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引きこもっていたから感覚が研ぎ澄まされたのかもしれない!?

癌を患い、手術と抗がん剤治療を受けてからというもの体調不良が続いていた。時々、家の近くを散歩したり、通院したりするものの、ほとんど家に引きこもっていた。

そんなある日、娘から誘われた新幹線で行く日帰り旅行に無謀にも出発した。

下調べが必要

駅構内のエレベーターを探すのは意外に大変だった。

特に駅を利用する場合は、よく知っている人や下調べをした人にとっては問題無いかもしれないが、私のような不慣れな者にとっては困難だった。

それなのでエスカレーターがある時はそれを利用し、無い時は階段を使うことにした。

娘が一緒にいてくれたことも安心感に繋がり、普段よりも歩けていた。

それに母親というのは子供といると普段以上に頑張るものなのだろう。それは子供が大人になっても変わらなかった。

階段転落

(階段転落と言ってもこれは私ではなくて、外国の女性の話です。)

周りの方にご迷惑を掛けないようにと右隅に寄り階段を降りていた。すると10段ほど降りた時に左後方から大きな音が聞こえた。

驚いて振り返ると、外国の女性が階段に横たわるような姿勢で私たちに向かって転がっている途中だった。

咄嗟に身構えたが、次の瞬間、巻き込まれるのではないかと心配しながらも私の左手は見知らぬ彼女を支えていた。

30年程前、私は螺旋階段で足を滑らせたことがあった。階段を落ちると踊り場がない限りなかなか止まれないことは、その時に身を持って体験していた。

駅は螺旋階段では無いものの、見える範囲に踊り場が無かった。

とにかく階段を転がり落ちている最中の彼女を助けたい一心だった。

抗がん剤治療の副作用で手足が痺れているがそんなこと関係無かった。

もしかしたら止まる寸前だったかもしれないが、私の痺れている手でも何とか止まってくれた。

その後、「大丈夫ですか?」と日本語で声をかけた。

幸い怪我も無く、無事な様子だった。

見知らぬ彼女は、恥ずかしさからなのか、言葉が通じないからか、文化の違いからか、心配する私達とその場にいた人達に「あっちに行って」とばかりに手を振っていた。

その手の振り方に若干傷つきつつ、心配しながらその場を立ち去ることにした。

ハプニング続き

その後も、小さな女の子の落とし物を瞬時に気づいたり、動く歩道から降り損なって転倒した中学生くらいの女の子を機敏に避けたり(女の子はその子のお母さんが抱えて助けていました)、新幹線の中で仙台から名古屋までの切符を無くしたお爺さんを助けたり、とハプニング続きの旅になった。

切符を無くしたお爺さんに気づいたときは「何でわかったの?」と、娘に驚かれた。

お爺さんが切符を落とした場面を見たわけではなかったが、そのお爺さんのことは新幹線に乗車する前から何だか気になっていた。

よく分かったなぁ、と自分でも驚いた。

きっと外出が久しぶり過ぎて周りに目がいっただけだろうが、何だか不思議だった。

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