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ライター歴17年、さまざまなウェブメディアや『anan』『婦人画報』などの人気雑誌で執筆してきた江角悠子さんに聞く、フリーランスを生き抜くための発信のヒント

働き方の多様化が進み、フリーランスという選択肢が身近になった昨今。特別な資格やスキルが不要、パソコン一つあれば始められるといった手軽さから、人気職種の一つとなったのが、フリーライターです。

文章が書ければ誰でも「ライター」を名乗れてしまう分、これまで以上に重要になってくるスキルの一つが、選ばれるための「セルフプロモーション力」。

フリーライターを17年間続けてこられ、まさに選ばれ続けてきた江角悠子さんから、ホームページやSNSといったネットマーケティングを軸に、セルフプロモーションの大切さや、すぐに始められる効果的なテクニックについてお聞きしました。

◇発信することで切り拓いてきたライターとしての道

さまざまな人気媒体で執筆してこられ、今ではライティング講師としての顔も持つ江角さん。
ご自身のブログやSNSでの発信が、仕事に繋がったことはこれまで何度もあったそう。「ネットがなかったら生き残れていなかったかもしれません」とも話します。

現在執筆しているWEBサイト「一休コンシェルジュ」でラグジュアリーホテルを紹介するお仕事も、ブログで発信していたことがきっかけになっているのだとか。

『もともと旅行が好きで、泊まったホテルの良かったところを勝手にブログで紹介していたところ、それを見た編集の方から声をかけていただきました。
コツコツ続けていれば、誰かが見ていてくれるものだなと、嬉しかったです』

直接依頼がくる以外にも、江角さんが発信していることを知ったライター仲間がクライアントに紹介してくれたことで、仕事に繋がったケースも。
『洋館が好きだったので、ブログや自分で作ったフリーペーパーにレトロ建築などを紹介する連載を書いていました。それを見た友人が「こんなことを書いている人がいます!」と紹介してくれたことで、雑誌Hanakoで洋館特集のお仕事をいただけたこともあります』

いろいろな記事をストックしておくことで、ある時ふとそのテーマがタイムリーな話題になることもあるのだとか。旬の話題を提案することで、記事が採用されることも。
どんなニュースや出来事をきっかけに、どんなことが注目されているか、常にアンテナを張っておくことが大切なのだそうです。

また、同志社女子大学の教授が江角さんのブログを読んでいたことがきっかけで、非常勤講師としての仕事もスタート。学生に編集技術を教えるという、新しいジャンルへの道も開けたそう。そこで教える楽しさに目覚めたことが、現在主宰する「京都ライター塾」にも繋がったのだとか。

◇「好き」は立派な武器になる

「ライターを始めて4~5年は自分の強みがわからず、依頼のあった仕事を全部やっていた」と話す江角さん。依頼されたことはひと通り書けるけれど、これといった強みがないことが悩みだったのだそう。

そんな江角さんは、ご自身の好きな「京都」や「洋館」といったジャンルをどのように確立されていったのでしょうか。

「趣味でブログを書き続けるうちに、何を書いている時が一番楽しいか、だんだんわかってきたんです」と江角さん。
「ジャンルを絞らずいろいろなもの、ことについて書いているうちに、洋館について書いているときがやけに楽しくて、無意識にそのテーマで書いてることが多いことに気が付きました」

仕事のプロフィールを書く際にも、どんなことをアピールすべきか伺うと、「得意じゃなくても好きなこと、興味のあることを書けば良いと思う」と即答。
まずは自分が好きなこと、興味関心のあることから発信すれば良いのだそう。
「わたしも洋館が特に得意だとは思っていません、すごく好きですけど」あっけらかんと話す江角さん。

『わたしはライターさんにお仕事を依頼する側になることもありますが、たくさんいるライターさんの中から、依頼する場合、せっかくならそのジャンルが好きな人に書いてもらいたいと考えています。好きなジャンルなら、多少の知識はあると思いますし、学ぼうとする熱意や意欲もあると思うので』

◇江角さん流、ネットメディアの活用術

現在、ホームページやSNSなど複数のネットメディアで発信されている江角さん。どのように使い分けているのでしょうか。

『ホームページはたとえるならば、オンライン上のわたしのお家だと思っています。なので、他のSNSは、そのお家に遊びに来てもらうための案内、チラシを撒いているという感覚です。
XやFacebookで執筆した記事をシェアしたり、Instagramで京都での暮らしの様子などをアップしたり。
SNSをきっかけに知ってもらって、最終的にホームページを見てもらえれば今までの仕事実績がまとまっている、江角悠子が何をしている人なのか伝わるように、という流れをイメージしています』

ライターという仕事をする他に、2人のお子さんを育てる母でもある江角さん。忙しい日々の中で、どのように毎日発信を続けているのでしょうか。

『複数のSNSを活用しているとはいえ、ほとんどはメインで書いているメルマガの文章を応用しているだけなんです。一部を抜粋したり、写真を付けて見せ方を変えたり。媒体に合わせて見せ方を変えて発信しているだけなので、実際はそんなに作業が大変ということもないんです』

仕事に関することだけでなく、休日にお子さんと過ごされる様子や、ダンス、ウォーキングといったプライベートな部分もオープンにされている江角さん。日々のできごとを発信していくにあたり、どのようなことを意識されているのでしょうか。

『誰が見てくれているかわからないので、悪口は書かないようにしています。でも、ネガティブなことを面白く変換して書くのはアリだと思います!
村井理子さんという翻訳家の方のXがすごく面白くて。普通なら愚痴になってしまいそうな内容を、ポジティブに変換する技術が一流なんです(笑)。
「魅力を見つけて紹介する」というのがライター本来の仕事。どんなことでも良い面を探してポジティブに変換する意識を持つことは、発信する際にも持っておきたい意識かなと思います』

発信以外にも、よく実践されているネットメディアの活用方法があるのだそう。

『良いなと思ったことは積極的にシェアしたり、ご本人に感想を送ったりするようにしています。好きな本や映画のことなど。著名な方も、一般の人も関係なくしています。
おもしろそうだと思ったイベントなどもどんどんシェアすることで、少しでも応援できたらと思っています』

◇まずはここから!初心者ライターが発信していくための3つのヒント

執筆実績を集めたポートフォリオが自己紹介代わりになるライターの世界。まだ実績のない初心者はまずどんなことを発信したら良いのでしょうか。
ライティング講師でもある江角さんの目線から、実用的なアドバイスをいただきました。

1.「好き」と「覚悟」が伝わるプロフィール

まずはプロフィールを整理して、好きなことややりたいことをしっかり書いておくのが大切なのだそう。また、アイコン写真についても、本人の顔が出ているものの方が人柄や覚悟が伝わるため、信頼性が高くなるといいます。

『わたしが依頼する側なら、プロフィール写真がお花の人より、自分の顔を出している人の方を選ぶと思います』

2.読者にとって役立つ情報を入れてみる

『例えば、甘いものが好きでよくカフェに行くとしたら、ただ「パンケーキ美味しかった!」と書くのではなく、お店の名前や値段など、少しでもその投稿を見た人の役に立つような情報を入れてみると良いと思います。
「普段は並ばないと入れないけれど、平日の朝なら空いていて入りやすかった」など、実際に行った人しかわからない情報などもあると参考になりますよね』

3.書きたい記事を書いてみる

『自分がいつかは書いてみたいと思っている記事を、ブログなどで先に書き始めてしまうのもアリだと思います。インタビュー記事を書いてみたいなら、家族や友人など身近な人に取材してみるなど。文章を書く練習にもなりますし、仕事に応募する際、実績の代わりに提出することもできます。インタビューする方も、奇抜な経歴の人を探す必要はありません。その人にしかない良さを見つけ、面白い切り口を考えるのもライターの仕事。インタビューしたい人を見つけるには、そういった視点も必要なので、感覚を磨く勉強にもなると思います』

江角さん曰く、「とにかく毎日何か発信してみること」が大切なのだそう。

『印刷する紙媒体と違って、ネットなら気に入らない部分があれば後から何回でも書き直せます。深く考え過ぎず、どんどん書いてみたら良いと思います』

◇コツコツ続けていくことで見えた発信のメリット

これまでいくつものお仕事を「発信すること」をきっかけに獲得されてきた江角さん。仕事の依頼が途切れない以外にも、肌で感じているメリットとして、「自分に合う人たちとの出会いが増えた」ことを挙げてくれました。

『せっかく一緒にお仕事をするなら、やっぱり気が合う人とお仕事したい。
SNSを見れば大体の人柄や雰囲気は伝わってしまうもの。合いそうにないなと思った人はそもそも声をかけてこないでしょうし、良いなと思ってくれたら声をかけてもらえる。そういう意味で良い出会いが増えたなと感じます』

◇もっと自由に発信を

取材の終わり、今後挑戦してみたいことについて伺うと、「Instagramでもっと自由に発信してみたい」と江角さん。8月はアウトプット強化月間として毎日投稿することに挑戦されているそうです。

今回お話をお伺いしていく中で見えてきたのは、純粋に書くことが好きだという江角さんの想い。原稿を書く合間の休憩として、メルマガやSNSの更新をされているのだそうです。「気分転換に音楽を聴いたり、映画を観たりするのと同じ。楽しいから、書いているという感覚」と江角さん。

「ネットメディアを活用して仕事を獲得していくチャンスはいくらでも転がっている」と話す江角さんに、好きなことと向き合い、まずは発信してみることが大きな一歩になるのだと、背中を押してもらいました!

<プロフィール>
江角悠子(えずみ ゆうこ)
1976年10月30日 妙心寺派仁照寺の長女として誕生。専門学校「京都コンピュータ学院」の事務職員、大阪の出版社、京都の広告代理店でのデザイナー兼コピーライターを経て、2006年からフリーライターとして活動スタート。
さまざまなウェブメディアや『anan』『婦人画報』などの人気雑誌で執筆。同志社女子大学で非常勤講師として編集技術を教える他、2020年からはライターを目指す人を応援するべく「書くを仕事に!京都ライター塾」をスタート。2020年1月にライティングを担当した本「亡くなった人と話しませんか」が発売。増刷を繰り返し、10万部を突破!

取材/執筆:灰原香奈


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