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他人に興味を持ちなさい

 最近、くどうれいんさんのエッセイばかり読んでいる。柔らかい文体、くすっと笑ってしまうそうな言い回し、そして飾りたくなるような可愛い表紙。好きなところはたくさんあるが、なかでも秀逸なのは登場人物の描写だと思う。

短期合宿でキャンプ場へ向かう時、長距離バスの座席にからだをすっかり預けて溶けるように眠りこける蒲田を見て、賢い鹿のようだと思った。そのことを短歌にすると「うれしいもんですねぇ」と樺田は照れた。

「コーヒーにミルクを入れるような愛」くどうれいん

 これは「飛んじゃったサンキャッチャー」というお話のなかの一節だ。エッセイは小説に比べて短いため、登場人物の紹介を長々することができない。それなのに、くどうれいんさんのエッセイはその一瞬でキャラクターの愛らしさが伝わる。なんなら、会って友達になりたくなってしまう。読むだけではなく、自分でエッセイを書くようになってからというもの、その技量に驚いてばかりだ。

 私は小さい頃母から、「もっと他人に興味を持ちなさい」と小言を言われていた。きっと母は、目つきが悪くて他人と一線を引く私のことを心配していたのだろう。けれど、その時の私にとって周りに興味を持たないことは自分の輪郭を守るために必要なことで、母のその忠言がずっと嫌だった。

 大人になって少しは丸くなったけれど、やっぱり私は自分のことばかり気にしてしまうし、うげっと思う人にはうげっとした顔をしてしまう。けれど、一見興味を惹かれない人でも、うげっと思うようなひとでも、とびきり愛らしく描けるようによーく観察しなさい、そんなアドバイスだったら聞ける気がする。

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