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夢と支社とハンコのたくさんある会社

私の友人が作った夢のある素敵な会社の話

去年、私の友人Sは、志を同じくする者、数名とKという合同会社を設立した。
本社を代表者の住むC市に置き、それぞれが住む家を支社とした。
「支社がこんなにたくさんあるなんて大企業だ」
「もっと仲間を増やして全国に支社を作ろう」
支社がずらりと並んだ定款を見て、みんな大喜び。全国制覇の夢を語り合った。

が、それから一年が経ち、決算の時期を迎え、全国制覇の夢は悪夢に変わった。
会計士に「支社がずいぶんたくさんありますけど、この場合、本社だけでなく、それぞれの支社にも法人住民税(6万円)がかかります」と言われたのだ。

「名ばかり支社」のために税金を払うのはバカらしい。全国制覇よりも節税の方が重要だ。彼らはそう考えた。夢よりも現実を取ったのだ。

支社のずらりと並んだ定款を変更するために、彼らは法務局に行った。が、「社印が違う」という理由で書類を突き返される。他の社印を押して再度、提出したが、それもダメ。

ここまで話を聞いて、私は「え、どういうこと?」と思った。
「他の社印って何?」
「違う会社の社印を間違えて押したってこと?」

そうではなかった。なんと、彼らは一人一つずつ、それぞれが自分専用の社印を作っていたのだ。つまり、この会社には、一つ一つデザインの違う社印が人数分あったのである。それで、どのハンコが登記上の社印なのかわからなくなっていたのだ。

そんなわけのわからない社印を役所が受け付けるわけがない。
しかし、誰もがみんな自分専用の社印を持っている会社なんて、素敵だなと思った。

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