高校入試、大学入試そして採用試験

東京都知事が英語のスピーキングテストを行うと発表し、
反対の声が広がるなど波紋を広げています。
特定企業(ベネッセ)との癒着等の問題もありますが、
この稿では教育の観点から入試のありかたとして考えたいと思います。
特に「入試が教育課程に与える影響」を考えます。

1.高校入試の時期

高校入試は推薦入試が1月、一般入試が2月に行われます。
私の時代(1978年)だと2月下旬に都立高校の入試でした。
そうすると1月中には中学校学習指導要領の範囲を、
すべて終わらせる必要があり、
学習指導要領に指定されている時間数が確保できません。
2月末くらいなら、まだいいかもしれませんが、
1月の試験となると授業への影響が大になります。
今回導入されるスピーキングテストは11月末です。
11月までに英語の学習を終わらせる必要があります。
その後は「消化試合」というか、受験対策になってしまい、
きちんとした教育ができるかどうか不安です。

2.大学入試の時期

大学入試も一般入試は2月に行われるところが多いです。
ただ、センター試験は1月中旬ですから、
年内には指導要領を終わらせる必要があります。
高等学校の指導要領では35週を1単位としています。
3年生は30週でいい・・・とは書いてありません。

3.採用試験の時期

企業の採用試験は、
3月(卒業年次直前)に広報活動解禁
6月(卒業年次)に採用試験解禁
10月に内定開始
となっています。
大学の教育課程で学んだことを試験するわけではないので、
中学や高校のように「急いで学習する」必要はありませんが、
4年次といえば、卒論を控えています。
卒論と並行して就職活動をしなければならなくなります。
私の時代は10月が入社試験の解禁でした。
高校生の就職活動はそれより早く、8月に開始しました。
現在の採用スケジュールは、大学生だけでなく、
企業の採用担当(人事部)にも影響が大きいでしょう。
なにしろ、新入社員研修と同時に採用活動をするわけですから。
人材育成担当と人材採用担当が分かれているような企業は別として、
4~6月は人事部は大忙しでしょう。

4.私の考える理想型

私が教育という立場から考える理想的な形は、
高校入試と2月末~3月初め
大学は5月頃(高校卒業後)に入試をして9月入学
採用活動は8月(卒業後)開始で4月入社・・・
というスケジュールです。
大学では卒論までしっかり学ぶ。
この「理想型」は企業にとっても良い結果になるはずです。
現在の教育制度において「高等専門学校」(5年制)は、
短期大学(高卒+2年)より優秀な人材が集まりますし、
専門学校専門課程(3年制)の人材は、
2年制専門課程よりも優秀な人材が集まるでしょう。
2年制の専門課程では1年しか専門を学ばずに就職活動します。
3年制の専門課程では2年間学べます。
大学も2年までは教養科目が多いので、
専門科目は1年しか学ばずに就職活動をすることになります。
この差は、新入社員研修をしていて実感しています。
情報系の3年制専門学校の卒業生は、
大学の情報系学部出身者よりも、優秀な人が多い印象です。
専門学校も、現在は中卒者が入学する高等課程と、
高卒者が入学する専門課程に分かれていますが、
中卒者が入学できる専門課程(5年制)もあっていいと思います。

学ぶべき事を全て学んでから次の段階へ・・・が理想ではないでしょうか。

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