【ショート】電話、声、命

「どうせ役立つ訳ねぇから」とネットの書き込み間に受けて嘯いてた"いのちの電話"

あの時の担当者さんありがとう
俺は３回も、あなたたちにいのちを救われました

クライアントと上司に激詰され
家に帰って大人気もなく泣き腫らしたソファの上
床に叩きつけたヒビ割れたスピーカーから
何度も鼓膜に「生きろ」を届けてくれた両親、
兄弟、ありがとう

誰にも迷惑をかけない自死の方法を具体的に真面目に探してたけど
「案外自殺って労力かかって面倒臭いんやな」
って思わせてくれた「完全自殺マニュアル」
ありがとう
電話でもないし声でもないけど本やけど

クライアントとの忘年会で大失態やらかして
出し物の仮装グッズをパンパンに詰めた紙袋を
脇に抱えたまま
もう終わりだと思ってホームのドアで最後にかけた君への電話
「何もかもいらないから帰ってくるだけでいいから帰ってくることだけを考えて」と
最後の一歩を前に踵を返すことができた仕事納めの次の朝
いつも今もありがとう

誕生日という節目をどう考えるか
去年のあの日、今は散歩コースになっている川に
本当にこの時間に飛び込んでいたら
今という今と私という私はもうここにはいなかった
少し不思議な気持ちと僅かな安堵

あの時、無様でも、声を求めて助けを求めた
命への最後の執着と勇気、かっこいい立派な生き方と美学をグッチャグッチャに潰して丸め込んで逃げるという選択をした決断

クソカッコ悪いダッセェ生き方を受け入れてくれた自分と生きろと支えてくれた心の声よ
ありがとう

happy birthday everyone
これあってるのかな？
なんとなく伝わってればいい
声を命を繋いでくれてありがとう

世界一美しいゴミクズとして
最後まで生きる