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ファクトリー探訪(織物) : 株式会社日本ホームスパン_岩手県

株式会社日本ホームスパン

会社住所:〒028-0114 岩手県花巻市東和町土沢1区89−2
ジャンル:テキスタイル

http://www.homespun.co.jp/

※住所などの情報は、Googleの掲載情報から引用しています。

代々伝わる岩手県のテキスタイル「ホームスパン」

ホームスパンとは羊毛を手で紡ぎ、手で織ることを定義とした、岩手県に永く伝わる織物です。
明治から大正にかけて起こった世界的な戦争を機に、これまでイギリスから輸入していた羊毛の生産を国策として始めたことが、ホームスパンというモノづくりの起源とのこと。
寒冷地である北海道や東北他県が終戦後に撤退していったのに対して、岩手で根強く文化が残っているのは、県の継続的な支援と、自分達の生活に寄り添ったモノづくりをしてきた岩手県の人たちの気質が合っていたと言われています。
時代の移り変わりと共に、昨今では羊毛だけでなく、綿や麻、化学繊維など様々な糸を組み合わせて表現の幅を広げています。

手織りの風合いを量産織機で表現する唯一無二のテキスタイルメーカー

日本ホームスパンで立ち並ぶ多くの生地サンプル。あらゆる手法や材料を組み合わせて無数の表現をされています。時間が限られていた為、見るのに全然時間が足りませんでした。。。

岩手県花巻市にある「株式会社日本ホームスパン」様は、ホームスパン最大の魅力である「人の手の温もりを感じさせる柔らかい風合い」を機械織で表現し、多くの人たちに届けることの出来る唯一無二の会社の一つです。その技術をもって多くのファッションブランドに生地を提供し続けています。

シンプルな平織の布等では、織り機に経糸がピンと張られ、緯糸が経糸間を見えないくらいのスピードで早く走り抜けると同時に力強く打ち込まれる様子をよく見るのに対し、ウールだけでなく綿や麻、化繊など様々な特徴の糸を組み合わせる日本ホームスパンの布は、糸の持つ風合いを100%生かすために、織機に縦糸を張り、巻き込むテンションと緯糸の打ち込みの強さと時間を自由自在に調整し、手織りに近い状態にして織られ続けます。

実際に見させて頂いた布には、経糸と緯糸の間には程よく隙間があり、それが糸の持つ柔らさを殺していない証拠でした。
機械によって可能となる品質の継続性をもって、手織りでは難しい中量生産を可能にしているのです。
また織機1台に対して常時一人つける体制をとられており、機械といえど機械任せにせず、立ち会う一人一人がが織り上げているかのように布に向かい合っています。

織るのは機械ですが、基本セッティングは人の手によるものです。(写真は筬通し)
これはいまだにどの織メーカーでも変わらないと思います。
僕も学生の時にやってましたが、1日やそっとでは終わる作業ではないのです。
何より通し間違えると間違った織物が上がってしまうので、職人の力はとても大事です。
1台につき1人態勢をとることによって、1反1反大切に管理されながら織りあがっていきます。
複数種の糸を組み合わせはホームスパン及び、日本ホームスパン様の生地の特徴です。糸一つひとつが性質(撚りや太さ伸縮)が違うので、試作時の検証がかなり大切


オリジナルのテキスタイルを産むための秘密基地

社内には日本から海外製の羊毛の原料。そして様々な種類の糸が奥の倉庫に整理保存されており(羊毛の原料時点で手触りが全然違くて面白い)、
染料のビーカー出しから染色の釜。羊毛ならではの設備であるカーディングの機械。更には紡績の機械で一からオリジナルの糸を開発した後に、20cm角程度のサンプルを手織り機で作成します。
手織りでの風合いを織の設計図(組織図)に起こし、開発した糸も尾州等の協力会社にレシピを持って発注することで、全ての工程を自分たちの知識と経験に基づいて機械織機に落とし込むことができ。万が一トラブルが起きても問題解決の糸口を直ぐに見つけることが可能になります。

試作用の織機。数多くのサンプルを制作するため、決められた最低限のサイズで作成します。ここで織られたものを基に、量産へのデータ出しをされています。
試作を作るために必要な機材を取り揃え、日本及び世界全国から取り寄せられた羊毛を自社で糸に整形して自社内でオリジナルの織物が作り上げられます。
各地から集められた羊毛や紡績した糸などを適切に管理されています。
試作や量産での閃きを産むための大事な場所。
羊毛の状態では強度が弱いので、自社で撚りを入れていきます。


B品ゼロを目指して

当たり前ですが、織り上げた生地は容易く修正が出来るものではありません。織り上げた生地はどんなに多い生産数であっても、必ず全反全量検品を行われています。それは確実にお客様に正しい製品を届けること。検品にも多い人数をあてることで見落としを減らし、B品ゼロを常に目指されています。
それを徹底しているからこそ、依頼側も安心して何度も発注することが出来るのだと思います。

社内に検品を行うためのスペースを広く設けられています。原反も重いですから常時3名以上の人員で丁寧に検品されています。検品は相手の信頼関係の上でも非常に大切な業務です。

今回訪問してみて何より、専務の久範さんが作りの流れを楽しく説明してくれた姿から、仕事ではあれど作りたいものを作り上げ、モノづくりを純粋に楽しんでいるを感じることができ、それは父であり社長の完之さんから久範さんへと受け継がれ、その向き合いが長きに渡りパリのメゾンや国内のデザイナーにこぞって頼られる何よりの理由なのだろうと感じることが出来ました。

盛岡には「日本ホームスパン」の直営店があり、大変素敵な布が1枚1枚綺麗
に畳まれ置かれています。

ホームスパンハウス盛岡店
〒020-0063 岩手県盛岡市材木町3−13

布好きであれば観光と合わせて是非一度足を運んでみて頂きたいお店です。
また直営店の前にあります、光原社には必ず合わせてお立ち寄りください!
素敵な器や生地。他雑貨などが立ち並び、中には喫茶店もあります。違った世界観を感じることが出来るので!

それではまたっ!

訪問日:2022.8.2
2023.1.28 じょうろ 秋田 匠

WEB:https://www.jorro.net
Instagram:https://www.instagram.com/jorro_planning/

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