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人は見た目によらない話~私を変えた1つの偶然の出会い~

お久しぶりです、皆様お元気でしょうか。
以前、私は昼の世界と夜の世界の2つの世界線で働いているお話をしたかなと思います。
実はあれから色々ありまして、端的に言うと夜のほうのお店を変えざるを得なくなりました。
理由は本当にしょうもなくて、給料の未払い続きで最終的に社長が支払いも荷物の返却もせず音信不通で飛んでしまったからです。
後味が悪いし、嫌な話ですよね。

でも、まだこの仕事続けてみたいしな〜どうするかな〜ってことで
つい数ヶ月前、地域を変えて移籍をしました。
以前はターミナル駅の繁華街でしたが、今のところは完全ベッドタウンです。
ということで、今も昼と夜の世界をふわふわ漂うように行き来しています。
懲りませんね。本当に懲りません。
だって、人と話すの楽しいんだもん。
お客さんの中には話が噛み合わない人や、
性格が笑ってしまうくらい合わない人もいるけど、
やっぱり人と話すの楽しいんだ。

いろんな知識をくれる人もいる。

いろんな考え方をくれる人もいる。

時には、すごく考えさせられるような出来事をくれた人もいました。
この話はいろんな人に聞いてほしい。
そんなわけで、数ヶ月ぶりに筆をとった次第です。

あれは、まだ私が今の店に入店して1週間もしていないときだった。
あの日はかなり忙しくて、ずっと満卓状態でした。
もれなく全員酔っ払ってて、そんな中でも私はまだマシなほうでしたが、
少しずつ頭が回らなくなってきている頃でした。

“その人”がやってきた時間はたしか、深夜。
終電はもうとっくに終わっている時間帯でした。

私はその時、常連のお客さんのお席にいました。
が、私の視線は常連のお客さんではなく、店のドア…

でもなく、その手前に立っていた1人の若い男性に注がれた。
ほどなくして店長が走る、対応する、間も無く席に通された。

「嘘でしょ…見るからにあの人ヤバそうじゃん…」

なぜ私がそう思ったかというと、その人はベッドタウンのこの街ではかなり珍しい髪色をしていた。
いわゆる、派手髪というやつ。
ちなみに、何色だったかは皆様のご想像にお任せします。
とにかく、落ち着いた雰囲気が漂うこの街で暮らすにしては、
かなり個性的で目立つ、派手な見た目をされていた。

ここで私の人間観察タイムが始まる。

実は以前、私はとある大きな病院である検査を受けたことがあるのだが、
「あなたは視覚から得た情報を分析する能力、洞察力が恐ろしいほど高いです」と、先生にドン引きされたことがある。

それはそれで、この仕事にもいろんな意味で大いに活かせるので、
私はそれも個性と思って気にしていなかったのですが…
フルに活かしすぎた結果、お客様や店の人に怖すぎる!と、
ドン引きされたこともあるほどだったので、
ちょっと封印しようかな…と思っていた頃でした。
矢先、この派手髪の兄ちゃんがやってきたのです。

脳内会話、開始。

「この時代にこの髪色…年齢はマスク取った顔を見た限りおそらくこれくらい、終電はもうとっくのとうに終わっているから、おそらくこの辺の人…普段から飲みに行きそうな地域はあの辺の繁華街だろう…よく見るとコレとコレ組み合わせていてかなり格好がオシャレ…ブランド物は特にわかりやすいものは身につけていない…仕事は…社風や服装髪色自由なこういう系統の会社か、アパレル系か、美容師か…?所持金は多分これくらいで…新規の人ならこれくらいの料金ならイケるだろう…あと…ブツブツ…」

を、瞬間で判断する自分がマジで怖いです。
改めて文字化してみて、周りがドン引きするのも無理もないなと感じました。
反省はしています。後悔はしていません。

と、ここで私は副店長に呼ばれて引き抜かれる。
ご馳走様をして、バックヤードに戻される。
束の間の休憩タイムだった。

さすが深夜。
お酒も入って、疲れも出てきて、少しだけ眠くなってきた。

少しの時間、座って目を閉じる私。
しばらくして、いろんなお席の会話がザワザワと聞こえてくる。
あの派手髪兄ちゃん(ここではそう呼ぶことにします)の声も聞こえてくる。
というより、派手髪兄ちゃんおそろしく声がデカい。まぁまぁデカい。耳壊れそう。
本当、誰かテレビのリモコン貸してくださいレベルだった。
さらに、断片的でしか聞いていないつもりだったが、
態度もデカく、言ってることもかなり上から目線。

「嫌だなあのお席…めちゃくちゃ偉そうだな…」

派手髪兄ちゃんの声のボリュームと発言の数々は、私のイライラをさらに加速させた。

すると、次第に会話の雲行きも怪しくなる…あれ、なんかこれヤバくない…?
たしか女の子は2人ついていたはず…もしかしてドリンク出したくない!出して!とか言ってる?これほっといたらトラブルになりそうじゃない?

「…助けに行くべき?」

そう思った瞬間、副店長に呼ばれた。
次のお席が決まった。

「2人抜けさせるから、次交換ね!あの派手髪の新規1名様のとこお願いね!」

地獄の宣告かと思った。
たった1人で、あの声も態度もデカい派手髪兄ちゃんの相手をしろと…?

「めっちゃ嫌だな…席つきたくないな…何話せばいいんだろう…」

その時、私は絶望感でいっぱいでした。
まさかこれが、私の考えが変わる大きな出会いだとはまったく思わなかった。

まだ押し問答で揉めてる卓。
そこに、私は意を決して笑顔を振り撒きながら突っ込んでいった。
男は度胸!女は愛嬌!

「お話し中失礼いたします!○○と申します!よろしくお願いします♪」

一瞬その場が静まり返る。
私の背中には冷や汗が流れる。
しばらくして、派手髪兄ちゃんの口が開く。

「お姉さん可愛いじゃん!?お姉さんはここにいていいよ♪」

途端、私が来る前についていた女の子たちは、渋々ご馳走様をして抜けていった。
気まずい…ありがとうではあるけど、めちゃくちゃ気まずいこと言うなよ…。

正直、ここからは何を話したか私もあまり覚えてはいない。
ただこの派手髪兄ちゃん、本人は自覚がないのかもだが、
私との空間になった瞬間、驚くほど態度や発言が変わった。

何とは言えないが…会話していて発覚したのだが、
共通の話題が実はあったのです。
例えば、お互いその道の業界に仕事していた。もしくは今もいる。
共通の知り合いもいた。
などなど…

出るわ出るわ共通点。
会話も盛り上がる。

なんだ、ただの天邪鬼フレンドリー野郎だったのか。
それにしても、コミュ力の鬼だな。
お酒が入っているはずなのに、頭の回転が異常に速い。
私自身もコミュ力は高いと言われている部類だったが、
それにしても速すぎる。
今まで接してきたお客さんの中でも、この派手髪兄ちゃんは
群を抜いて頭の回転が速かったです。

余談ですが、このハイテンション&弾丸お喋りタイプの方、
私最後どうなるか知っています。
そう最後、電池切れたかのように突然寝始めるんですよね。
あくまで、傾向の話ですがこのタイプの方、わりといらっしゃいます。
皆さんの身の回りにも、もしこういう方がいらっしゃったら、
まずビニール袋をそばに準備しておきましょう。
様子が少しでもおかしいと感じたら、
すぐに袋を口元に持っていってあげましょう。
そしてすぐお手洗いへ連行…フラフラで立てないはずなので、
どなたかお連れ様が付き添って差し上げると親切かと思います。
ビニール袋は、お店を汚すのは流石に良くないので、
事故対策として1枚持っておくと役に立ちます。

もし何事もなくスヤスヤの場合、
飲み会がお開きになるまでほっといて寝かしてあげましょう。
帰る少し前にタクシー呼んでおいて、知ってる上に用意できる場合は、
目的地の住所、足りそうな金額のお金も用意しておくと吉。

あと!グラスでお水は渡さないように。
この状態までいってると、手元が狂いやすい状態になっているはずなので、
もし落として割ってしまったら怪我する恐れがあります。
必ずペットボトルやプラスチック系のコップなどで渡すと良いかもしれません。

話が大きくそれました、戻します。

私は初めましての方の場合、必ず最初に聞くことがある。

「お名前、伺ってもよろしいですか?」

これは最低限の礼儀でもありますが、
この名前を呼んで差し上げる行為は、
より親密度を深めるために効果的な方法なんです。

ただ、この派手髪兄ちゃんの場合、最後まで名前を聞きませんでした。

なぜなら、前に働いていた歴代のスナックBARのママや社長、先輩たちから、

「表舞台に立っているような人たちは、身分を隠して息抜きしに来ていることがある。絶対名前とか素性を聞いちゃダメだよ」

と、教わっていたのです。

そう、この方実は、私が学生時代によく聴いていた曲を作っていたアーティストさんの1人だったんですよね。会話の途中で気づきました。
私の前途の読み通り、服装髪色自由な会社にも勤めながらではありましたが、
今でもアーティスト活動も並行して現役で続けられていたんです。嬉しかった。
もうすでに引退されていたと思っていましたから。
本当に驚きました。だって当時と容姿全然違うんですもん。
でも、昔の姿と想像して重ねてみたらたしかに少し面影あるかも?

多分あれから3時間くらい延々と2人でお話ししていたのですが、
懐かしくなって何回かお名前呼びそうになりました。
でもプロ意識持たなきゃなと、グッと堪えていました。

ところで、さっきの声のボリュームと態度のデカさはどこ行ったのですか。
ちゃんと会話のキャッチボールしてみたら凄く繊細で、丁寧で、優しい方じゃないですか。
ハッキリ言う時は言うけど、もし自分に否があると感じたら即謝れるし、
何よりありがとうとごめんをきちんと言える。
見た目とのギャップ激しくて驚きました。
これ昼の世界の上司と先輩、後輩たちにも見せたやりたい。
見た目ごく普通でも、意外とこれらはできていない方多いと、私は感じています。
あとはこの派手髪兄ちゃんはそれを全員に徹底してできたら完璧なのに…と、思いました。

しかし、これはおそらくなんですけど…
この派手髪兄ちゃん、一見容姿だけ見るとギョッとするし、
とっつきにくそうだし、話してみても天邪鬼に思われがちなんですが…
実際は人、モノ、コトに対する好き・嫌いの基準が、
かなりしっかりしているうえに言語化までできる頭の持ち主ではないかと思います。
たしかに、今思い返すと私の前についていた女の子たちとは
あまり質の良い会話というか、キャッチボールできていなかったなと感じました。
みんな頑張りすぎて悪酔いしてたもんね…

とはいえ、私は悪酔いこそはしていなかったものの、
たまたま共通の話題があったから、
最後まで話しやすかったというだけかもしれません。
もしかしたら、お互いの見た目も好み的な意味で、
どこかで何か作用しているかもわかりません。

何より、知っている人だったというのも否定できません。
なんとかフィルターってやつです。名前は忘れました。

でも、人は見た目によらない場合もあるなと今回この出会いで強く感じました。
人と関わる上で、この人見た目ヤバい…苦手かも…少し話してみてもやっぱ合わなさそう…と思う場面って、
生きていく上でどうしても避けられないことがほとんどだし、
いっぱいあると思います。
でも、根気よく話してみたら実は…?ってパターンも結構あると思います。

私はこの派手髪兄ちゃんとの出会い以来、先入観を取っ払って、
なるべく苦手意識を持たないように、
まずは、どんな人でも笑顔だけは絶やさず、
会話のキャッチボールをしっかり行いながらその人の良いところやツボを探す、
粘り強さを心がけるようになりました。

この話の本質としては、見た目だけに惑わされない。第一印象で決めない。臆しない。

とはいえ、それでもし合わないならそれはそれで仕方ない。
だって合わないんだもん。しょうがない。そこは無理する必要もない。

私はこの派手髪兄ちゃんのことを昔から知ってはいますが、
今のほうがずっと魅力的だと思うし、話してみてもっと大好きになりました。

そういえば、この話から今にいたるまで数ヶ月経ってますが、
あれから1回私がお休みの日にまたお見えになったそうです。
私のことまだ覚えててくれていたそうで、また会いにきてくれたようです。
その場にいなくて大変申し訳ない、残念。
ただ、また来るね!だそうです。
店長から聞いた話によると、あの時私が名前と素性聞いてきたら全然答えるつもりだったそうですが、
気を遣ってくれたのか最後まで聞いてこなかったから
凄い良い子だと思ったって仰っていたそうです。
なんだバレていたのか。それは失敬。

もしまたお見えになったら、今度こそありがとうを伝えたいですし、
お名前改めて呼んで差し上げたいですね。

派手髪兄ちゃん、素敵な考え方をどうもありがとう。
私もまた会いたいので、ぜひお待ちしております。

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