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オヤユビ宇宙人

これは僕だけの現象かもしれない。
実は左手の親指の第一関節内側に、宇宙人がいる。

そいつは目玉だけ。
パックリと見開いている。
そして時々こう言う。
「もういいじゃん、ほっとけよ」

あるときはこう言う。
「ま、そんなこともあるよね」

僕は、
おいおいおい、おまえ、
だってふざけんなよ、って思う。だいたいは。

でも言うだけ言ったあとの
オヤユビ宇宙人は、だんまり、ひたすら、目玉をパクパク。

さっぱりしたーって感じなのか?

そして思わず、僕は ぷぷぷ、と笑ってしまい、
あーもーなんだっけ、っとなってしまう。

こういうのは僕だけの現象なんでしょうか。

と、真剣に考えているときに、

「何それ?」

冷たい一言で現実にひきもどす、カオリの声。

「も、ショータったら、マジックで目玉なんか書かないでよ、親指の関節のとこ!」

ぎく。
「なんだ、見んなよ」

「ダメダメ」

「いーじゃん、落ち着くんだよ、こうしていると。」

「だめだって。ほら、ショータの左手は」
カオリがギュッと握る。「あたしとつなぐためにあるんだから」

おおっと!
オヤユビ宇宙人があたふたしそうな展開だ!
僕の左手はじとっと汗ばんできた。

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