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バーナード・マラマッド『喋る馬』を読みました

11篇からなる短編集。舞台は基本ニューヨークで、登場人物はユダヤ人移民かその子孫になります。バーナード・マラマッドの小説は長編『テナント』を読んでものすごく面白かった、なので今度は短編集を読んでみました。

『テナント』では忘れ去られた小説家が廃墟のマンションの1室でいつまでも完成しない小説を書いていましたが、どの短編でもおなじように困り果てた崖っぷちの人々が登場してきます。

『最初の7年』
心臓に持病のある靴屋、店を売り飛ばして細々と暮らしていくか続けていくか悩むフェルド

『金の無心』
30年ぶりにパン屋の夫婦を訪ねて金を借りようとするコボツキー

『ユダヤ鳥』
ユダヤ語をしゃべる鳥シュヴァルツは息子に勉強を教える見返りに食事を与えられなんとか生きている、でも父親には憎まれている

『手紙』
毎週日曜日に痴呆症の進んだ父親の面会にいやいや訪れるニューマン

『ドイツ難民』
ナチスから逃げてきたオスカルと彼に英語を教える大学生

『夏の読書』
夏の間に本を100冊と読むと嘘をつく無職の青年ジョージ

『悼む人たち』
老朽化した長屋にケスラー、妻と子供を捨て人付き合いをしないで生きている

『天使レヴィーン』
店が家事で全焼しすべてを失った仕立て屋のマニシェヴィッツ

『喋る馬』
見世物小屋で芸をして生きている人間のことばを喋る馬アブラモウィッツ

『最後のモヒカン族』
なけなしの金をはたいてイタリアに美術の研究に来たファイデルマン

『白痴が先』
息子アイザックがカリフォルニアへ行く旅費を工面するメンデル

登場人物の皆さんがもっと他人を思いやりたい親切にしたいという気持ちはある、でも自分が生きていくので金銭的にも心のよゆう的にも精一杯なんだというのが感じられます。絶望的な状況で、でも生きていくしか無い、かっこ悪くても生きていくんだという気持ちが伝わってきます。

なんとなく悲しい話が多いですが、その中にかすかな希望を探しながら読みました。だんだんと楽しさが湧き上がってくる短編集でした。


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