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マイナス×マイナス=プラス!?!? ゴジラマイナスワンマイナスカラー 感想

とうとうアカデミーにノミネートされたゴジラマイナスワン、もう視聴しただろうか。
自分はあれをカラーと白黒で二回観たほど好きだったので、今回はその魅力に迫っていきたいと思う。先に書いておくが、私はゴジラ作品について何の知識もなく、話題になっていたシン・ゴジラも観たことがなかった。(マイナスワンのあと即見たが)そして、ゴジラというのはほかのアメコミ作品なんかと同じで、なんかすごいヒーローがバカスカやる、という程度の認識だった。だからこそ、今回の作品には度肝を抜かれた。

1.恐怖の対象・ゴジラ+あらすじ
今作ゴジラはもう恐怖の対象でしかなかった。まずはじめ、主人公敷島が特攻から逃げるべく、機体修理場となっていた八丈島に浮かぶ孤島、大戸島へ着陸する。そこで見せた軽い人間ドラマは割愛するが、とにかく開始五分で我々は初めてゴジラとの邂逅を果たす。イメージよりは小さいがそこにいる人間を容赦なく、虫けらのように食い、殺しつくす。われわれはその恐怖を敷島と一緒に感じるのだ。さらにシーンは変わり、舞台は戦後日本、復興しかけの日本となる。敷島は船での地雷除去の仕事を見つけ、偶然会ったノリ子さんとその連れ子の明子と一緒に共同生活を過ごしていた。そんな平凡な日常の中、敷島は緊急で海へと向かいそこで怪物ゴジラとの再会することになる。敷島たちは、戦艦高尾が日本上陸を果たそうとするゴジラを倒すべく彼らに合流する前の足止めとして、木造の船2隻(うち一隻は協力してる船)をスポットに待機させていた。するとやはり彼が現れるわけだが、被ばくをしたそれは大戸島のそれよりもはるかに巨大で、狂暴であった。ゴジラは一撃でもう片方の船を破壊し、そのまま敷島の船を攻め込もうとしていた。この時の迫力と言ったら、死ぬほど恐ろしい、といっても過言ではないほどであった。結局この場面、戦艦高尾が登場して敷島たちは逃げれたのだが、巨大戦艦であるはずの高尾ですら青いビームで破壊されてしまった。ここで我々はあることに気付く。そう、ゴジラはただの恐怖の対象ではなく、戦争のメタファーであるということだ。このあと、ゴジラはいつも通り東京に上陸し、復興しかけている上野の街を破壊しつくすわけだが、最後に見せたビームは爆発時の雲が核爆弾のそれと酷似していたり、またその後放射能の雨と呼ばれる黒い雨が敷島に降りかかるなど、我々は視覚的・そしてより感覚的に(戦争体験がなくても、日本で教育を受けていれば核が及ぼした影響などは間接的でも知っているだろう)味わうことになるのだ。つまり我々は、この映画を通じて、絶対にかなわない敵としてのゴジラ・そして、戦争のメタファーとして、すべてを奪いつくすゴジラという二重の恐怖を味わうことになるのだ。

2.シン・ゴジラと比較して
さて、日本であれだけヒットした別監督のシン・ゴジラについても触れておこう。最初に言っておくが、自分はこの作品がシン・ゴジラを圧倒したと思っている。単純なVFXの出来もそうだが、登場人物の構成も、人間ドラマの見せ方も何もかも一枚上手だった。シン・ゴジラを観て思ったのは、この作品にはリアリティが欠如していた、ということだ。これはどういうことかというと、石原さとみ演じるカヨコが日系3世アメリカ人のはずであるのに英語の発音が日本人訛りすぎるところからもわかったり、セリフの言い回しがエヴァみたいで、どこかアニメらしさを感じたり、実写映画でそのままアニメのノリを突き通した雰囲気があって、どこか違和感を感じてしまった点があった。もちろん、今作マイナスワンもセリフ回しだったり違和感がある点も多かったが、水島(船の乗組員)が戦争経験のない我々と同じような目線で物事を語ったり、そういったところで没入感を与えていることを考慮すると、やはり一枚上手であるように感じられた。人間ドラマに関しては、シン・ゴジラは描き方が政府中心であまり個人にフォーカスが当たっていないので比べようがないが、やはり個人的にはマイナスワンのほうが好きだった。(シンの方も完成度はすごく高いと思うけれど(BGMの使い方もうまいし、何より神木隆之介の熱演がより脚本に深みを持たせていた)

3.あえて白黒にすることの意義
先ほどまでリアリティだのVFXだの云々しゃべっていたが、ゴジラというのは結局のところまぼろしで、現実には存在しえないのである。つまりリアリティの±で語ればその存在はマイナスなのである。しかしどうであろう、白黒という異世界にその異物が登場すると、それは我々の世界とは全く異なった、しかしそこに広がる光景はとても現実的で、あり得たかもしれないもう一つの過去を見ている気にさせるのだ。つまり、異世界と異物、二つのマイナスが合わさることで物語はよりもっともらしさを高め、我々の世界と同調していく、プラスになるのであった。


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