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てるてるひめ物語
第二話 マトリクス(子宮)
宇宙の根底、すなわち太母の子宮から精霊たちが青い地球を覗き込んでいる。アルビノーニのアダージョの曲が静かに流れている。 すると男の子の声がする。
「人間は何処から来て、何処に行こうとしているのでしょう」
古代の繁栄した街のイメージが浮かび上がる。
高く積み上げられた塔が街の中央に聳えている。
すると、天から光が放たれ塔を粉々に打ち崩す。
更に、洪水が街全体を呑み尽くす。
一艘の箱舟が波に翻弄されている。
しばらくすると、諸帝国の繁栄と滅亡が繰り返されていく。
やがて現代の繁栄した街のイメージが浮かび上がってくる。
大量破壊兵器の開発によって戦争の惨禍も凄まじいものとなる。
大量生産と大量消費による環境破壊も進み、
北極の氷山の一角が静かに海の中に崩れ落ちていく。
摩天楼が何本も街の中心に聳えていたが、
その内の一本が何の前触れもなく崩れ落ちていく。
しばらくして、母親の声がする。
「人間は昔も今も変わっていないらしい。人間として生まれて来ても、支配欲・金銭欲等の物欲のために、自らの身を滅ぼしてしまっている。人間にとって世界とは、単なる収奪の対象としてしか映らないらしい。当然しっぺ返しがくるのが道理というもの」
男の子の声がする。
「僕たちは一体どうしたらよいのでしょうか、お母さん」
「大丈夫、この宇宙の根底には、そしてあなた達自身の内にも、この全宇宙を生み出し支え続けている私がいつもいるわ。地上の誘惑に惑わされることなく、私が呼びかけている声を耳を澄ましてお聞きなさい。私が導きます」
そう言って詠まれた歌。
「われがみのきはまりしらずひろごりて
なれがゆくてをさしみちびかむ」
更に続けて言う。
「この地球上でも、一人でも多くの人間たちが自らの耳で私の声を聞き取ってくれるようになれば、やがて人間は自らが作り出してきた悪夢から解き放たれるようになるはずです。そのような悪夢は、生命宇宙という大河の表面上に結ばれた、いっときの泡ぶくでしかないもの」
そう言って詠まれた歌。
「るるてんのいのちのかはでむすびあふ
はてなきよくぞあぶくのごとき」
「さあ、勇気と希望を持って行きなさい。あなた達には尊い役目が与えられているのだから」
すると、その呼びかけに応えるかのように、大虚空中に懸かる無数の星々の内、幾つもの星たちがその輝きを一斉に強め出した。
それを見定めて詠まれた歌。
「だいうちゅうはてなきそらにかぎりなく
またたくあこよすめらびのほし」
しばらくすると、その輝きを増した幾つもの光が、尾を引いて地球に流れ込んでゆく。
明け方の海と波の音。天空を臨むと、星が一つ大きく輝く。
第二話 マトリクス おわり
第三話 ときじくの樹
https://note.com/jolly_willet791/n/n3bf60eacf6cd
第四話 てるてるひめ物語
https://note.com/jolly_willet791/n/n1db57ec4c23c
第一話 ニルヴァーナ
https://note.com/jolly_willet791/n/n2d02be59d24e
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