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【Zatsu】暴力歯医者

ちょっとまえから、右上の歯が痛いんです。
これは知覚過敏なんだ、虫歯じゃないんだ、と自分に言い聞かせてきたんですけど、いいかげん嘘をつくのも限界になりつつあるんで、近いうちに近所の歯医者をさがして行こうと思っています。

でもさ、嫌いなんだよね、歯医者。もちろん程度の差はあれ、どんな治療も痛いわけだから好きな人もいないと思うけど、サディスティックな先生を何人か経験すると、どうしても警戒心が先に立つんです。
これまでに印象に残っている歯科医は3人。

1.オフィス街の三塚博(O先生)
患者に寄り添うスタンスで近所では圧倒的な支持を得ている。その優しい笑顔は三塚博をほうふつとさせる(知らない人は無視していただいて結構です)。新宿にある小ぎれいなクリニック。歯科衛生士のYさんがかわいい。会社の同僚にこのクリニックを紹介したところハマってしまい、歯科衛生士のYさん目当てに通い詰めて、いろんなデンタルグッズを定価で買わされていました。
「アンタ、えらいとこ紹介してくれたな!」
そう言いながらも、うれしそうな笑顔でおれに買ったものを見せてくれる彼の姿が印象的でした。
たしかに小悪魔も生息しているんだけど、先生の腕は確かなので、おれにとっては非常に良い歯医者さんでした。約1名、被害者が出ただけです。

2.熊殺しの柔道家(H先生)
鹿児島にあるクリニック。昨年まで仕事で鹿児島にいたんだけど、その時にお世話になっていた歯医者さん。
いまGoogleMapで調べたら評価1でした。
この先生、見た目がいかつくて身体もデカい(まさに巨躯)。口調はとても穏やかなので、電話予約してきた初診患者は訪問時にちょっと引く。だって、細身の青年の優しい笑顔を期待していったら、アラスカを生き抜いてきた生粋の柔道家が立っているわけだからね。もう組みつかれたらアウトよ。
この先生、「じゃぁ、いきまーすよぉー」みたいにポップに語り掛けてくるんだけど、とにかく荒い。なにしろパワーが半端じゃないんだ。生い立ちがあんなかんじなので(あくまで想像です)、リミッターはずれてんだろうな。口のなかが血だらけになるんだよ。でも、仕事は速い。治療そのものはあまり時間をかけずにさっと終わる。果たしてそれがいいことなのかどうか、もう何が正解なのかわかんないけど、苦しみの時間は短くてすむ。それが救いかな。評価1だけど。

3.黒ギルド界の雄(Y先生)
かつて住んでいた北東京にある歯科医院。
それまでお世話になっていたクリニックが建屋をリフォームするっていうんでしばらく休診になってしまった。そんなときに限って虫歯になるんだよね。
近場でほかの歯医者をさがしたら……このY先生の歯科医院があった。正直いままで行ったことなかったし、口コミもなかったので不安だったが、なにしろ近所なので軽い気持ちで訪れたんです。
不愛想な受付をクリアし、待合室で少年チャンピオンの「これいつのよ」というコミックをパラパラめくる。靴を見るかぎりオレ以外に患者はいないはずなのにたっぷりと待たされたあと治療室へよばれた。
治療台に座っていると院長がゆっくりと登場。風貌はケーシー高峰そのもの(わからない人は読み飛ばしていただいて結構です)。
痛いのは親知らずだったんだけど、診察もそこそこに「これは……抜くしかないね」ということになり、麻酔注射へ。しかもヘタなんだ、これが。
先生の風貌からしておれは疑心暗鬼なわけだけど(偏見です)、それを助長するかのような手際の悪さ。麻酔も全然きいてこない。
いっこうに麻酔の効果が現れないことに業を煮やした先生は、そのまま治療を始めたんです(お前がしびれを切らしてどうするんだ! とうまいことを)。
先生、まだ効いていないです、ちょっと痛いへんへ、ははひいへはいへふ、ほっほいはい」当然そう言いますわね。
そうしたら、ケーシーはこう言い放ったんだよ。
「大丈夫、痛いのは抜けるまでのあいだだけ。抜けたら痛くないからw」

そのための麻酔ダロ!

人間えらいもんで、寒気に襲われたあと、痛みは感じなかったですね。
完全に脳みそからなんか分泌されてただろ。
いまGoogleMapみたら、潰れてましたね。ええ。
これが市場原理ってやつかな。


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