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50年の時の流れを感じさせる『2022年の連合赤軍』

旧知の深笛義也さんの書いた本である。
連合赤軍に関する本はこれまでにもさんざん読んで、その都度いやな思いをしてきたので、「読まなきゃなあ」と思いながらも読んでなかったのだが、先日、著者の深笛さんに会って、やっぱり読んでおこう、と思って読んだ。
「この本、書いて、人生観変わった?」という私の問いかけに、深笛さんはこう答えた。
「あー、変わった。人間ってすごいと思った。50年経つと、なんでも話せるようになるんだよ」
この時は、え、どういうこと?と思ったが、この本を読んで、彼の言わんとしたことがわかった。

この本には四人の連赤兵士が登場し、それぞれ深笛さんのインタビューに応えているのだが、言葉に詰まったり、しばし呆然とする、とか、そういった様子が全くない。最近、見た映画の話でもするかのように、気負いも何もなくサラッと話している。あれだけのことをやったのに悲惨さが全然ないのだ。重荷を下ろした人間が発する爽快さのようなものすら感じる。これまでの連赤本とはそこが全然違った。

この本には「レッド」の著者、山本直樹も登場するが、当事者が明るく話すようになったのは、この漫画の影響も大きいだろう。若者が連赤に興味を持ったことで、話し甲斐のようなものが芽生えたのかもしれない。

ただ、この本は赤軍派ではなく革命左派が中心なので永田批判がやたらと目立つ。
永田さんの責任は大きい。それはそうだ。しかし、上司の命令だからと言って、はい、わかりましたと同志を殺せるものなのか。
この事件、やはり私には理解できない。

この本のもう一つの特徴は用語解説や年表、関連人物一覧などの資料の充実だ。え、この言葉にも解説がいるの?と驚くほどの充実ぶり。ここまでやらないと今の若者にはわからない、ということなのだろうが、ここにも50年という時の流れを感じる。



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