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語学:リスニングで聞き取れない3つの原因

 外国語を勉強する際の大きな壁の一つが、リスニングだ。

 文字で書かれると大して難しい文章であるわけでもないのに、音声で聞くとまるで聞き取れない――そういう経験をしたことのある読者は少なくないだろう。

 リスニングで聞き取れない原因は、大きく分けて以下の3つがある。

1.音と文字の不一致:文字情報と音声が頭の中で一致していない。

2.速さの問題:頭の中の情報処理が音声スピードに追い付かない。

3.語彙力の問題:音声で流れる単語をそもそも知らない。

 この中で一番大事なのは「1.音と文字の不一致」という原因だ。これをまず解決しなければ、いくら語彙力を上げたり、音声スピードの遅い教材を使用しても、リスニング力の改善は見えにくいからだ。

 それでは、項目ごとに原因と対策を見ていこう。

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1.すでに知っている単語の綴りから受けるイメージを音のイメ―ジと結び付けよう

 「語学は音からではなく文字から」という人に多い壁だと思う(僕も文字が好きな方なのこちらに当てはまる)。専ら新聞や書籍の読解にだけ外国語を必要としている場合には、この問題はそこまで表面化しない。但し、いざ自分が話したり、相手の話していることを聞く場面になると、高い読解力や語彙力を持っているにもかかわらず、全く言っていることが通じなかったり、相手の話していることが聞き取れなかったりする。

 こんな時は、むやみにニュースや、リスニング試験用の教材を聞かないことをお勧めする。たくさん聞いても余計にモチベーションが下がるだけだ。

(1)大事なのは、初級の教材などの一番初めのページにある、発音の規則を、もう一度見返し、単語例の発音をCDでよく聞いてみることだ。まずは、文字で書かれた単語が、どのような音になって発音されるかを、もう一度確認し、目で見た情報と音で聞く情報が一緒になるよう努める。自分の先入観は、思っているよりも発音の誤解に影響している。

 「文字情報≠音声情報」の最たるものはフランス語だろう(フランス語はスペルと音声に一定の規則があるので、これは厳密には正しくはないのだが)。vin(ワイン)とvingt(20)が同じ発音だったり、cinq(5)とcent(100)の発音はどう違うのかだったりは、音を聞いてみるとよく分かるし、この類似点や相違点は、スペルを眺めるだけでは実感できない。

 こうやって、少しずつ、文字情報と音声情報の不一致を改善していこう。

(2)この作業では、余力があれば発音記号を勉強するのも良い。「余力があれば」と言ったのは、自分の耳で聞いた音に集中した方が良いからだ。だが、発音記号は、音声情報を文字に落として見える形にしているので、違うスペルなのに同じ発音であるものを体系化したりするのに役に立つ。

(3)更に、「ネイティブの癖」にも注意しよう。話される言葉は必ずしも文字情報と一致していないこともあるだけでなく、そもそも一人ひとりの発音は少しずつ異なっている。その中で、ネイティブの中で、「ここまでなら許容できる」という発音の範囲というのがあり、これは必ずしも単語の綴りや基本的な発音規則に合致していない場合がある

 僕の話をすると、ドイツ語を2年習ってから初めて会話練習を集中的に始めたとき、ドイツ人の先生の使う「ファシーネ」という言葉がピンと来なかった。よくよく観察していると、しょっちゅう使うし、意味的にも「様々な」と言うような、そこまで難しそうな単語ではないのに、Fで始まる基礎単語で僕が思い当たるものは無かった。何日かして、ようやくその単語が「verschiedene」であることが分かった。「フェアシーデネ」という文字からのイメージでは、「ファシーネ」にはたどり着けなかった。

 それは非ネイティブの私たちにとっては納得がいかないこともあるかもしれないが、「こういう発音ならネイティブは理解する」と割り切って整理していこう。

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2.読解スピードを上げて、脳内の情報処理速度を高めよう

 1つ目の原因は、いわば「入口の問題」で、これを解決できれば、音声情報はノイズなしに頭に入ってくるようになる。次は情報処理速度だ。

 この情報処理のスピードを高めるには、音声教材を聞き続けるよりも、文章を読んで読解スピードを高めることをお勧めする

 経験上、聴解力が読解力を上回ることはあまりない(これは、語学学習のスタイルが、未だに教科書を使った文字情報を中心としているからかもしれない)。

 しかも、読解の場合は、単語の情報がスペルというちゃんと目に見える形でストレートに頭に入ってくるが、リスニングの場合は、発音の知識が不十分だと、単語の情報が正しく入って来ない可能性もある。

 だから、リスニング力を高める場合には、一度リスニング用教材は脇に置いて、文章を読もう。その際、音読も忘れないこと。自分で文章を読んでみて、よどみなく音読できるもの、そして二度読み返さなくても意味が分かるものが、自分が聞いて理解できる最高のレベルの文章だ。

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3.語彙力強化は、リスニングの悩みでは一番簡単に解決可能

 最後に3つ目の「語彙力の問題」だが、これがリスニングでつまずいている主要因であるとするならば、むしろ安心してほしい

「文字情報と音声情報を正しく一致させる能力」と、「音声スピードに情報処理を間に合わせる能力」は、習熟まである程度の時間が必要「技術」だが、語彙力の増強は単語帳一冊から始められる「知識」の問題だからだ。

 本稿は単語の覚え方の記事ではないので詳細は割愛するが、語彙力の増強で大事なのは、忘れることを恐れないこと。「見たことがある」ということだけをチェックしておいて、後は忘れるままに任せて、何度もその単語に出会ったら、その都度何度も覚えなおせばいい。出会う可能性が少ない単語は、そもそも覚える必要がない場合が多いのだ。

 以上のとおり、リスニングにつまずいたときは、上記の3つが原因であることが多い。それも、1つだけが原因というよりも、3つ全ての原因が、強弱の差こそはあれ絡み合っているときが多い。個人的には、まず1番目の原因から対処することをお勧めする。これだけでもかなりリスニング力が改善されることに気づくと思う。






 




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