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そのひとがうたうとき〈歌の真髄〉

私の思い出の一曲を紹介します。

作詞 谷川俊太郎、作曲 木下牧子 の『そのひとがうたうとき』です。

歌詞はこのようになっています。

そのひとがうたうとき
そのこえはとおくからくる
うずくまるひとりの としよりのおもいでから
くちはてた たくさんの たいこのこだまから
あらそいあう こころとこころの すきまから
そのこえはくる そのこえはくる

そのひとがうたうとき
そのこえはもっと とおくからくる
おおむかしの うみの うねりのふかみから
ふりつもる あしたのゆきのしずけさから
わすれられた いのりのおもいつぶやきから
そのこえはくる そのこえはくる

そののどは かれることのないいど
そのうでは つみびとをだきとめる
そのあしは むちのようにだいちをうつ

そのひとがうたうとき
そのひとがうたうとき
どんなことばも もどかしいところに
ひとつのたしかなこたえがきこえる

だが うたはまた あたらしいなぞのはじまり
くにぐにのさかいをこえ さばくをこえ
かたくなな こころをこえ
みらいへとさかのぼり そのこえはとどく
もっともふしあわせなひとのもとまで
     (そのひとがうたうとき)

そうなんです。全てひらがなで書かれているんです。詩を誰でも読めるように、解釈を自由にできるようにということかもしれません。

そして、とても神聖な感じがしませんか。歌というものは、何のためにあるのかということを語っている気がします。歌はどんな人のこころも癒すことができる、癒してほしいという祈りみたいなものも感じます。

歌で聴くと、最後は「最も不幸せな人が歌うとき」と聴こえるのですが、この歌詞が究極の在り方だと思います。一番不幸な人が歌を口ずさめたら、それこそ平和なのだと思います。だからといって、音楽は楽しむものですから、別に世界平和なんて考える必要はないんです。でも、「歌」って絶対に誰かの心の支えになっているんだということを、この歌で再確認できるはずです。

だから、この曲は私にとって、一番上にあるもの、憲法みたいな、宇宙を取り囲むその膜みたいな、そんな存在です。テキトーには歌えない曲だってことです。歌い終わると、なぜか無性に泣きたくなります。

みなさんに、そんな一曲はありますか。

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