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2018年にスティーヴン・キングの『ダークタワー』を読み、それからキングの小説を中心に…

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2018年にスティーヴン・キングの『ダークタワー』を読み、それからキングの小説を中心にアメリカ文学を読んでいます。

最近の記事

エヴァン・オズノス『ワイルドランド』

先進国で進む分断や格差のひろがりやたらと分断や格差が広がっていると書籍や報道で訴えかけてくる。わかったつもりの日本人にとってまたかよと感じてしまう本が出版されました。著者のエディ・オズノスはピュリツァー賞を受賞したすごいジャーナリストということです。冒頭にある文章には「本書は「るつぼ」をめぐる物語でありアメリカの価値そのものに対して行われた二つの襲撃によって挟まれる期間を対象にしている。始まりは2001年9月11日にニューヨークとワシントンでおきたテロ攻撃であり、終わりは2

    • アレクサンドル・デュマ『モンテ・クリスト伯』④

      ワイド版岩波文庫モンテ・クリスト伯を読みおえて全7巻という長編でした。どのくらい読み終えるのに時間がかかるかわからなったので、図書館では貸出期間2週間に2冊づつかりてみましした。これはだいぶ余裕をみすぎたみたいです。お昼休みと帰宅後にすこし読んだだけですが、2日で1冊読んでしまうペースでした。これは当然内容がおもしろいのもあるのですが、ひらがな多めの読みやすさ重視で翻訳されているのもあると思います。1800年代の時代を思い起こさせてくれる古くさい文章で翻訳されているのが舞台

      • アレクサンドル・デュマ『モンテ・クリスト伯』③

        モンテ・クリスト伯の誤算1巻から4巻まで読んできて、モンテ・クリスト伯の復讐が終わるのかは彼の胸の内次第になってきました。すべての復讐の対象とその家族がモンテ・クリスト伯の操られるままとなっていいるからです。どのように復讐が行われるか、それだけが読者の興味となってしまっていたのではないでしょうか。モンテ・クリスト伯がカドルッスに自分の正体を明かし、その結果カドルッスが死にいたるところまでは計画通り進んでいたのにです。メルセデスがモンテ・クリスト伯がエドモンであることを知った

        • アレクサンドル・デュマ『モンテ・クリスト伯』②

          モンテ・クリスト伯パリにあらわる第3巻と4巻ではモンテ・クリスト伯がいよいよパリに現れ、徐々に復讐する相手に近づいて行く様子が描かれていきます。この2冊のクライマックスはモンテ・クリスト伯のパリでの住まいであるオーティユ・ラ・フォンテーヌ町二十八番地でのパーティになります。 そこに集まったのは・・・ モンテ・クリスト伯・・・主人公ダンデスの変名、脱獄後に手にした莫大な財産をつかって自分を牢獄送りにした人間に復讐する ベルツェチオ・・・モンテ・クリスト伯の家令、ヴィルフォ

        エヴァン・オズノス『ワイルドランド』

          アレクサンドル・デュマ『モンテ・クリスト伯』①

          影響しつづける名著『モンテ・クリスト伯』小説を読んでいると過去の名作といわれる作品がよく引用されてきます。最近、私が読んだ小説にもよくこの『モンテ・クリスト伯』が登場してきました。 『リンカーン・ハイウエィ』には何度も作品名が登場し、ダチェス・ヒューイットが復讐を原動力としているように描かれているのはまさしく『モンテ・クリスト伯』の影響があると思います。 『ハーレム・シャッフル』では黒人の経営者や富裕層が会員となっているクラブの名前が『デュマクラブ』でした。NYで吹けば

          アレクサンドル・デュマ『モンテ・クリスト伯』①

          読書日記2024年6月3日〜7月15日

          映画館で『ルックバック』を見てきました。京本の部屋から4コママンガがスルッと出てきたところ、現実の世界と二人が出会わなかったもうひとつの世界がつながった瞬間はゾクッとしました。 池波正太郎『鬼平犯科帳3』昔、父親の本棚にあった『鬼平犯科帳』の文庫本を何冊か読んだ記憶があります。久しぶりに読んでみたくてブックオフにいったら第3巻のみおいてあったので買ってきました。短編が時系列順に並んでいるのですが、途中から読んでも問題なく面白いです。井砂の善八が盗みに入った証に大便をしてくる

          読書日記2024年6月3日〜7月15日

          『ビリー・サマーズ・下』スティーヴン・キング

          上巻の舞台はイリノイ州南部の街でした、主人公のビリー・サマーズは小説家志望になりきってターゲットが現れるまで待ち続けるという役割があったのでその街から出ることはなく話は進んでいきました。下巻では最後の仕事を終わらせるためにアメリカ中を走り回ります。イリノイ州→オクラホマ州→カンザス州→コロラド州→ネバダ州→ニューヨーク州とすべて車で移動します。上巻での動きがまったくない状態から下巻になった途端に動きまくります、ロードノヴェルといった感じでしょうか。 上巻でディヴィット・ロッ

          『ビリー・サマーズ・下』スティーヴン・キング

          『ビリー・サマーズ・上』スティーヴン・キング

          主人公のビリー・サマーズは狙撃を得意とする殺し屋。そしてビリーはつねに2つの顔を持っている、本物のビリーと「おばかな」ビリーだ。「おばかな」ビリーは『アーチーの仲間と娘っ子たち』というセクシーな女性がたくさんでてくるコミックスを好んでいる。一方、本物のビリーはエミール・ゾラの『テレーズ・ラカン』などを好む読書家だ。殺人のクライアントに対し賢くないふりをすることが殺し屋としての処世術なのだろう。 上巻の舞台はたぶんイリノイ州の南部の町と思われます、地名の表記がないのですが「ミ

          『ビリー・サマーズ・上』スティーヴン・キング

          『終わりなき夜に少女は』クリス・ウィタカー

          傑作少女少年サバイバル小説だった『われら闇より天を見る』のクリス・ウィタカーの小説がでたので、読むしかないと購入してきました。読み終わってからわかったのですが、最新作ではなく邦訳最新刊ということでクリス・ウィタカーの第2作品目の小説でした。 主人公の3人の少女少年が乗る乗用車はビュイックです。ビュイックは自動車のブランド名でそれ以上の詳細な記述はありません。スティーヴン・キングも『回想のビュイック8』という小説を掻いていますし、ビュイックというのはアメリカ人がつくるアメリカ

          『終わりなき夜に少女は』クリス・ウィタカー

          ウラジミール・ソローキン『ブロの道』『氷』『23000』

          ロシアの小説家ウラジミール・ソローキンによる氷三部作。執筆順は『氷』→『ブロの道』→『23000』ですが、私は前情報がなにもなかったので表題に記載のある順番で読みました。順番はどの順番でも楽しめるのではないかと思います、例えば『23000』→『氷』→『ブロの道』でもです。 1908年6月30日に宇宙からツングース隕石が落下してくるところから物語は始まります。同じ日にサンクトペテルブルクに生を受けたアレクサンドルが運命のように隕石探査隊に参加するのですが、その隊員のなかで唯一

          ウラジミール・ソローキン『ブロの道』『氷』『23000』

          ウラジミール・ソローキン『吹雪』

          ロシアの辺境の地ドルゴエで人間がゾンビ化する感染症が発生した。ドクトル・プラトン・イリイチ・ガーリンはその予防に使用するワクチンを届けるために駅馬車で移動していた。吹雪のため駅馬車がドルベシノ村宿駅で足止めをくらう。急ぐドクトルは村でパン運びをするセキコフを紹介される、セキコフの車で吹雪の中ドルゴエに向かって旅が始まる・・・。というのがあらすじです。ロードノヴェルとありますが、吹雪で景色が変わらない車の中でドクトルとセキコフ二人だけが浮かび上がってくる情景を想像すると不思議な

          ウラジミール・ソローキン『吹雪』

          読書日記2024年5月18日〜6月2日

          静岡から千葉へ日帰り旅行をしました。旅費を節約するために小田原から新宿まで小田急線急行で行きました。途中までは車窓がおなじような田舎の風景、途中からはなれない混雑した車内からは車窓を眺める余裕はありませんでした。その旅のお供は『フラニーとズーイ』です、なにかすっきりとしない心の中をさらにもやもやとさせてくれたすばらしい読書体験でした。 購入した本屋はアウトドアと旅の本が同じ棚に並んでいます。『パタゴニア』は自然の中を移動して現地の過酷な自然を伝えてくれる本だと思い込んで購入

          読書日記2024年5月18日〜6月2日

          フランシス・ホジソン・バーネット『小公子』『小公女』『秘密の花園』

          本屋に行ったら新潮文庫のところに『小公子』『小公女』『秘密の花園』が揃っていました。読んだことはないですが、ものすごく有名で揃っていたことになんとなく運命を感じて購入することにしました。3作品とも児童文学というくくりだと思います。小公子は川端康成の訳が子供向けにしてあるからそんな感じですが、『小公子』『秘密の花園』は児童文学というくくりが必要ではないおもしろい小説でした。翻訳者が違うことも影響しているのかもしれませんが、『小公子』は大人の世界に子供が紛れ込んだようなかんじがし

          フランシス・ホジソン・バーネット『小公子』『小公女』『秘密の花園』

          メアリ・シェリー『フランケンシュタイン』

          知っていそうで知らなかったことランキング小説部門でたぶん一位になる小説『フランケンシュタイン』を読みました。『フランケンシュタイン』は怪物の名前ではなく、怪物を創造したヴィクター・フランケンシュタイン博士の名前だというのは有名ですが、それだけではありませんでした。映画はみたことはありませんが、写真等で青白い顔をした無表情な白人大男というイメージはあります。そして藤子不二雄Aによるマンガ『怪物くん』からの影響が大きくあります。ドラキュラやオオカミ男からは一歩ひいた立ち位置なので

          メアリ・シェリー『フランケンシュタイン』

          読書日記2024年5月7日〜17日

          15年ほどまえに死んだ母親の生家に行ってきました。名鉄本宿駅からくらがり渓谷行きバスにのり30分ほど、千万町口バス停で降りてからほぼ上り坂30分でたどり着いたのが千万町です。母親の生家におばといとこがいたのですこし話をしたりしました。 その旅のお供はスコット・フィッツジェラルドの『グレード・ギャツビー』です。『ホテル・ニューハンプシャー』にこの本が登場してくるのですが、美しいラストというふうに書かれていたので読むのを楽しみにしていました。 ラストの部分です。ここのことでしょ

          読書日記2024年5月7日〜17日

          ケルアックとブローディガンの『ビッグ・サー』

          ジャック・ケルアックとリチャード・ブローディガンという二人のアメリカ人作家。ふたりの共通点は1960年頃にサンフランシスコに住んでいたことです。そして題名に『ビッグ・サー』とつく小説を執筆していることも一緒です。ビッグ・サーはカリフォルニアの地名で訳者藤本和子さんによると「あるときは点を示し、またあるときはカリフォルニアの太平洋沿岸に沿って細長く帯状にのびる土地、モントレーからサン・ルイス・オビスポまでの広がりをいう。」とあります。 リチャード・ブローディガン『ビッグ・サー

          ケルアックとブローディガンの『ビッグ・サー』