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むすびにかえて 「自分の健康は自分の責任で守る」超高齢時代の生き方のスタンダードになって行く

 


子どものころに描いていた21世紀のイメージは、高度に発達した科学技術で夢のような未来都市や「超便利」な暮らしが実現し、人類は苦しみや貧困からも解放されているというバラ色の世界でした。

この本を手に取ってくださった読者の多くは、私とあまり変わらない中高年齢層の方々ではないでしょうか。そうであれば、子どものころ、少年少女雑誌などで刷り込まれた「夢の21世紀」像を自分なりに膨らませていたはずです。

20世紀が世界を動乱に陥れた「戦争の世紀」であったとすれば、21世紀は「科学技術の世紀」として人類の夢と期待を託されていたと言えるかも知れません。

新しいミレニアムの幕明けから

、既に20年――。AI(人工知能)の本格的な登場に代表される高度なテクノロジーの進展は、まさに人間の文明を根底から変えつつあるかのように見えます。

そして、家庭にまで進出し始めたロボットや、ブラウン管を淘汰してしまった薄型・壁掛けテレビ、自動運転カーやドローンの登場など、私たちの暮らしの隅々にも先端テクノロジーの恩恵が広がっています。

中でも、最も大きく変わったのが「情報生活」でしょう。20世紀の終わりごろ、インターネットという言葉が「流行語大賞」に顔を出して以降、「高度情報社会・ニッポン」は20年足らずの間に劇的な転換と発展を遂げました。

昭和30~40年代のころ、電話器がようやく「家庭に1台」の時代に入りつつありました。電電公社に申し込んで何カ月も待たされた挙げ句、ようやくわが家に電話がついた日の感激を、覚えておいでの方も多いことでしょう。

ところが今や、電話は「1人に1台」が当たり前。複数の携帯電話を使いこなしている人も珍しくはありません。しかも、それはスマートフォン(スマホ)と呼ばれて、通話だけでなく電子メールの受発信やインターネットによる情報検索、「お財布」機能までをも備えています。

かつて、朝の通勤電車は新聞を読むサラリーマンで溢れていましたが、今はみんな下を向いて黙々とスマホをいじっています。

その手のひらに乗る端末は、世界とつながり、電車の中から地球全体に情報発信することさえ可能になりました。これはまさに、グーテンベルク以来の人類史を塗り替える情報革命であり、メディア革命です。

例えば、私たちの体や健康に関する情報も、指先一つのタッチ操作で、瞬時に、かつ大量に入手することができます。

その反面、情報量が膨大過ぎて、どう取捨選択すれば良いか、どれが正しいのか、困惑してしまうことも度々あります。

さらに、情報を入手する手段を持っている人とそうでない人、多くの情報を活用できる人とできない人の間に、「情報格差」(デジタル・デバイド)も生まれています。

「情報洪水」の中を、流れに押し流されずに生きていくためには、メディアを読み解く力を身につけ、自分の考えをしっかり持っておくという姿勢が欠かせません。それは、

巷にあふれる「健康情報」

に惑わされがちな高齢者にとっても、大切な心構えなのです。

         ◇      ◇

では、私たちが住む地域社会や、社会の最小単位である家族の姿は、世紀の代わり目でどう変化してきたでしょうか。

戦後、高度成長を達成した日本が、急速な成熟化を経て人口減少社会に突入し、2040年に想定される超高齢社会のピークに向かって突き進んでいることは、第1章で詳しく見てきました。

その様相は、残念ながら、私たちが子どものころに描いていた「バラ色の未来」とはかなり違っているように見えます。

全国的に見れば「人・モノ・金」の東京一極集中が加速し、地方でも中枢都市への一極集中が進んだ結果、農山村や離島では生活機能を失った「限界集落」が多発しています。「2040年までに全国約1800市町村の半数が消滅する」という民間シンクタンクのリポートが、大きな衝撃を与えたことも第1
章でお話したとおりです。

ここで、みなさんの体を日本列島にたとえて想像してみていただきたいのです。心臓や脳など生体機能の中枢部はとても元気――。というよりも、血液や栄養が過度に集中し過ぎて肥大気味。一方、体を支える骨格や末端の手足は、細胞が壊死状態に…。そんな姿は、人間の体ではとても「健康」とは言えません。

この本を締めくくるに当たり、私は読者の皆さんに「近未来の自分の暮らしを想像する力を大いに養って、人生100年時代を乗り切ってください」と申し上げたいのです。

将来を見通しにくい時代を生き抜くために、最も頼りとすべきは「自立した自分」の存在です。特に行政の力や財政をアテにできないこれからの社会では、

「自分の健康は自分の責任で守る」ことが、超高齢時代の生き方のスタンダードになって行くことでしょう。


         ◇      ◇

私たち健将グループは、地域の方々のおかげで創業50周年という歴史の節目を迎えることができました。

そして「次なる50年」に向かって、「節薬」の医療文化の創造や食養を基盤とする養生法の普及・啓発などの「企業理念」を掲げて歩み始めました。

50年間の経験と蓄積をもとに、真の「健康長寿社会」の実現に力を尽くし、

自立した健康づくりを目指す皆さんのお手伝いをしたい―

―。そんな決意と願いを込めて、この本を世に送り出した次第です。

最後にこの場をお借りして、今日まで私を支えてくれた妻・愛子と家族一同、そして従業員の皆さんに、深く感謝したいと思います。また、短期間でこの本の刊行を実現していただいた梓書院の豊田滋通氏はじめスタッフの皆さまにも、あらためて御礼を申し上げます。

次回より以前に発刊しました腸内細菌と私の原稿を中心に最近の情報を交え綴ってまいります。

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