選手の戦術意識とプレゼン能力を飛躍的に上げるトレーニング『ショー・アンド・テル』(サッカー指導+アドラー心理学)
こんばんは、ジョゼ佐藤です。
今回は選手の戦術意識を飛躍的に上げるためのトレーニングの話です。
なんだかやっとサッカー指導のnoteらしくなりましたが、ちゃんとアドラー心理学の要素も盛り込んでいます。
それではよろしくお願いいたします。
サッカーは団体行動(集団活動)が常に行われるスポーツなので、そこには選手間のコミュニケーション、指導者と選手間のコミュニケーションというものが存在します。
そこで、選手が他の選手と円滑円満なコミュニケーションを行うことがサッカーのプレーの成功率を上げる秘訣の一つとなりますが、その選手のコミュニケーション能力を発揮するためには、
❶他の選手の意見を聞いたり様子を伺うことで他の選手のことを理解する
❷自己分析を行い、自己を客観視する
❸自分の考えを主張し、他の選手へ自分の考えを伝える
この3つが基本的な能力として求められていると私は考えます。
今回は、❸の「自分の考えを主張し、他の選手へ自分の考えを伝える」ということに特化させてお話しいたします。
プレゼンテーション能力とは?
それはシンプルに「自分が頭の中で考えていることを言葉にして他の人にもわかりやすく明確に伝えること」です。
【ところが、です】
このようなコミュニケーション能力は、日本の学校教育においては、大人になるにつれて自然と身に付くものとみなされてきました。
するとどうでしょう?
子どものコミュニケーション能力の習得環境や、コミュニケーション能力のトレーニング状況が《千差万別》な状況になっているので、子どもそれぞれのコミュニケーション能力において非常に《バラつき》が起きるという結果になりました。
子どもたちの様子をみていても、性格や価値観がそれぞれ異なるというのは『多様性』という意味では良いことなのですが、コミュニケーション能力のバラつきは集団活動や団体行動においてはコミュニケーション不全、コミュニケーションの歪み(意思の疎通ができない)といった様々な障害が起きやすくなるという問題が発生することにもなるのです。
【しかしです】
この、『プレゼンテーション能力』。
これは、子どもの頃から少しずつ意図的にトレーニングをおこなうことによって身に付けていくことが可能になるのです。スポーツ指導者の立場からみたら、意図的なトレーニングによって身に付けることができるのならば、全ての選手たちにもっていてほしい能力なのではないでしょうか。
“コミュニケーション能力の向上=サッカーの競技能力の向上”
ということであれば、やっておいても損は無いことなのではないでしょうか。
それでは、一体どのようなトレーニングを行えば子どもにもプレゼンテーション能力が身に付いていくのでしょうか。
その方法の一つに『ショー・アンド・テル』というものがあります。これは、アメリカの小学校ではディベートやプレゼンテーションの授業が日常的におこなわれているのですが、その授業の中で実際に使われているトレーニングになります。
例えば、生徒それぞれに「自分の好きな本」や「自分の趣味」、「自分が幼少期から大切にしているもの」、「自分の親友」といったテーマに沿った対象物(もしくは人)を自宅から持ってきてもらい(人の場合は紹介するという形式で)、それを他の生徒の前で披露し、
“僕は◎◎だから○○というものが好きだ”
“私の親友、◎◎さんは○○というところが素晴らしくて、△△が得意なのですごい人だと思います!”
などとその事(人)の良さやメリットなどを説明するのです。
これがアメリカの小学校の授業でおこなわれている一般的な『ショー・アンド・テル』になりますが、この「自分の好きなものの良さや魅力を熱意でもって説明する」というプレゼンの様子はどこかで見たことはありませんか?
私はテレビでネットで何度も観たことがありますが、あなたもどこかで観たことはありませんか(??)。
【ここで話題を少し変えさせていただきます】
貴方が『アメリカ人のスピーチ』としてイメージできる方は、どんな方を想像しますか?
私がパッと思いつくのは、やはり故スティーブ・ジョブズ氏のアップル製品のプレゼンテーションの様子です。ジョブズ氏ご自身の思い描く夢や理想に満ち溢れたアップル社のキラキラした商品を、情熱や熱意をもってジェスチャーをまじえて雄弁に語る勇ましい姿は、いかにも『ザ・アメリカ人のスピーチ』というイメージにピッタリなお姿ではないでしょうか。
そうです!
この、スティーブ・ジョブズ氏がおこなってきたアップル製品のプレゼンテーションの様子こそが、アメリカの人が一般的に思い描く理想的なプレゼンテーションの仕方なのです。
一般的にアメリカ人の方にプレゼン力やスピーチ力があるのは、このようなトレーニング(ショー・アンド・テル)を日常的に学校の授業でおこなっているからだということが考えられます。
さすがですね、アメリカ……
自分の夢や理想ばかりを追い求めることは子どもたちへのプレッシャーになってしまうかもしれませんが、これからの未来への道が開かれている子どもたちの可能性を信じて、私は子どもたちができるだけ子ども自身の夢や理想に近づけるよう、協力・応援のための努力をしていきたいものだと考えます。
話をもどしますと、
結局のところ、コミュニケーション能力のできる・できないは、子どもの頃からの経験によって得意・不得意を分けているということなのです。
であるならば!
日本の子どもたちにもこの『ショー・アンド・テル』を積極的に行い、プレゼンテーション能力を上げることが可能なのではないでしょうか。
では、自宅で簡単にできるトレーニングは、どのようなものがあるのでしょうか。
その方法は実に簡単なものです。
例えばですが、家族で一緒に観たテレビや映画などを観終わったあとに、簡単な感想を述べてもらうのです。
【ただしこのときに注意が必要です】
このトレーニングで大事なことは、子どもが自分の思ったことを自分の好きに表現することが大事です。
なので子どもがどんなコメントをしたとしても、「いいやそうじゃないよ」などと子どもを否定したり、「私はこう思うわよ」などと大人の感想を押し付けることを絶対にしないことです。
子どもの主張の内容を一切否定せず、咎めず、全てを受け入れていれば、子どもは自分を表現することに自信をもっていきます。
また、子どもが「おこづかいが欲しい」「◎◎を買いたい」などと大人に何かを求めてきた際にも、
“あなたがそれをどれくらい欲しいのか、説得(プレゼン)をしてみてくれないかな?”
などと子どもが説得(プレゼン)を行う機会を設けてみてはいかがでしょうか。
※繰り返し申し上げますが、コミュニケーション能力のできる・できないの違いは、トレーニングをおこなったか・おこなっていないかの違いなだけです。毎日少しずつトレーニングをすることで、子どもは少しずつその能力を習得していきます。
また、このプレゼンテーション能力向上のためのトレーニング、ショー・アンド・テルは、サッカー指導の現場でも活用ができます。
サッカー指導の現場でこのトレーニングをおこなった場合は、
❶プレゼンテーション能力が高まる
❷選手の戦術意識が高まる
という、大きく分けて2つのメリットが考えられます。しかし残念なことに、この2つの能力は、サッカーの練習の場では落ち着いたところで話す場所でもないかぎりは身に付けることができません。
また、このトレーニングは、外で練習時に行うというよりは授業や座学的要素が強いので、これは是非、チームのミーティングや合宿の中での話し合い、雨の日に屋内トレーニングを行う場合などにやってみるといいかと思います。
では、屋内で行う戦術意識を高めるためのショー・アンド・テルはどのようにおこなえばよいのでしょうか。
それでは、実際に私が高校の部活動でおこなった『戦術意識を高めるためのショー・アンド・テル』をご紹介します。
【トレーニングの一例】
参加人数:30名(5名×6グループ)
時間:60分(雨天時の屋内トレーニング)
会場:学校内の教室
【選手への提案事項】
それでは皆さんに、『ショー・アンド・テル』というプレゼンテーション能力向上のためのトレーニングをやってもらいます。
テーマは「あなたの好きなサッカーのプレー」と「あなたがやりたいサッカーの戦術」です。この2つのテーマを各自が家に帰ってから時間を設けて考えてきてください。今から2週間後のチームのミーティングのときに発表会をやってもらいます。
大事なポイントは、
⓵自分がなぜそのプレーを推すのか?(その理由や根拠)
⓶自分がその推しのプレーを実現させるために、どんな練習をおこなったらいいか?
⓷その練習をおこなうには、何を課題にしたらいいのか?
必ずその⓷点を《論理的思考》でもって主張できるようにしてください(文末注釈参照)。また、上記⓷点にさらに考えることができる選手は、
⓸そのための解決策or改善策
も考えるようにしてみてください。これは物事を《論理的思考》で考えて主張をするための大事な考え方になります。
(論理的思考については文末注釈をご参照ください)
それでは皆さん、がんばって考えてきてください。
【2週間後…】
それでは皆さん、5名1組の6グループに分かれて、各グループで一人につき10分、それぞれが考えてきたテーマをグループ内で発表してください。
また、選手一人一人が発表をしている間は、他の選手は自分の意見を挟んだり、批評などはしないでひたすら耳を傾けてください。
では始めます!
合計トレーニング時間:50分
【まとめ(トレーニングの終了)】
では時間です。
各自がテーマを発表することで、皆さんの中により一層の『戦術観』や『練習に対する意識』、『自己主張をする能力』が増えることでそれぞれの意識や考え方が必ず高まっていることと思います。
また、このような自己主張を皆の前で行うことで、選手各自に少しずつ自己主張の表現力に広がりが持てるようになっていると思います。そして、各自が思い描く理想のサッカーの戦術や練習方法を発表することで、各自の戦術や練習に対する考え方や意識が頭の中で整理されていることだと思います。
ここで大事なことは、「誰の主張が正解!」などと主張の正解不正解を求めることではなく、選手各自が独自のストーリーをもって自己主張をし、サッカーの戦術意識をもつことです。選手各自が自己主張をし、個々の意識が高まることが結果的にチーム全体の『チーム力』の向上につながり、選手個人だけでなく、チーム全体の能力の向上につながると思います。
それと、皆の前で自己主張をすることは、自分に自信を持てる(上げる)きっかけにもなったことでしょう。このことも、自分自身のサッカー能力の向上に必ず役に立っていると思います。
それではおつかれ様でした。
またこれからも皆で一緒にがんばってまいりましょう!
という具合です。
さて、ここまで私が述べた、『ショー・アンド・テル』のトレーニングはいかがだったでしょうか。
近年では、大学の入学試験や就職試験の試験の項目の中に、
◎面接
◎小論文
◎集団面接(ディベートなどを含む)
◎プレゼンテーション
といった、『自己主張』(ならびに相手の意見を聞いて理解するということ)を行う試験が増えている傾向にあります。また、学生の学力を測る基準の中にも、知識や技能だけでなく、
◎思考力
◎表現力
を重視する傾向にもあります。
積極的に自己主張を行う能力、自己を表現する能力は、子どもたちが厳しい世の中を生き抜いていくための強い武器にもなるのです。
こういった能力を子どもの頃から少しずつ向上できるように、指導者や親御さんの皆さんは、是非とも子どもたちと向き合ってトレーニングに励まれてみてはいかがでしょうか。
このたびはご清聴を誠にありがとうございました。またこれからもよろしくお願いいたします。
以上
注釈:
【意見をその都度、論理的思考(の基本)で話させる】
❶結論から話す「私は◎◎だと思います」
❷根拠を説明する「なぜなら○○だからです」
❸その解決策や改善点をプレゼンする「そのためには△△が必要です」
どんなプレゼンや面接でも必ず求められることだから、学生にも必須の能力だと思います。
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