見出し画像

#10−2「余韻→それから」

彼女が帰ってきたところで、
「さ、宴もたけなわということで、お店出るよ。」
「代金は?」
「俺とRYOが、今日はホストだから大丈夫!」
財布を出そうとしていたが、それを引っ込めさせ店を出ることに。

地下のお店から地上に出て先に出て待っていたら、
2人が全然来ないので心配した。

『心配した?』

なんの?

俺が戻ったら彼女とRYOが上がってこようとしていた。

「iPhoneがなくってー」と呂律が回っているようで回っていない口調で報告される。

RYOが自転車を取ってくる間、ファミリーマートの前で待っていた。

目の前の横断歩道を気分良く歩いていたら、彼女が俺のリュックサックの端を『ギュっ』て握って歩いてくれている。

『酔いが回ってフラフラしてるから』かな。と思いつつドキドキしていた。
横断歩道を渡り切って、黄色の視覚障害者の黄色ブロックのところを俺が指差して、
「これに沿ってまっすぐ歩ける?」
「もちろん!見ててくださいねー」
と、歩いて見せるが、左に逸れて行く。
「ほらー!歩けるでしょ!」
RYOと俺が、
「いやいや、歩けてないから(笑)」と同時に突っ込む。
RYOの家の方が御徒町駅方面だったので一緒に向かった。

俺と彼女も御徒町から帰ることに。

RYOに「彼女のヘアースタイルやってやってねー」といい、
彼女も「また、相談させてくださいねー」と言い別れた。

御徒町の改札口を入り、ホームに登るエレベーターで、彼女を前に促した。

彼女が振り返った瞬間。
よろめいた。
彼女を抱えた。

鼻と鼻が付きそうなくらい近い。
何も言わず、彼女の唇に俺の唇を重ねた。

後ろには誰もいない。

登る間の7秒。

唇を重ねていた。
ホームについて手を引いてベンチに座る。酔っ払いが端に座っていた。その反対側に2人は座った。

「キスしたかった。」
「私も…こんな気持ち…あの時以来なかったから。」
あの時というのは彼女のトラウマのことだが…

そんなトラウマがあるってわかっていたのに、俺は抱きしめてキスをした。

3月末から、彼女とたくさんのことを話してきた。
俺も
彼女も
お互いに惹かれていったのだと思った。

「今日、ずっとドキドキしてたのわかりました?」
「俺もしてたよ。腕を回したり、頭ポンポンしたり」
「そう!それがずるい!私のツボたくさん…」
言われる前に俺はまた、彼女の口を唇で抑えた。

終電がなくなっていたのは言うまでもない。

御徒町からの終電は逃していた。

駅のベンチに座って、3人の時には話せなかった想いを彼女と話し始めた。彼女と俺は、そこから見えるきらびやかなネオンを遠くに見つめるように俺は、彼女の目を見ていた。彼女はそれに気づいて目を合わせられないでいた。
「塚越さんは、今までに出会ったことのないタイプの人。何もかも。振る舞い方も考え方も話し方も…」
「俺も早坂さんみたいな女性と出会ったのは初めてだよ。」
「どんな風に?」
彼女は、キラキラした笑顔を向ける。
「可愛くて、強さと弱さを持っていて。お茶目で芯があって、笑顔が素敵で…」
と言いかけたところで口を手で覆われた。

「そんなことないから…でも、嬉しいです…」

口に覆った手をどけて、また唇を寄せる。

唇を離し、左腕で彼女の肩を抱き寄せ左手で頭を撫で、
「評価は、他人がするもんだから。俺は早さ…恵(めぐみ)をそう感じてる。たった2週間で、ちゃんと話ししたのは今日が初めてで、説得力ないかもしれない。けど…」
と言いかけて、口を手で覆われた。
「もう…そんなこと言われたことないから…どんな顔したら良いかわからないよ…ゆうたさん…私のツボすぎ。」

『ゆうたさん』

って呼んでくれたのが嬉しかった。
それから少し長く唇を寄せた…

と、目が外に向いた瞬間…駅員さんがそこに立っていた。
「すみません。もう終電終わってまして…」
「…」
何分前からそこにいたのかわからないくらい、自然と話しかけられる。
動揺せず、落ち着きを装いつつ、
「知らずにすみません。出ますね。」
彼女はキョロキョロさせながら、一緒に立ち、改札口へ向かう。

to be next story...


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?