見出し画像

トゥーサン版『ルバイヤート』オマル・ハイヤーム

フランツ・トゥーサンによる仏語散文訳オマル・ハイヤーム作『ルバイヤート』を邦訳した詩集です。なんの前知識もなく題名だけで購入しました。まずは表紙がかわいかったです。


『ルバイヤート』表紙

オマル・ハイヤームは現在のイラン北東部にある都市ニシャーブで生まれたそうです。イスラム教徒らしいのですが、やたらと酒を飲む内容の散文が多いという印象です。イスラム教徒はアルコールだめだったような気がするのですが、こうゆうのは時代がたつにつれて厳しくなることもあるし緩くなることもあるのでしょう。宗教の解釈は結局ひとそれぞれ勝手なものでしょう。

まづ酒を
酒こそ病んだ我が心には
覿面に効く薬だらう
さあ、酒をもて
麝香の匂ふ酒がいい
酒をくれ、薔薇の色した葡萄の酒を
胸を焼く、この悲しみの焰を消すには酒のほかない
恋人を
この盃を満たしておくれ
絹の弦張る、おまへのリュートを弾いてくれ

『ルバイヤート』第七五歌

こんな感じでやたらアルコールを摂取しています。オマル・ハイヤームは天文学者・数学者・哲学者としてレオナルド・ダ・ヴィンチのような天才だったらしいです。賢すぎると世の中の不条理にはやばやと気づいて、生きていくのが虚しくなってしまうのかもしれません。

この地上での我らの宿命が
苦しんで死んでゆくことと決まっているのなら
我らの惨めな肉体などすぐにでも大地に返したい
さう願ふのはいけないことか
積んだ功徳に従って
アラーが我らの魂を裁くとあなたは言ふのか
それについては
死者のもとから帰って来た者に
話が聞けたら
答へるとしよう

『ルバイヤート』第一五三歌

全体的にくすっと笑えるような散文がおおいのですが、このようにホラー風な歌もありました。科学的知識があるからこその発想ではないでしょうか。

1000年前の人種も生きている場所もまったく違う人が、現在の我々と同じように悩みながら生きていくのがわかる散文集でした。枕元において寝る前に数首読んで何回でも楽しむことができそうです。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?