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第六章 次世代に託す思い(三)三つの「命題」を掲げ(四)夢は「医・薬・患」の連携



節約医療から.......…節薬医療への貢献 

以上のような企業理念を具現化するために、私たち自身に①ミッション(企業使命=私たちの『果たすべき使命』とは?)、②バリュー(存在価値=私たちの『世の中に示す存在価値』)とは?)、③ビジョン(あるべき姿=私たちの「目指すあるべき姿」とは?)という三つの命題を問いかけ、進むべき方向性を明確にしました。

このうち、「ミッション」では、誰もが自らの意思で医療を選択・活用し、「自立した健康=真の健康」を全うできるよう、「食養を基盤とした養生法を啓発、元気で明るい未来づくりを応援します」と宣言しました。

病気の治療に薬は必要ですが、薬だけでは健康は維持できません。人間が本来持っている自然治癒力を発揮するためには、食事の改善、食養を中心として体の根本を立て直すことが大事。それが、薬の販売と健康食品の製造・販売を通して到達した、私たちの結論の一つなのです。

さらに「バリュー」では、「新たな医療文化『節薬』を創造する」という課題に、私たちの企業の存在価値を見出しました。

医療の根本は、ヒトが本来持っている「自然の回復力を後押しすること」というのが、私たちの基本理念です。「過剰でも不足でもない、ほどよい薬の活用、節度ある薬の利用(節薬)」で、健康長寿社会を下支えし、新たな「医療文化」を創造して行くことが私たちの役割であると考えました。

そして最後の「ビジョン」では、「健やかな人生のサポート企業であり続ける」という私たちの将来像を描いてみたのです。

「いつまでも健康でありたい」と願う心は、万人共通のものです。私たちが創業以来積み重ねてきた知見に基づき、確かな品質で「真の健康」を後押しする優れた製品とサービスを提供し、信頼され必要とされる企業であり続けたい――そんな願いが、この企業ビジョンに込められています。

社会問題化する多剤併用

三つの命題のうち、「バリュー」に掲げた「節薬の医療文化」創造の重要性について、もう少し詳しく見ておきましょう。

平成30(2018)年7月18日付けの新聞に、こんな記事が載っていました。

薬もらいすぎご注意 協会けんぽ福岡調査「7種以上」3% 禁忌薬併用や重複例も お薬手帳で対策を  (西日本新聞)

この記事は、全国健康保険協会(協会けんぽ)福岡支部が、66万人分のレセプト(診療報酬明細書)の分析調査を行ったところ、全体の3%、高齢者では7.8%が7種類以上の薬を処方されているという「多剤併用」の実態が明らかになったという内容です。

記事はさらに、飲み合わせによって良くない影響が出る相互作用が全体の36.4%、同じ薬を処方する重複投薬は5.8%、併用すると症状悪化や重篤な副作用がある禁忌薬併用も2.5%あった――と続きます。

高齢者の多剤併用の害は、かなり以前から指摘されてきました。しかし、この調査結果は、比較的健康な働き手世代に対しても多剤投薬が行われている実態を明らかにしたという意味で重要です。

日本医師会は、「超高齢社会における『かかりつけ医』のための適正処方の手引き」というガイドライン(平成29年9月)を公表しています。その内容は、「薬物有害事象と多剤併用」「多剤併用による薬物有害事象の発生リスクと基本対策」などから成り、「特に慎重な投与を要する薬物」として、具体的な薬のリスト(代表的な商品名、対象となる患者群、主な副作用・理由、推奨される使用法など)を掲げています。

医師であれば、当然これらの内容は熟知しているはずと思っておられるでしょうが、実際は膨大な薬がある中、専門外の薬についてまでを把握している医師はまれなのです。実際の医療現場では「多剤併用はタブー」とされる「禁忌薬処方」でさえ公然と行われていることを、協会けんぽ調査は物語っています。

(四)夢は「医・薬・患」の連携

 私たち健将グループが、企業理念の柱の一つに「節薬の医療文化創造」を掲げた理由の一端が、これでご理解いただけたでしょうか。

医療現場の先生たちは、患者さんを診断した結果、あらゆる病気の可能性を想定して薬を処方します。それは医師としては、いわば当然の措置なのですが、患者さんの中には二つ、三つと他の病気を抱え、複数の医療機関にかかっている人も結構います。

また、家庭ではドラッグストアで買った薬を飲み、なおかつ病院で貰った複数の薬を併用しているという人もいるでしょう。

そういうことが複合的に積み重なると、飲み合わせで良くない影響が出たり、タブーとされる「禁忌薬併用」が起こったりということにもなりかねません。

このような事態を招かないために、私たち健将グループにできることはないか――。そう考え抜いた末に掲げたのが、企業理念の中の「節薬」の思想なのです。

◎責任ある企業として

一九八〇年代ごろに、CI(コーポレート・アイデンティティー)という言葉がもてはやされた時代がありました。これは経営戦略論の中から出てきた考え方です。社章や看板、ロゴ、社屋などを一新し、新しい企業イメージなどを打ち出してマーケティングや広告・宣伝に活用するというブランド力アップの性格が強いものでした。

これと同じく、経営戦略重視の観点に立てば、薬屋が企業理念に「節薬」を掲げて「できるだけ薬を使わないでください」と主張するのは、まったく矛盾しています。薬屋なのに「病気は薬だけでは治りません」と断言して、患者さんに食事を根本から見直す「食養」を勧めるというのも、企業経営としてはおかしなやり方だと思われることでしょう。

でも、私たちは敢えてそのような企業理念を掲げました。それが、創業以来半世紀、営々と積み重ねてきた私どもの企業活動の蓄積の結果であり、健康づくりに責任を持つ企業としての結論だったからです。

ホームドクターの勧め

こうして、私が何を次世代に託すべきかと考えてきたことが、はっきりした形となって現れてきました。それは、創業五〇周年までの道のりで、社員が一丸となって築き上げてきた私たちなりの「企業文化」の結実と言っても良いかも知れません。

そして私は、その先に自分なりの夢を描いています。

私たちが、病気と健康の問題で医師と患者さんをつなぐ橋渡し役になれないだろうか、また患者さん同士が医療と健康に関するさまざまな情報を交換し合うネットワークづくりのお役に立てないか――ということです。

私は「健康長寿」で余生を全うするためには、まず信頼できるホームドクターを探しなさいとお勧めします。

私たちは、病気になると「大病院の専門医」志向からなかなか抜け出せません。確かに、大きな病院では、先端技術や最新の薬などによる高度な医療を受けられるメリットがあります。しかし、そこで行われることは、ほぼ一〇〇%、病院と医師側が供給するものに頼り切った医療です。

これに対し、信頼できる身近な「かかりつけ医」は、患者さんの生活環境や日頃の習慣にまで分け入って、病気の原因や改めるべき生活のポイントなどについて、丁寧に相談に乗ってくれることでしょう。

かかりつけ医の選び方 「かかりつけ医」は、患者の身近にいる医療の専門家で、いつでも病気の相談を受け、丁寧かつ正確に病状を説明し、必要な場合にはふさわしい医療機関を紹介するなどの役割を担う。公益社団法人・東京都医師会はホームページで、かかりつけ医を選ぶ際の基準として「日頃から健康管理や教育を行ってくれる」「生活習慣から起こる病気の場合は、ライフスタイル改善まで指導してくれる」「在宅で闘病している場合は訪問診療をしてくれる」「病状に応じて専門医、医療機関に情報を送り、紹介してくれる」などの条件を挙げている。

かかりつけ薬剤師も力に

これに加えて、あなたが有能な「かかりつけ薬剤師」に出会うことができれば、もはや鬼に金棒です。

その薬剤師は、日頃からあなたが飲んでいる薬をチェックし、複数の医療機関から多剤投薬を受けている場合は、飲み合わせや禁忌処方の危険性などについて警告してくれるでしょう。

場合によっては、複数の医療機関の医師にコンタクトを取り、処方を調整して減薬できるよう、仲介役を果たしてくれるかも知れません。

さいわい、私たちの企業グループは、医療用医薬品の卸売業で医療現場とつながっており、グループには「節薬」の理念を実践する薬剤師がそろっています。そして、医薬品だけに偏らない食養による健康づくりのお手伝いもできます。

そんな立ち位置にいる私たちは、「人生100年時代」の健康長寿社会を実現するために、もっともっと色んな取り組みができるのではないか――。

創業50周年の節目を迎えて、私はそんな夢をふくらませているのです。

次回は
]むすびと腸内細菌とわたしの紹介




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