなたの宗教は女性にとって害であり、そもそもあなたは自分の意見を持っていない」と2時間説教され、他の生徒からもけなされたという。

"Erst an der Oberschule hörte es auf"

これは多くの生徒と違い、外見も出身も宗教も特徴がないにもかかわらず、小学校の六年間いじめられ続けた生徒の話である。(ベルリンの小学校は6年制である。)丸めた紙を頭に投げつけらるから始まり、"ペスト"を持っていると言われ、体当たりされたり蹴られるなどの身体的暴力、つばを吐かれる、飲み物を頭からかけられる、持ち物を捨てられるなどを経験してきたという。
高等教育に入ってようやくそれらが過ぎ去ったと語られている。

"Als „Schweinedeutscher“ beleidigt"

こちらも親目線で語られている。4年生である息子さんは1年生の頃からドイツ人であることを理由にいじめられており「ドイツの豚」、「キリスト教徒の豚」、「ドイツのジャガイモ」と非難されているという。実際は菜食主義だが、豚肉を食べるとして攻撃されているとのこと。
また階段を突き落とされたり、校庭で集団リンチを受けた;教員の目の前でやられたこともあるし、救急車で運ばれ内臓損傷まで至ったこともあるという。
3年生からは警察に届けるようになったが、年齢的に罪に問えず、加害者から「どうぞ通報して、まだ14になってないから」と言われたこともあると話す。現状ソーシャルワーカーと話して形式的な謝罪をもらうのがせいぜいで、翌日には同じことが起こるという。警察からの提案は「別の地区に引っ越すことを勧める」ことだった。

"Mobbing in Allahs Namen"

母親が家族と宗教とは縁を切ったことが原因で息子が、特にアラブ人から、いじめられているというケースも紹介されている。
髪が長いから「ホモ」、ハーフだから「本当のアラブ人でない」と言いながらよくアッラーの名を出したという。
いじめは学校内外におよび、真冬に靴を盗まれたせいで裸足で帰宅してきたり、校内で倒れて病院に運ばれたこともあり、現在も癲癇を発症しているそうだ。学校は「特殊な例であって、いじめは学校の問題ではない。息子さんは態度を変えるべき。お母さんは心配しすぎ」の一点張りで、そのまま進学したものの、状況は改善していないとのことである。

"Mobbing in den Neunzigern"

こちらは90年代遡る話。語り手の女性の上の娘は90年代後半にベルリンの学校に通っていた。親は西側の出身だったため知らない用語が多かったし、娘さんの性格も内向的で優しく、嫌なことがあっても怒らずその場を離れるタイプだったと語る。
彼女が授業中挙手をすると笑われる、誕生日会には呼ばれない、休み時間には体当たりされたり、バカにされたばかりか、教師らはむしろいじめを加熱させたという。

"Paul-Simmel-Grundschule in Tempelhof:Mobbing im Namen Allahs"

当然ながらWhatsAppなどのネットを使ったいじめも出始めているようである。これはかなり特殊な例で、ショッキングな内容もあるため訳さずこちらはリンクだけ紹介しておく。
昔はネット環境は本当に酷かったものだが、現在のように環境が整ってくると地元でも増えてくるかもしれないと危惧している。(地元のネットの酷さは別の投稿で語らせてほしい。)

他にもこんな指摘が

上記の記事では体験談が主だったが、問題点も指摘されている。

まずそもそも論として、教育委員会からの必要な後ろ盾が得られないことにある。これは日本も(変わりつつあるものの)概ね同じ問題を抱えていると思う。

また、子供というのは根本的に配慮深くはないものだが、入学時点である程度の社会性を身につけているべきではないか、他人の気持ちを理解できる必要があるのではないかという指摘もある。

加害者が守られているとも言われている。何をするにも校長と話をつけなければならないということがまず一点と、何か対策を打とうにも学校に予算がなく、なす術がないという。

全体として、暴力的な雰囲気が支配しており、教員も止める勇気を持てないほどになっていることも問題としてあげられており、これに関しては非常に難しい。

最後に

特定の宗教や国籍を含むエピソードを紹介したが、この記事ではそれらを悪とみなすものではないことが大前提である。ヘイトは誰に対しても向けられてはならない。

一方で移民というバックグラウンドが社会に与えている影響は大きいことも事実で、教育の場という本来なら「いじめは良くないんだ」「人を傷つけてはいけない
」ということを教え込まなければいけない場面に教員が手をつけられないほど、あるいは手をつけたくなくなる程の状況になっていることがやるせない。むしろ"積極的に無関心"であったり、いじめを助長するようなケースが少なくないというのが私の肌感である。

フランスのいじめの刑罰化はそこまで悪い案とは思わないが、予算的なことや、そもそもの警察官の質を考えると全土に対して適用していくことは難しいように感じる。

とりあえずこの記事で日本とヨーロッパのいじめの違いや、ヨーロッパが意外にも後ろ暗い社会環境を抱えていることを知っていただけると幸いです。そして日本もいじめに対してどんなケアができるのか真剣に議論ができたらなと思う次第です。

#いじめ #不登校 #教育 #ヨーロッパ #帰国子女 #元帰国子女

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