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星はまた、大切なことを教えてくれた

"満天の空に君の声が響いてもいいような綺麗な夜"って、どんな夜だろう

耳元で流れる歌詞に心の中でツッコミを入れる。

野田洋次郎さんが書いた曲だからきっと、素敵な意味が込められているに違いない。だからこそ、その歌詞の意味を理解しきれないことが少し悔しかったけれど、そのメロディがあまりにも綺麗で心を震わせるから、細かいことなんてどうでもよく感じた。

「あ、流れた」

頭上から声が聞こえると、「どこどこ?」と反射的に星を探してしまう。確かめたってそこに流れた星はもう見えないのに。

そこに星が存在したことを証明するように、僕たちは星の軌道を確認しあった。

...

僕は夏が好きではなかった。
暑すぎて体力は奪われるし、空気は澄んでないし、虫が多い。
それでも、今日ばかりは「夏がいいな」と思わずにはいられなかった。

田んぼに囲まれた真っ暗な道。
大の字に寝そべりながら、流れた星の数を数える。
一定のリズムで星を覆う雲の切れ間は、願い事を語り合うのにちょうどよかった。

流れ星を数えながら、これまでの人生を辿る。

いろんな出来事がひゅんひゅんと流れていく。
当時あれほど熱中していたことさえ、一筋の光が流れたあとには、本当にその出来事があったか分からないほど、手の届かない遠い存在に感じる。

涙を流し、想いを伝え、手を離したくないと精一杯惜しんだ別れすらも。そんな風に感じてしまう自分が、本当に自分なのかと不安になる。

でもそうやって不安な気持ちになる自分は、これまで強く生きてきた過去の積み重ね。今ここにある不安な気持ちは、過去を強く生きた証なんだろうな。

しあわせだなー

生暖かい風を浴びながら、ずっと浸っていたい空気を味わい尽くす。

未来、どうなるか、どう転ぶかなんて分からない。
だけど、こうして胸いっぱいにしあわせを詰め込んだ日があれば、何度迷ったって、何度挫けたって、何度先が見えなくなったって、きっと空はまた晴れ間を見せてくれるだろう。

そしてまた明日も、空の向こう側で星が見守ってくれているに違いない。

空一面が雲に覆われたあと、帰りがけにちらりと見せた星空の輝きが、そう教えてくれた気がした。


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