見出し画像

「きいろしんごうのひみつ」。

このお話は、寝る前の長男に「なんかお話して」と言われて、思いつくままにしゃべった創作です。

4歳長男の好きな要素や、長男の体験に基づいたエピソードを混ぜているので、一つのストーリーとしておかしなところもありますが、あくまで【我が家の長男】向けのお話なので、ご容赦ください。
一部、長男が続きを考えたところもあります。

***


信号機の「きいろ」くん。
いつも悲しい顔をしています。

それは、「あか」くんと「あお」くんとちがって、「きいろ」くんは出番が少ないからです。

ピカッと「あか」くんが光ると、車はたちまち止まります。
「どんなもんだい!」

ピカッと「あお」くんが光ると、車はすぐに動き出します。
「みなさん、いってらっしゃーい」

でも、「きいろ」くんが光ると、車はあわてます。
いそいで、急ブレーキをふむ車。
おもわず、通り過ぎちゃう車。

「ぼくが光ると、みんな困っちゃうのかな」

そうおもった「きいろ」くんは、すぐに光るのをやめてしまいます。
だから「きいろ」くんの出番は、短いのです。


ある日、とうとう「きいろ」くんは泣き出しました。
悲しい顔で、しくしく泣くと、なみだがぽろぽろ垂れました。

ずっとずっと泣いていると、むこうから車がやってきました。
かっこいいシルバーの車でした。

「どうしてそんなに泣いてるの?」

シルバーの車が聞きました。

「出番がなくて、悲しいんだ。ぼくももっと、光りたいよ」

「きいろ」くんがそういうと、シルバーの車はおしえてくれました。

「この道は、夜中になるとほとんど車が通らない。だーれもいない道だったら、君が光ってもなんともないさ」



その夜。

「きいろ」くんは、「あか」くんと「あお」くんにワケを話して、さきに眠ってもらいました。
そうして、夜中の真っ暗になった頃、「きいろ」くんはピカリと光り出しました。

ピカ、ピカ、ピカリ。

「きいろ」くんが何度光っても、車はぜんぜん通りません。
これなら、事故も起きないぞ。
「きいろ」くんはうれしくなって、何度も何度も光りました。

チカ、チカ、チカ、チカ。


するとそこへ、珍しく、トラックが一台やってきました。
遠くへ荷物を運んでいく、運搬用のトラックです。

トラックは、信号が黄色に点滅しているのを見て、ふしぎな顔をしました。

「あれえ?どうして黄色が点滅してるんだ?進んでも、いいのかな?」

トラックはしばらく止まって待ちましたが、「きいろ」くんは光るのに夢中で気がつきません。

トラックは、右を見て、左を見て、だれもいないのを確かめると、そのままスイーと交差点を通り抜けました。
事故は、まったく起きませんでした。


しばらくして、まためずらしく、一台の車がやってきました。
ピンクの軽自動車でした。
帰りが遅くなったようで、眠そうに目をこすっています。

「ふわ~眠い。早くおうちに帰りたい。
 あれれ?黄色が点滅しているぞ。これは、通っていいのかな?」

ピンクの車も、一回止まってしばらくようすを見ましたが、「きいろ」くんは気がつきません。
ピンクの車は、右を見て、左を見て、だれもいないのを確かめると、そのままスイーと通り抜けました。
事故は、まったく起きませんでした。


「きいろ」くんは、夜中のあいだ、ずっと点滅し続けました。
楽しくて楽しくて、夢中になってチカチカしました。

たまに、車がやってきましたが、みんな右と左をたしかめて通ったおかげで、事故はひとつも起きませんでした。


やがて、朝が近づき、おひさまがのぼる頃。
「きいろ」くんは、「あか」くんと「あお」くんを起こしました。

「おはようきいろ君、夜中はうまく光ったかい?」

「あお」くんがそうたずねると、「きいろ」くんはうなずきました。


「うん、とっても楽しかったよ。これからは、毎日ぼくが夜中に光るよ」

すると、「あか」くんもうなずきました。

「それは助かる。夜中に眠れるなんて、最高だ。ときどきは、ぼくも手伝うからね」


こうして、毎日夜中には、「きいろ」くんが点滅しました。

それは、だんだんほかの場所の信号にも広まって、夜中にはいくつかの信号の「きいろ」が、チカチカ光るようになりました。
たまに、「あか」くんも起きてきて、いっしょにチカチカ光るそうです。


こうして、出番のなかった「きいろ」くんは、ちっとも、泣かなくなりましたとさ。



この記事が参加している募集

眠れない夜に

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?