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#34 「必要な…人?」

10分くらいだっただろうか。
カラオケBOX本来の使い方としては、
不満が出そうなくらい…


モニターのCMは煌々とカラフルに光を発していた。

二人だけの時間。
歌っている時からそうなのだが、
個室というのは、
相手との距離を縮める。

居酒屋の個室。
それより、
密室を感じる。

モニターの音量も絞り、
二人は話した。

「あたしね。一つの事に集中してしまうと、
それしか見えなくなってしまうの」
「素敵な事だよ。誰にでもできる事じゃないよ」
「でも、それでいろんな事を失ったんだよ」
彼女は、この楽しい雰囲気に水をさすような想いを申し訳なさそうに話し始めた。
「でも、一つ一つ丁寧にやろうっていう姿勢は、素敵な事だと思うよ」

お酒が入っている中で、
俺は、飲んでいても冷静に伺えてしまう。
タチが悪い。
そして、彼女も自分の行動については覚えてると、
前に話してくれたらから、
お互いタチが悪い。

自分の行動には責任を。

彼女は、トーンを低くして言う。
「怖いの。
自分が1つしかできないことに。
周りにも気を使われて…さ。
でも、変われないの。
ゆーたといて、今までにないくらい楽しくて、
救われているの
ありがとう」
「そんな改まらなくてもいいよ。
俺は、それ以上に恵に救われてる。
あの時、恵に出会わなかったら、
俺は、もっと深刻になっていたと思う。
すること全てに嫌悪感で生活していたと思う。
恵が、俺のモノクロの景色を変えてくれた。」
「何色?」
「今は、全てのモノにちゃんと色が含まれてるんだ」

彼女は涙を流していた。

「私を必要としてくれる人がいるなんて思わなかった」
「いやいや、必要とされてるでしょーよ?」
「そうじゃなくて…」

俺はずるい。
彼女に、俺の存在を語らせたかった。
言ってもらいたかった。

「私が求めている人が、求めてくれる人だってこと」
いろいろめちゃくちゃだけど、
今の俺には十分な【応え】だった。

「俺の今は恵が作ってくれてるよ
なーにを改まって深刻に言うのさ。」
「だから、怖いの。あたし男性を【100%】信じることが出来ないって言ったでしょ。
それはゆーたも一緒なの。
だけど、それでもあたしの中でゆーたは大きい存在になってるの。」
「俺は、【ちょうど】いいかな?」
「ちょうど良いなんて言葉じゃないの。それはわかって欲しい」
彼女は、お酒の酔いが回ってきているのか、
いつも以上に熱弁だ。

いつもは、ウキウキな感じで、
明るいトーンで良いことや愚痴などを言ってくる。
俺はそれを聞いていた。
同調したり、
違う角度から見たらこうだよね。っとか。

「ゆーたはね、私に丁寧なんだよ。
これもわかって!
うまく伝えられないの。
だけどね、1つ1つにねちゃんと応えてくれる…」
とワインを一口…いや半分くらい飲み干した。

あっけらかんと俺は見ていた。

歌いたくなってきたので、
タブレットに手を伸ばして選曲し始めると

「ねー聞いてるのーー!?」
っといつものトーンに戻って絡んでくるので、
静止するようにキスをした。

彼女は目を瞑り、
しばらくして唇を離した。
瞬間…
俺の膝にまたがり、
なされるがままに、
強く抱きしめられた。

俺の肩で泣いているかのようだったが、
気づかないふりして、
抱き返した。
そしたら、俺が苦しくなるくらい、
抱きしめてくるので、
それに負けないようにしつつ、
頭を撫でた。

今はこうしていたい。

To be next story

(あとがき)
なかなか進展がありませんが、
少しずつ彼女のことを知ってもらえるように描いていますが、
なかなか描写しづらかったりするかと思います。
次は何を歌おうかと考えつつ、
書いていきますねって
2時間勝負なのに何話使ってんねん!
と言うクレームが来そうですが、
もう少しで、このシリーズは終わりますのでお待ちください。

引き続きよろしくお願いいたします!

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