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医療をどこでも誰でもできるものに。日本がパンクする前に。ジョリーグッドの挑戦とは

創業から10周年となったジョリーグッド。この10年を振り返りつつ、この先に見据える未来について、採用広報チームが代表の上路に話を聞きます。

少子高齢化、医療人材の減少による医療ひっ迫が叫ばれている今日。これからの医療の在り方についての問題提起は、わたしたち誰もが当事者であり、考え参加する必要がある内容でした。ジョリーグッドが挑むチャレンジを解像度高く理解できる内容になっています。また、上路が語るストーリーの端々では、ジョリーグッドのキーワードである「成長・チャレンジ」の根源が見えるインタビューとなりました。


上路 健介(じょうじ けんすけ)

テレビ局、広告会社にて先端テクノロジー事業開発20年。
2011年から単身渡米しロサンゼルスを拠点に、北米、アジア各国で新事業開発を統括。2014年、株式会社ジョリーグッド創業。2015年に高精度VRラボ「GuruVR」を立ち上げ、テレビ業界トップシェアに。
2018年、VR×AI人材育成ソリューションを発表し、2019年には医療教育VR、発達障害向けソーシャルスキルトレーニングVR、介護教育VRを発表し、ヘルスケアビジネスコンテスト、日本e-learningアワードなど多数のアワードを受賞。
2020年、累計22億円の資金調達に成功し、同年には精神疾患向けデジタル治療VR事業(DTx)を発表。2022年、大塚製薬と提携した統合失調症向けソーシャルスキルトレーニングVRサービスをスタート。
現在は海外事業展開にも注力し、北米やタイのトップ大学とヘルスケアVRをグローバルに開発している。映像技術・ITプログラミング・先端テクノロジー事業開発、海外ビジネス、企業経営が専門。


プロとしての矜持を持つことが一番のチャレンジ

——この10年を振り返って、どのような感想を持たれますか?

まずは、一緒にやってきてくれた方々への感謝の気持ちが一番に出てきますね。
私は事業やサービスを創出するアイデア屋でしかなく、どう事業にしていくか、管理するか、運用するかという部分はまったく1人ではできなかった。会社のメンバー、医師の方々には感謝しかないです。

——信頼できる皆さんがいたからこその10年ですね。印象的なチャレンジがあれば教えてください。

医療業界に入り込んでからの、この4、5年はチャレンジの連続でした。医療業界から「ジョリーグッドはプロフェッショナル集団だ」と認識されはじめたあたりです。

医療業界の方々はそれぞれの専門領域のプロであると同時に、我々もテクノロジーを扱うプロです。医師の方々と対等にプロジェクトを推進するチームなのだ、という自覚を持つことを大事にしてきました。

ともすると医師を過剰に神格化して持ち上げてしまうのですが、相手も人間です。壁を作らず、フラットに接し理解し合うスタンスを重要視していました。この自覚を形成することは案外難易度が高く、繰り返しメンバーにも伝え、私自身も水面下で挑み続けてきたことです。

医療はあらゆる人がおこなっていい

——10年の節目を迎え、今後ジョリーグッドが目指すことを教えてください。

この10年で、医療業界と外の関係性、医療業界が持つ真の課題を解決するには何が必要かを考え続けていました。そこで行き当たったのが「医療は病院でおこなうものだ」という固定観念を取っ払うことです。これは医療を受ける側も、提供する側も、両面にとって必要だと考えています。

超高齢化社会の中、労働人口ひいては医療者が減ると同時に医療対象者は増えることが明白です。2025年問題、2040年問題などと謳われているように、このままの医療体制では病院がパンクしてしまいます。

そんな中、コロナ禍でワクチンを打つ医療者が不足した際に、法改正を行い自衛隊が一部を担いましたよね。これはタスクシフトといって、医師が担う業務の一部を、ほかの職種へ移管または共同化することの第一歩です。

パンデミックの不幸中の幸いで、これからの環境に沿った形に法律を変えても最適化していくべきだと、日本どころか全世界が気付きました。

私たちが目指し、提唱するのはまさにこの例のように、病院の中だけで行われてきた医療を、外で、しかもあらゆる人ができるようにしていこう、というものです。

当事者は全国民!「ひらけ、医療。」プロジェクトとは

——2023年11月に発表したプロジェクトが、その活動のひとつということでしょうか。

「ひらけ、医療。」プロジェクトサイト

前述のように、これからの社会では医療対象者と提供者のバランスが崩れて、このままの体制では適切な医療を行き渡らせ続けることは不可能です。誰しもが自分の親、親族、配偶者などの面倒を見る時代もすぐそこです。

——すべての国民にその可能性がある時代ですよね。

そうです、全国民が対象になると思っています。
誰かしらの面倒を見る立場になった人々は、ある程度の応急処置や介護技術、そういったものを学ぶ必要が出てきます。そうすることで在宅医療の幅が広がります。もちろん手術など専門的で急性期となる処置は病院で、予防や回復期は自宅でやる方向に、医療をおこなう場所を広げるイメージです。

我々はこれまで医療機関向けの教育VRや、デジタル治療コンテンツを作り提供してきました。これを病院以外の場所にひらいていきます。まずは、本来は医療行為を行わない救命救急士からVR学習の機会をスタートしています。いずれは企業、自宅、あらゆる場所で実施できる未来を描いています。

「閉じた」医療を明るく身近に!ジョリーグッドだからできた医療のイメージ戦略

背景には、デジタルヘルスの普及と健康に対する関心の高まりがあります。たとえば、ウェアラブルデバイスを使うと歩数や心拍数、血中酸素濃度まで見ることができますよね。自宅では血圧が測れたり、病院に行かなくても見られるデバイスが登場しています。

——そういわれると、私たちの身近な持ち物によって既に医療の入口が開かれていますね。

そうなんです。デジタルデバイスの進化と共に、健康データへのアクセスがとっくに民主化されているということですね。それが一般生活者、つまり医療の外側で起こっている現象です。医療業界がひらく前に、既に外側では自分達から健康データにアクセスしに来ているんです。

——「デジタル×医療×当事者の参加」の、波が来ているわけですね。

更に、ジョリーグッドがここまで医療業界に入り込めたことのひとつの要因には「医療×かっこいい・楽しい」があると思っています。

たとえば学会セミナーでVRを使用すると若者にウケが良い、メディア露出がされやすい、という意見をもらいます。あくまで印象としての「楽しい医療」に見えて、堅苦しい印象を持たれないんです。

——デバイスやテクノロジーの使い方として、ちょっとポップな印象が出ますよね。

私は元々メディアの人間で、楽しむことや、人の目にどういう印象を与えるかを考え抜いてきました。病院の既存のイメージは「堅くてキツい」です。病院だって、おしゃれでかわいい、カッコイイがあってもいい。こういうムードを外から持ち込むことも、実は我々ジョリーグッドに期待されていることです。
もちろん、医療は命に関わる仕事です。シビアで重要な面を壊さないのは大前提ですが。

これまでジョリーグッドは、医療とテクノロジーのハブを務めて、デジタル治療のあり方を切り拓いてきました。しかも親しみやすいブランド戦略を持って、世の中と医療業界を接続する、というムーブメントは、我々しか起こせないのではと考えています。

医療を難しく考えず、みんなでヘルスケアを作ろう

——プロジェクトでは具体的にどんなことを進める予定なのでしょうか。

まず、医療の民主化を推進するためのイメージ戦略の一歩目として、プロモーションを仕掛けました。グラフィックや映像など各アートワークにも出演いただいています。

また、このプロジェクトに同調いただいた医療者の方々を中心に、5月に300名規模のカンファレンスを開催しました。集まった医師でアイデアソンを開き、医療者同士が一緒にサービスを作ったり、コラボレーション、課題を共有する「場」です。
このカンファレンスにも、アーティストやクリエイターに登壇いただきました。医療を活性化させる上で、まったく異なる職種の人が参加してもいいんだよ、というメッセージです。

——医療に参加するのは、家族でも友人知人でも誰でも構わない、という先ほどのお話を象徴する役割がアーティストなのですね。

そうです。医療ってそんなに難しいって考えなくていいんだよ、みんなで作れるヘルスケアもあるっていうことを伝えたく作りました。

しかも医療者と対等に話しながら作っていい、ということも、一般的ではない概念だと思うのですが、偏見による壁を取っ払っていかないと、本当の高齢化社会は乗り切れないのでは、と思いますね。

——当事者である国民全員、社会を巻き込んでいこうとするプロジェクトなのですね。

世界も見据えて良いと思っています。日本は、良くも悪くも高齢化社会の先進事例です。
なので、世界は「日本はこの事態をどう乗り越えるんだ?」と注視しているんですよね。税金を投下して医療者を増やすのはもう現実的ではない。他の産業でも手が足りない状態ですから。でも別に他の産業をしていながら医療行為に参加することができる世界でも良いと思うんです。

これまで我々が作り上げてきた医療教育・デジタル治療コンテンツが一般企業や自宅の中で実施できるようになれば、高齢化社会対策を牽引する日本の好事例として、日本のポジションを上げていくとも考えられます。

——他にも、これから予定されているチャレンジはあるでしょうか?

はい。これから一般消費者向けのサービスを発表する予定です。これは大きなチャレンジのひとつですね。

これまで推進してきたデジタル治療の中でも感じたことなのですが、患者となる人に、自宅で自発的に治療を実行してもらうのは結構難しいです。患者さんは薬がなくなるまで飲み続けてね、と伝えてもかなり悪くならないと飲んでくれないものです。

なので、ヘルスケアを自主的に楽しめるような、ゲーム性のあるサービス展開をしようと企画しています。そう簡単なことではありませんが挑むことに迷いはありません。

様子見ナシ、失敗を恐れず!チャレンジの数だけ人生は楽しい

——次の目標に向けて、何を大事にしていきたいと考えておられますか?

1つは経験値を積むことを大事に、インプットに対して貪欲になることです。そして同じ数だけチャレンジをすること。チャレンジの数だけ人生は楽しくなります。

日本では良くも悪くも慎重な人が多いように思いますが、小さな失敗は気にせずどんどん挑んでいかないと大きな成功も得られません。他人の失敗なんて誰も見ていませんから、気にせず繰り返しチャレンジして、失敗してピポッドして、を忘れずに続けたいです。

「ひらけ、医療。」はまさに何度も医療に飛び込み、失敗したら都度方向修正して、やっと本質までたどり着いて見つけた課題を出発点にしたプロジェクトです。

——数々の失敗が土台にあるプロジェクトなのですね。

私ももう50になり、人生は短いなと本当に思います。今までもスピーディにやってきたつもりですが、様子を見ている暇などない、と思いますね。動けるうちは挑戦しまくりたいです。

だからこそ私が恐れ入るのは、自分が弱気になったり、守りに入ったりしてしまうことです。健康な精神を保つためには、まず健康体であること。チャレンジの土台は健康です。体調管理を基本に、今後も挑み続けていきたいですね。

(取材・文 橋尾 日登美)