講座と講師の評価基準

1.講座自体を評価する


受講生を講師が評価するだけではなく、
講座それ自体を評価する必要があります。
その方法は、講座の位置づけで変わってきます。

(1) 資格試験講座

資格試験講座の場合は「合格率」ということになるでしょう。
ただ、受験校の場合は様子が違っていて、
再受験するために授業料を払う講座なら、
「またこの先生の講義が聴きたい」と思わせることが出来れば、
講座として(学校として)は成功ということになります。
再受講が無料である場合も、上級資格があるとき(簿記2級→1級等)
合格率ではなく、上級資格への挑戦をさせることが、
講座として(講師、学校として)の成功になります。
不合格でも「次に行けるくらいの自信が付いた」らOKです。

(2) 大学や高校の授業

大学や高校では、学生・生徒の講師に対する評価が、
その授業の評価となるでしょう。
また、講師が学生・生徒に付けた成績の平均なども、
授業の評価として一体になってきます。
特に大学では単位というものがあるので、
必須科目ではない場合には、
講師に対する評価が悪いと、だんだん学生数が減ってきて、
それも講座に対する悪評価となります。

(3) 新入社員研修

新入社員研修の場合は、
基本的に「落第」がないので、
受講生からの講師に対する評価が「すぐにわかる基準」となり、
現場に配属されてからの社員に対する評価が「次の基準」になります。
受講生からの評価が良くても「使い物にならない」となれば、
講座の価値は低くなります。
私がサブ講師を務めた研修で、
メイン講師が「趣味に走って」色々詰め込みすぎて、
翌年はその研修会社への発注を見合わせた事例があります。
たまたま、翌年の発注先にも登録していた私が、
本当に偶然に、その会社の担当(メイン講師)になりました。
その時に相手(委託元企業)から元請が言われた言葉は、
「去年は差が開きすぎたので、今年は差が開かないような講座に」
でした。
私自身が入門期教育を得意としているので、
希望通り、理解不足な社員に手厚く指導して、
差が開かないような講座運営をしました。

(4) 職業訓練

職業訓練の場合も、基本的には社員研修と同じです。
ただ、職業訓練では「講座のカリキュラムが悪い」という評価は、
かなり先にならないとわかりませんし、
それも、多数の企業に就職していきますから、
離職者向け講座の評価としては、就職率ということになってきます。
在職者向けであっても、多数の企業に所属する社員が集まる場合は、
「講座そのものの価値(評価)」は、すぐには判りません。

2.講師の評価

講師の評価も、講座の評価と同様に、それぞれ異なります。
ただ、講師の評価は、受講生が中心になる場合もあります。

(1) 脱落者がない場合


新入社員研修や職業訓練では、基本的に脱落者はいません。
特に訓練手当を受講生が貰う離職者向け講座では、
中途退学すると、手当が貰えなくなるので、
理解不足でも、そのまま講座が終了することが多いです。
そして、受講生からの評価は、センタリングの法則で、
数値にすると真ん中に近い数値が出ます。

(2) 脱落者がいる場合


脱落者がいる資格試験講座では、
脱落率が講師の評価に響いてきます。
コロナ禍の影響で対面授業からオンラインへとシフトしていますが、
オンラインをリアルタイムで聴く「意義」は、
直接質問ができるという利点があります。
私は対面授業でも、いつも最初に言います。
「判らなかったら、判らないときに、判らないと言ってくれ」
「後で質問しようとすると、質問できなくなる」
後から質問をしようとすると「自分の言葉で話す」必要があり、
理解不足の受講生には、かなりハードルが上がります。
理解できなかったときに、
一言「もう一回」とか「判らない」と言えば、それで済みます。
動画配信等の講義では、それができません。
リアルタイムで講義をして、それを録画している講座の場合は、
リアルタイムの講義を聴いている人数というのが、
「生の講義を聴きたい」「聴く意義がある」と思っている数です。
後で聴けば良いと思わせるような講義は、講師の力量が問われます。

(3) 受講生アンケート


受講生アンケートの重みも、脱落者がいるかどうかで、分かれます。
脱落者がいる場合は、最終的に残った受講生のアンケートでは、
講師評価が高くなる傾向があります。
最後まで聴いてくれた受講生が対象ですから、当然です。
私からすれば、「脱落者がいる講義はアウト」ですが、
それを講座運営側が気にしないこともあります。

(4) 講師評価と講座評価のために

職業訓練で、途中で就職が決まって退学する場合もありますが、
私の本音としては、採用企業への要望ですが、
「修了してから働き始められるようにしてほしい」です。
離職者訓練の場合は3ヶ月~半年です。
就職活動は、講座の後半に行うのが普通ですから、
「せめて終わるまでは訓練を続けさせて欲しい」のです。
途中で就職が決まって退学する場合は、
離職者訓練の「就職率」に含まれます。
ただ、「訓練の成果としての就職率」かどうか、
中途退学だと判別できませんし、
最後の受講生アンケートにも反映されません。
これでは講座の評価や講師の評価ができません。
新入社員研修だと中途退学は基本的にありませんので、
全員が修了し、現場に配属されます。
ですから最後の「受講生アンケート」の重みが増します。
資格試験受験校では、脱落率は売上に響きますので、
脱落させたら講師の評価が低くなります。
最後に残った受講生だけのアンケートで評価が高くても、
その「脱落率」から、講師の善し悪しがわかります。


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