マガジンのカバー画像

反体制ハードボイルド小説『黒ヘル戦記』

13
『情況』(変革のための総合誌)に掲載された連作小説。 一九八〇年代から九〇年代にかけて、首都のど真ん中にキャンパスを持つ外堀大学はたびたび学園紛争に揺れた。正門にバリケードを築き…
¥1,000
運営しているクリエイター

#ハードボイルド

黒ヘル戦記 第四話 ボクサー(後編)

黒ヘル戦記 第四話 ボクサー(後編)

『情況』2021年冬号に掲載された反体制ハードボイルド小説

外堀大学学生運動の歴史は、白ヘルと黒ヘルの抗争の歴史と言っても過言ではない。
権力との戦いで倒れた者よりも、白と黒の抗争の中で倒れた者の方がはるかに多い。
寺岡修一

 5 ヒュンと風が吹いたかと思ったら、パチーンという音がして、黒のサングラスの男が吹っ飛んだ。
 高野が引っ叩いたのだ。男は尻餅をついて、あわわと口を開けて狼狽えている。

もっとみる
黒ヘル戦記 第四話 ボクサー(前編)

黒ヘル戦記 第四話 ボクサー(前編)

『情況』2020年秋号に掲載された反体制ハードボイルド小説

第四話 ボクサー
1987年9月、白ヘル・マルゲリ派と一触即発の緊張状態にあった黒ヘル団体GKに、高校時代、ボクシングで名を馳せた男が加わった。GKは男の加入を歓迎したが、男は新宿のヤクザとのトラブルを抱えていた。

ボクシングはとても簡単だ。人生の方が遥かに難しい。
フロイド・メイウェザー・ジュニア
(元世界チャンピオン)

 1 学

もっとみる