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「せっかく」に振りまわされない。


せっかく買ったのに。
使わないならもう買わないよ!
せっかく来たんだから、いっぱい遊ぼうよ!

せっかく、せっかくなら。


この「せっかく」という言葉に、何度も惑わされてきた。

特に、育児をはじめたばかりの頃。
子どもたちのために「せっかく」がんばったんだから、成果が欲しいとおもっていた。


子どもたちは、気まぐれだ。
せっかくお金をかけて買っておもちゃでも、すぐに飽きてしまうし、せっかく遠出して来た公園なのに、「やっぱり帰る」と言い出す始末。

えー、もったいない。
時間もお金も、注ぎ込んだのに。

そう思うと、無性にイライラして。
遊びたくないおもちゃで、しつこく遊ばせようとしたり、帰りたがるのを引き止めたりした。

長男が生まれて一年目は、そういうことでよく、夫と意見が食い違った。
夫はいつも息子の気持ちを優先し、わたしばかりケチな気がした。




でも、最近ようやくやめた。
良い意味で、諦めたのだ。

わたしは「せっかく」と思うのを、やめた。

それに付随する、「もったいない」とか「損したくない」とかも、一旦忘れることにした。


だってそれらはすべて、「おとな」の感覚だ。
子どもたちに、費やした時間や労力のことなど分かるはずがない。

彼らにとって、そんなことはどうでもいい。
そのおもちゃが何円しようと、その公園がどれだけ貴重な場所かなど、知ったことではない。

それは全部、おとなの価値観。

子どもたちは、「自分の気持ち」がいちばん大きくて、大事なのだ。

欲しい、欲しくない。
遊びたい、遊びたくない。
楽しい、つまんない。
まだ元気、疲れたから帰りたい。

それが、子ども。
正直な、子どもの気持ち。


だから、わたしは「せっかく」遠出した公園だとしても、長男が「もういい」と言えば、あっさり帰るようになった。

もちろん、少し気分が変われば遊ぶかもしれないので、最低限できることはする。
一緒に遊んでみたり、おやつやご飯の時間にしてみたり、ジュースを買ってみたり。
それでも、しつこく無意味な滞在はしない。


わたしが欲しいのは、「今日一日遠い公園で遊ばせてあげた親」という称号ではない。

ただ息子に、「ああ楽しかった」と笑顔になってほしいだけなのだ。



おもちゃも同じだ。
たくさん失敗してきた。

どう考えても長く遊ばないおもちゃを欲しがられて、買ってみたものの、やはり遊ばない。
「せっかく買ったのに!」と言いそうになる。

でも、無理に遊んでほしいわけじゃない。
そのとき、息子はたしかにそれが欲しかった。
そして届いたときは大喜びして、しばらく遊んで楽しそうだった。
値段的には1年くらい遊んでほしいが、そういうのはこちらの都合なのだ。

だから言わない。

ただ、「こういうのはもう、いっぱい遊んだから、次は他のにしようよ」とか、「いっぱい似てるのがあるけど、全部使ってないよね?どうする?」とかは、言う。

せっかくお金をかけてやったのに、というおとなの価値観を押し付けるんじゃなくて。
あくまで、息子との買い物をより良いものにするための「意見」は伝える。
すると息子も、大体納得してくれる。

わたしだって、無駄なものをたくさん買って、失敗してきた。
息子だって、おんなじなのだ。





この「せっかく」の下書きを書いていたとき、ちょうどほぼ日・糸井重里さんの「今日のダーリン」も同じテーマだった。

「せっかく」の話が、たくさん出てきた。

「せっかく」お風呂にジェットがついてるから、ブクブクさせていたけど、つけずに入ると静かでよかった、とか。

「せっかく」早く着くのだからと、いつも新幹線のぞみに乗っていた、とか。

「せっかく」美味しいハンバーガーに変わって再登場したのに、娘さんは前の方がよかったらしい、とか。

「せっかく」ということを、もう、考えちゃいけないなと。「せっかく」かどうかで、そっちに引きづられちゃダメだ。「せっかく」があるのはかまわないが、それならそれで、「せっかくですが」も選択肢に入れたほうがよさそうだ。

糸井重里「今日のダーリン」2024.6.2



ついわたしも、損得ばかり考えて、おトクな方を選んでいるつもりだったけど、「せっかく」に振り回されてるだけなんだ。

それを、子育てしながら、ようやく気づいた。
損得なんてまるで眼中にない、我が子のまっすぐな気持ちを見て、気づいてしまった。

オトナって、なんだかなあ、とおもう。
オトナになっちゃったかあ、わたし。
いや、単にケチなだけかしら。


なんにせよ、いちばん大切なモノがなにか、見失っちゃいけない。

目先の損得より、目の前の我が子の笑顔。
それが、わたしの守りたいモノ。

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